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詩×漫画「青夏の祭」


青夏の祭


夏叫ぶアザミの棘に触れながら
お祭りの賑わう途を行き行きつ
予てから繋ぎそびれた掌は青く
夕暮れの震える空に恥じらいと
それぞれの秘密を抱いた蜂月よ

子供らが戯れて落とした林檎飴
朱染まり金魚の鰓によく似てる
先刻から蝉の時雨はもどかしく
彼の人の膨らむ腹に目を遣って
ひっそりとあの子が語る徒言は
奥様は不実の稚児を産みなさる
静やかに思わず僕は啼いていた

しどけなく広がるままの薄闇に
緩やかに溶け込む影の行方追い
忘れじの浴衣の裾のはためきよ
心では詮無きことと知りつつも
遠くから眺めることも恐ろしく

不穏なる背中に浮いた汗を拭き
息荒らす女の咽喉を不思議がり
突然にきりきり足掻く様を見て
死の匂いあるいは生の芽を感じ
血に塗れた小さき犬を堕胎する
恍惚を頬に貼り付け嘲笑うゆえ
嗚呼これぞ僕の苦悩の終わり哉

大輪が深まる真夜に咲きこぼれ
耳鳴りの続く季節のはじまりよ
青の身を案ず少女にまた出会い
もう二度と誰ぞ想うは罪と得も
裏腹に笑みを交わすは謎と成る
なぐさめや人の哀しき業でなく
ふいに触れたし掌のぬくもりよ

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