ネオ・ガガ詩集
ネオ・ガガ詩とは何か?
ガガ詩とは、詩人・中村トクシが提唱した新しい詩の形式である。中原中也によるダダイズムを基盤とし、そこに「画々」(タイポグラフィーなどの視覚的効果)、「我々」(内省的なテーマ)といった概念を付け加え、より前衛的・先鋭的な詩の表現を成立させた。(いくつかのガガ詩は現在でもネット上で読むことができるので、是非皆さんも検索してみてほしい)
そしてネオ・ガガ詩とは、ダダイズムに対するネオ・ダダイズムのように、ガガ詩のフォーマットやコンセプトを私なりに解釈・発展させ、中村トクシへの敬意を込めて作られた作品群である。
ネオ・ガガ詩 ♯1
おもひで
臓腑の じえじえ や
腋でヌく広告で
24回 ヨォグルト然な
長引く蝉 歯欠けたわ
し 不 光学の
か 全 調弦の
し 完 穴の
堪忍しとくれと囁く愛人
それから 猿なる猿なるんけ
ネオ・ガガ詩 ♯2
原因=ベタ塗り陰唇の跡
証明↓
父
と 枝で裂く魚
青白々しい
生々の
々 あゞ荒夜
先天の障害アリ
お前や お前のことや
ネオ・ガガ詩 ♯3
初恋
銀蝿
ザラザラなっとん なあ
歪曲
音楽
シンナア臭の我ワレハ
祭囃子 そこらで 腹ショー
言語聾の足 ぢぎる
教室は眠たあなって自慰
指絡なってから鳴ってF
喪失
吐いた的
無人駅前で
ネオ・ガガ詩 ♯4
六畳間の黴たての裂目
肺 憂い わづらい
ほんなら 死による かて言うか
上の空
放尿 夢ん中
下品な女らの蠕動
無
万 阿
蓮華草 弥
鏡 曼陀羅 蜃
仏 乱気流
楼
ネオ・ガガ詩 ♯5
艶めく 夏に
開めく 花よ
めくるめく 捲り上がる 盲の獣の
狂おしく 繰り返する 苦しみの味
明くる日 巡る血 滾る町を歩く
アクリルの雨降り あるアル中の男は
あるまじきアルペジオで
世界と混じり合い交わる
ネオ・ガガ詩 ♯6(レディメイドとしての)
県内の楽器店から喇叭を盗んだとして、住所不定の自称・河童が窃盗の疑いで逮捕された。河童は容疑を認めているという。
また近隣の農家から小松菜・青梗菜など野菜の盗難被害が数件報告されており、手口が似ていることから警察は関連を調べている。なお河童は「喇叭は盗んだが、野菜はスーパーで大量に買ったもの。調理して食べただけ」と、こちらについては容疑を否認している。
(谷川俊太郎「かっぱ」より)
ネオ・ガガ詩 ♯7(ジャンクアートとしての)
●品名 炭酸飲料
●原材料名 糖類(加糖ぶどう糖液糖、砂糖)/炭酸、カラメル色素、酸味料、香料、カフェイン
●内容量 500ml
●賞味期限 キャップに記載
●保存方法 高温・直射日光をさけてください
●灰色のコカコーラの嘆き
ネオ・ガガ詩 ♯8(ポップアートとしての)
ぴえん ぴえん ぴえん こえて
ぱおん ぱおん ぱおん こえて
ぷちん ぷちん ぷちん こえて
ぼるん ぼるん ぼるん こえて
うらん うらん うらん こえて
さりん さりん さりん こえて
ネオ・ガガ詩 ♯9(コラージュとしての)
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
どっどど どどうど どどうど どどう
ぐりりあにぐりりあにぐりりあにぐりりあに
とをてくう とをるもう とをるもう
ひよるひよるんキルひよるん
或いは ネリリし キルルし ハララしているか
(中原中也「サーカス」/宮沢賢治「風の又三郎」/草野心平「勝手なコーラス」/萩原朔太郎「鶏」/ヨケマキル「5ブンノ1カゼナイフ」/谷川俊太郎「二十億光年の孤独」より)
ネオ・ガガ詩 ♯10(ハプニングとしての)
①あなたの人生において、もっとも美しいものと、もっとも醜いものを、それぞれ思い浮かべてください。
②その二つのイメージを交互に脳内でスライドしていきながら、マスターベーションを行ないます。
③オーガズムを迎える時、二つのイメージは境界がなくなり、美しさと醜さが同時に共存する新たな概念が生まれます。
④その概念に私は詩という名前を与えます。
⑤詩が完成します。
ネオ・ガガ詩 ♯11
俺は無能
俺は無能の鳥
俺は無能の金貨
俺は無能
俺は無能の原子炉
俺は無能のパライソ
俺は無能
俺は無能
無能の発光体
無能の主力戦車
無能のマトリョーシカ
無能の
俺は無能の最後の詩人
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