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私の青い春は夢を見ては打ちひしがれ、蕾のまま大人ぶる

「バンドを始めたのは、悲しいとか苦しいとか、そういう感情を分かってもらいたかったから。
悲しいときって怪我はしてないけど、でもこんなに痛いんだよね。ってことをわかってほしくて音楽を作り始めた。あなたのネガティブな感情にも寄り添えるようなバンドでいたい。」

ライジングサンで1日目のトリとしてステージに立ったback number。心の痛みを可視化する天才、清水依与吏が序盤で語った言葉。

彼はback numberを好きでいてくれる人を絶対に誰も取り残さない、いつだってファンの人生に関係のある、そんな音楽を作っていくと幾度となく宣言している。


昨年のアリーナツアーのMCでは
ファンの日常を最深部まで気にかけているんだと驚かされた。
「毎日学校行って平気な顔してるけど
親に心配かけたくないから
でも本当は依与吏さん俺もうしんどいんだよね
私もう限界ですって人がいるかもしれない。
仕事してて、これ自分に合ってねえなと思いながら、でも周りに気遣ったり、自分は全然悪くないのに頭下げたり。
家事だってそう、お皿洗ったり、ゴミ捨てたり。自分以外誰もやる人がいないから。
俺達は見つけてもらえたのに、みんな全然見つけてもらえないじゃん。」

一番最初の学校の話は完全に私だった。


高校時代。友達がいなく、ほとんどの時間を一人で過ごしていた。文化祭も体育祭も修学旅行も、楽しかったと言える思い出は一つもない。まさに「依与吏さん、私もう限界なんです」そんな日々だった。back numberを中心とした切なくむず痒い歌詞の音楽だけが拠り所だった。

25歳現在、毎日それなりに元気に楽しく過ごしているけど。制服を着ていた時間が途方もなく虚しい時間だったことが足かせになっている。未だに仲良くしてる人にも「ああ高校の頃に知り合ってたら話すこともなかったんだろうなあ」とか考えちゃうし。

思えば当時、学校で流行っていた某シンガーソングライターのパリピでイケてる俺最高みたいな歌詞も、陽キャなダンスボーカルグループの洒落たダンスを学校祭で踊る風景も、私には何一つ響かなかった。
友達と肩組んでウェイウェイしたい人が選ぶ音楽と、教室の片隅で孤独を癒やしてほしい人の好きな音楽は違うと思う。

青春コンプレックス抱えて生きてる人間には
「見つけてもらえない私たち」のための音楽が
ものすごく刺さるのだ。
もしそれなりに友達がいて明るく充実したJKライフを満喫してたとして、back numberの中でも特に陰気な歌を好きになることはあったのだろうか。


10代は不遇だった過程はともかくとして、
今愛しているバンドに出会えた結果は捨てがたい。
自分を丸ごと受け止めてくれた音楽を聴かずに過ごしている毎日なんて、想像できない。



私は学校が好きではなかった。
見た目も全く垢抜けていなくてダサかった。

おしゃれな女の子たちが沢山いる陽キャな校風に馴染めず、メガネに不揃いなショートヘアで新しい学校のリーダーズのSUZUKAのような見た目をしていた。


舌は出していない。
高2の夏からコンタクトにしたのだけど、
髪型のせいで田舎っぽい雰囲気は拭えなかった。
ボーイッシュなショートヘアは似合わないからせめて肩のあたりまで伸ばしなさいと当時の自分に言いたい。 
もしもう一度JKをやり直せると言われたら、KANONみたいな透明感ある雰囲気になるわ。
あともうちょい平和な高校を選ぶ。

ちなみに彼女がこんな見た目をしているのは
4人の中でヤバイキャラ担当を演出するため。
メガネを外した私服姿のオフの姿はほんとに可愛い。良ければ「SUZUKA メガネなし」でググってみてください。セットされたウルフヘアにクールなファッションが似合ってるので。

