トノモトショウ

詩小説家・古本屋。表現結社「Fuck the People」主宰。詩集「快楽天使」(2…

トノモトショウ

詩小説家・古本屋。表現結社「Fuck the People」主宰。詩集「快楽天使」(2004年 新風舎)/ アンソロジー詩集「Be Free」(2006年 久遠舎・2010年 太陽書房)

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ネオ・ガガ詩集

ネオ・ガガ詩とは何か?  ガガ詩とは、詩人・中村トクシが提唱した新しい詩の形式である。中原中也によるダダイズムを基盤とし、そこに「画々」(タイポグラフィーなどの視覚的効果)、「我々」(内省的なテーマ)といった概念を付け加え、より前衛的・先鋭的な詩の表現を成立させた。(いくつかのガガ詩は現在でもネット上で読むことができるので、是非皆さんも検索してみてほしい)  そしてネオ・ガガ詩とは、ダダイズムに対するネオ・ダダイズムのように、ガガ詩のフォーマットやコンセプトを私なりに解釈・発

    • 映画レビューまとめ【アニメ・特撮】

      日本アニメ ● A・LI・CE 監督:前島健一|声の出演:清水香里 / 鈴木千尋 ● アーヤと魔女 監督:宮崎吾朗|声の出演:平澤宏々路 / 寺島しのぶ ● AKIRA 監督:大友克洋|声の出演:岩田光央 / 佐々木望 ● 劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 監督:長井龍雪|声の出演:入野自由 / 茅野愛衣 ● 犬王 監督:湯浅政明|声の出演:アヴちゃん / 森山未來 ● ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 -永遠と自動手記人形- 監督:藤田春香|声の出演:

      • 映画レビューまとめ【アジア映画】

        中国・香港映画● アクシデンタル・スパイ 監督:Teddy Chen|出演:Jackie Chen / Vivian Hsu ● 活きる 監督:Zhang Yimou|出演:Ge You / Gong Li ● イップ・マン/序章 監督:Wilson Yip|出演:Donnie Yen / 池内博之 ∟ イップ・マン/葉問 監督:Wilson Yip|出演:Donnie Yen / Sammo Hung Kam-bo ∟ イップ・マン/継承 監督:Wilson Yip|出演:

        • 映画レビューまとめ【邦画】

          邦画・あ● あゝ、荒野 前篇 監督:岸善幸|出演:菅田将暉 / Yang Ik-june ∟ あゝ、荒野 後篇 監督:岸善幸|出演:菅田将暉 / Yang Ik-june ● R100 監督:松本人志|出演:大森南朋 / 松尾スズキ ● 哀愁しんでれら 監督:渡部亮平|出演:土屋太鳳 / 田中圭 ● 愛のコリーダ 監督:大島渚|出演:松田英子 / 藤竜也 ● 愛のむきだし 監督:園子温|出演:西島隆弘 / 満島ひかり ● アヴァロン 監督:押井守|出演:Malgorzata

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        ネオ・ガガ詩集

          映画レビューまとめ【洋画】

          洋画・あ● A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー 監督:David Lowery|出演:Casey Affleck / Rooney Mara ● ア・フュー・グッドメン 監督:Rob Reiner|出演:Tom Cruise / Jack Nicholson ● アーティスト 監督:Michel Hazanavicius|出演:Jean Dujardin / Berenice Bejo ● アイ・アム・サム 監督:Jessie Nelson|出演:Sean

          映画レビューまとめ【洋画】

          書評「森脇タカユキ『哀しみの午後の為のヘブンズ・ブルー』 ~ 有り得る世界の有り得ない詩人」

           森脇タカユキ『哀しみの午後の為のヘブンズ・ブルー』には多種多様な作品が収められている。叙情的な詩やショートショート、エッセイ、タイポグラフィックな散文や、架空の出版物の背表紙といった意欲的なものまで、広い視点を持った著者らしいアイデアに溢れた秀作ばかりだ。  森脇タカユキの作品は、現実から少しはみ出た有り得ない世界を本物らしく見せるギミックによって、読者にそれが実際に有り得るかもしれないと思わせる性質を持っている。  例えば「妊活女子へのインタビュー」という作品では、近未

          書評「森脇タカユキ『哀しみの午後の為のヘブンズ・ブルー』 ~ 有り得る世界の有り得ない詩人」

          書評「大覚アキラ『textrock』 ~ スイッチとスピードの詩人」

           誰が何といおうと  これはロックだ  おれのロックだ  大覚アキラは処女詩集『textrock』(表題作)の中でそう語っている。彼が云う「言葉でロックする試み」とは一体どういうことなのだろうか。  彼の作品は必ずしも「ロック的」ではない。既成概念や体制に対する憎悪や反抗心、切迫した破壊欲求、反社会的な思想などは一切現れて来ない。セックスやドラッグにも傾倒していないし、おどろおどろしさ、汚らしさ、不安定なイメージ、サイケデリックな表現も皆無と言える。彼の作品には激しいビー

          書評「大覚アキラ『textrock』 ~ スイッチとスピードの詩人」

          中篇「化物どものシ」

           左手首に見知らぬ穴が空いている。  傷、と呼ぶべきなのかもしれないが、皮膚の表面に直径一センチほどの黒い点があって、ホクロのようにも見える、だが指で触れるとその部分だけが陥没しているのがわかり、爪の先を穴に差し込むとどこまでも埋まっていく感覚がある、痛みや腫れはないので虫に刺されたとか針で突いたとか、そういう類の瑕疵ではなさそうだった、むしろ本来そこにあるべき肉の残骸、血の通った細胞の痕跡すら見当たらず、ただ一点のみが消失していると考える方が妥当だった、穴を覗くと奥深くまで

