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#4 飛行機急降下を再現 そこでみた地獄のカオス

中国で中国東方航空という飛行機が墜落しました。機種はボーイング737。123人の乗客がいて、乗員は9人。山間に墜落した時の様子が付近の集落の防犯カメラに撮影されていたのですが、映像を見る限りほぼ垂直に真っ逆さまに落下していました。飛行データを分析する民間サイトによると9000mを3分で900mまで落下したということです。

少し前になりますが、日本国内で民間機が乱気流に巻き込まれて急降下し、乗務員が吹き飛ばされて重傷を負う事故がありました。このとき、果たして急降下した機内はどうなるのか、実験をしてみようということになりました。

自家用ジェットで急降下実験

いまではコンプライアンス的に許されない体験取材ですが、当時はそこまで厳しい時代ではなかったので、小型ジェットに乗って急降下してみることになったんです。

乗っているのはパイロット、副パイロット、整備士、そしてリポーターの僕とカメラマンです。飛行機自体は、6人しか乗れない小型ジェットで、その分フットワーク軽く、いろんなことができたんです。羽田に集合していざ離陸となるんですが、実験場所は埼玉の上空。そんなところでできるんだ、と思ったものですが、実験内容は富士山とほぼ同じ高さ、3000mを数分で落下する、というものです。

機内をふつうの民間機らしく再現するために、会社の社員食堂からトレイとお皿を借りて、膝の上に置き、そして事前の調べでは機内は無重力になるらしい、とのことだったので、2リットルのペットボトルに水を入れて紐をつけ、機内の椅子にその紐の片方を結んでみました。無重力だと浮くはずなので。

果たして…いざ羽田を飛び立ち埼玉上空へ

小型ジェット機は、パイロットの席と僕の席は背中合わせで、間に仕切りはなく、パイロットと会話ができます。なので、実験スタートは僕の「それでは実験スタートです」の一言を合図に始まるのですが、これはなかなか緊張するセリフでした。僕の一言で飛行機が真っ逆さまに「墜落」するんですよ!それにどうなるのか見当もつかない。

そんな緊張感満ち満ちのなか、いざ「スタートです!」の一言で、一気に飛行機が機種を下げて急降下すると…

僕のイメージではふわっと体が浮くのかなと思っていたのですが、もはやカオスとなりました。膝の上に乗せていたトレイとお皿はものの見事に吹き飛んで、どこに行ったかもわからなくなり、水の入ったペットボトルも一気に天井にむかって引っ張られました。そして僕はというと、浮いている様子を撮りたかったので、実はすこしシートベルトを緩めていたものですから、一気に持ち上げられた体にシートベルトが食い込み、実況なんてできる状況ではなくなりました。ううううといううめき声で精一杯です。

手荷物は必ず収納しましょう

そしてパイロットはどうしていたかというと、片手で操縦桿を握り、もう片方の手で、天井を抑えていました。そうでもしないと、体が浮いて頭を天井にぶつけてしまうからです。そのくらいの状況に陥るんです。苦しいなんてものではなく、リポートなんてできる体勢、状況ではありませんでした。映像をみれば機内でおきることの恐ろしさが伝わるものでした。

この経験以後、飛行機に乗るときは、必ず荷物は前の座席の下にきっちりといれるようになりました。飛んでいるときは、大丈夫かな、と足の間においたり、隣の空いている席に置いてたりするのではなく必ず、前の座席の下に。無重力と聞くと、宇宙飛行士がふんわりういている映像をイメージしがちだと思うのですが、そんなものではないんです。飛行機が急降下すると、すべての荷物が重さ、大きさに関係なく弾丸のように機内を飛び交うことになります。身を持ってその危険性を知ったので、必ずしまうことにしました。飛行機に乗る際は、みなさん注意してくださいね。

(voicy 2022年3月22日配信)

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