ピクニックの魔法
私は昨日の夜、憂鬱な気持ちでお弁当箱に余ったおかずや冷凍食品を詰めていた。
節約のためのお弁当だけど、(自分に作る気力がなくて)余り物と冷凍食品しか入っていないお弁当を大学の薄暗い部屋で食べるの、嫌だなぁと。虚しいなぁと。
今日。どこまでも青く広がるキャンパスのような空に、わたがしみたいな雲がぷかぷかと浮いている。大学の野外の広場は、やさしい日差しが降り注いでいて、暖かかった。
わたしは、迷わずその野外の広場のベンチに腰をおろした。昨日憂鬱な気持ちで詰めたお弁当箱を開く。
まだ少し冷たい風をよけながら食べるそのお弁当は、昨日想像していたその何倍も美味しかった。そしてあたたかな日差しがわたしを背中から包み込んでいて、一人でも寂しくはなかった。
わたしは、半年くらい前に恋人とピクニックをしたことを思い出した。ひたすらに芝生が続く海辺の公園。降り注ぐ陽のひかり。初めて作ったサンドイッチがびっくりするほど美味しかったのは、自然とやさしい陽のひかりに囲まれた世界で、彼も美味しそうにそれを食べていたからかもしれない。
なんだか少し、今日も頑張ろうか、という気持ちになってくる。ピクニックはひとりでもふたりでも、しあわせになることができるやさしい魔法である。