          中篇「化物どものシ」

          1000字超短篇「世界の終わりという名の電車」

           私が電車に乗るのはどこかに向かうためではない、それは私が呼吸するのは生きるためではないのと同じで、ほとんど自動的な行為なんだと思う、電車はある地点からある地点までがたんごとんと揺れながら私を運んでくれるが、また元の地点に折り返して私を弾き出す、日々は常に変化しながら私自身は停滞している、というメタファーだ、世界が滅べばいいのになあ、と私は考える、そうなれば私はどこかに向かうために電車に乗るだろう。  朝の通勤ラッシュに紛れ込んで、これから始まる一日に対するどうしようもない

          1000字超短篇「世界の終わりという名の電車」

          1000字超短篇「彼女についての考察」

           午前八時十五分、小谷愛は自宅マンションを出る、彼女の部屋は四階の東端に位置し、西に三部屋分進むとエレベーターホールがある、降下ボタンを押す彼女の指は艶やかで美しい、彼女はどこか思案げに一階ロビーを通り抜ける、エントランスにて管理人と遭遇し軽く挨拶を交わす、明日は雨だそうですよ、とか何とか。  彼女は歩いて駅まで向かう、赤いミュールがコツコツとアスファルトを鳴らす、湿気を含んだ温かい風が柔らかいスカートを少しだけ揺らす、駅前の喫煙所で彼女はメンソールの細長いタバコを吸う、白く

          1000字超短篇「彼女についての考察」

          短篇集「バらばラ事件」

           この物語は、私(作者=トノモトショウ)が実際に体験したいくつかの奇妙な事件について書き連ねたものである。読者諸氏にとっては事件ですらない些細なことなのかもしれないが、それらを事件と呼ばずに何と表現すればよいのか私にはわからない。  なお、執筆にあたって事件の関係者や団体には可能な限り許可を取ったが、物語としての体裁を取る上で少なからず脚色があったり、あくまで主観的な視点であることから事実とは異なる部分が描写される場合もある、ということをあらかじめご了承いただきたい。報道など

          短篇集「バらばラ事件」

          羅列詩集

          いろはにほへと色は狂えど熱に酔い 蝋の火揺れる拠り所 華の命に寄り添うは 匂い立つ程鮮やかに 頬を彩るさくらんぼ 臍を伝って羞らいへ とうに二人は粛々と 散り開く欲ただ穿ち 輪廻の惑い手に滑り 濡れた罪なら償えぬ 類は呼ぶとも裏返る 女の嘘やせつなさを 私あなたを恨んだわ 返す言葉は愛だろか 夜に爛れた三日月よ 誰もが疎む性なんだ 劣情溢れ吐き出され その反動で減る酸素 徒然に身は聳り立つ 眠れず鳴らす肺の骨 長い吐息で艶やかな 裸婦の姿を祈るなら 無為に現る血が澱む

          中篇「詩人の恥」

          電線に吊られた鴉がゲゲゲゲイと啼いている 中空を無数の魂が泡となり漂い、弾けて、消える、のを俺はじっと見ていた まるで自分には関係のない人達 顔も名前も知らない群集の中の誰かが 無造作に死んでいくのを  けたたましくアラームが鳴ってカーテンの隙間から漏れ出た光がフローリングの床を舐めていく、逆立つ毛を舌で整える猫の背中を掠め壁に掛かったリキテンスタインの色彩をぼやけさせる、テーブルの上には壊れたリモコン、山積みになったビールの空き缶、女が残していったスペアキー、爽やかなはず

          中篇「詩人の恥」

          詩集「沈黙」(選)

          殲滅のシこれは詩ではない さあ否定しろ 月食の二時だった 俺は商店街にて猫を撃ち 僕は自宅で母親を刺した 大きく裂けた腹から美しい臓物が 一つ、二つと零れ落ち 掌の上でいじらしく輝いて 死のイメエジを具現化させる 俺はあと七匹の猫を殺し 僕は十四人目の母親を抱いた ビラビラが赤く濡れている その傍らにはリアル 色褪せた私のリアル 精肉屋と文具屋に挟まれた路地裏で 女の肢体が放置されたまま ゆっくりと腐乱していく 似たような映画を観たような気がした 俺は思い出そうとして

          詩集「沈黙」(選)

          詩集「快楽天使」(抄)

          逃亡旗手先天性虚言症集団の僕ら 「リズム・オブ・プランクトン」の最初で最後の仕事は 歴史上もっとも異質で芸術的な事件になってしまった ――しかし僕らが常々求めていたのは   アートではなく単なる消費だった―― 物語の始まりは 国家中枢機関「マッシュルーム11」の 複雑極まりない怪奇システムを 限りなく原始的な手段で切り抜いたことからである 使用したのは工作用のステンレス製ハサミ一本 数分で完遂できるほどの簡単な作業だった 動力源を失って完全に停止した街では 次々と変化

          詩集「快楽天使」(抄)

          詩×漫画「青夏の祭」

          青夏の祭 夏叫ぶアザミの棘に触れながら お祭りの賑わう途を行き行きつ 予てから繋ぎそびれた掌は青く 夕暮れの震える空に恥じらいと それぞれの秘密を抱いた蜂月よ 子供らが戯れて落とした林檎飴 朱染まり金魚の鰓によく似てる 先刻から蝉の時雨はもどかしく 彼の人の膨らむ腹に目を遣って ひっそりとあの子が語る徒言は 奥様は不実の稚児を産みなさる 静やかに思わず僕は啼いていた しどけなく広がるままの薄闇に 緩やかに溶け込む影の行方追い 忘れじの浴衣の裾のはためきよ 心では詮無き

          詩×漫画「青夏の祭」