当たり前だけど彼女の方が自分より何倍もイケてて、カリスマ性がある。7月に地元北海道のフェスで見た時のダンスと声量が素晴らしかったですよ。何故か流行りっぷりに見合わない一番小さいステージに割り振られて人がごった返してて4人の胸から上しか見えなかったけど。北海道のフェス史に残るステージミスだと思う。

彼女たちのキャッチコピーである
「個性や、自由で、はみ出していく」
ではなく、私の状況は
「陰気、根暗、浮いている」だった。
一つも韻を踏めてないことはお許しください。

修学旅行ではお世辞にも仲がいいとは言えない子達と同じ班になった。私が髪を乾かしている間に2人部屋で一緒になった子もメンバーには不満だったようで、班がクソと友達に電話で文句をたれていたようだった。ドライヤーのスイッチを切った瞬間「ドライヤー終わっちゃったから」と口にした。私の悪口まで言ってたけど途中でやめたのか?
ここから楽しい思い出に持ってくことは不可能。諦めたらそこで試合終了?班が決められた頃からとっくに終わってましたよ安西先生。

普段から自分なりに居場所を作る努力はしていた。クラス替えをしたばかりの頃の5月、1軍タイプの女の子たちのグループになろうと思って一緒にお弁当を食べたりしていた。いつの日かまともに会話もしなくなっていた。
実を言うと修学旅行で最悪の相部屋だった女子とも、高1の時同じクラスだった頃に仲良くなろうと働きかけていて話してた時期がある。


高2の頃ロングホームルームの時間でクラスメイトの良いところを書いて本人に渡す作業があった。何の意味があるのか分からない道徳の授業授業ランキング第一位。「積極的」だとか「自分から挨拶に行ける」とかたくさん書かれていた。裏を返せば喋るタイプのコミュ障ってことですねお疲れ様でした。
ちょっともうこの辺でやめとくね。書いてて悲しくなってきたから。


こんな毎日の帰り道にいつも一人で聴いていたのはback numberの失恋ソングだった。友達もいなければ恋人もできたことなかったけど、小説を読むように一つの物語を楽しむ聴き方をしていたのだろう。

高3の秋、音楽の再生回数ランキングで1位だったのはファンクラブライブでやるようなレア枠のアルバム曲、
こわいはなし。

悲しいけれど二度と二人が
笑い合う事はないだろう
互いの汚れは見て見ぬふり
すれば嫌いになるわけないから大丈夫
でもそれが わざわいのもと
二人同じ強さでいつも想えるはずが無いから
いつだってどちらかが傷付いていた
さぞ疲れたでしょう

うん、暗い。

毎日死んだ精神で通学していた日の帰り道は、失恋ソングや希望の見えない歌でさらにドス黒い感情になっていった。

あたしんちのみかんみたいにちょっとドジでも友達から愛されるキャラになりたかった。しみちゃんみたいなサバサバした友達がいて、ティディベア研究会くらいゆるい部活で仲間とダベるハイスクールライフ、どこ?

ある時こんな暗い曲ばかり聴いてたらもともと狂ってる精神が更に狂うのではないかと思い、前向きな歌を調べて新規開拓してみることにした。
たまには明るい歌詞から元気を貰わないと。
出てきたのは当時まだネクストブレイクという位置付けだった某前向き系バンドの曲だった。

身近な幸せは意外と近くにあるよ!よく見て!
とか、
君は一人じゃない!みたいなニュアンスの歌詞だった。

自分のいる現実とは真反対のキラキラした世界観から投げられる、ヒャッホゥ♪なハイテンションっぷりがしんどかった。
一人じゃないとか言われたって、確かに家族からは大事に育ててもらったし天涯孤独ではない。でもいつだって家以外でも居場所は必要で、それがないから悩んでるんだよ。説得力があるとは自分にとっては思えなかった。

切ないバンドは良くて明るいバンド、陽キャグループは駄目という話をしてるわけではない。
どうしようもなく辛いときにいやいやそんなことない!大丈夫だって!君の明日は輝いてるから進んでいこうぜっ♪ってグイグイ背中を押すような曲を聴くのは、自分の体質的に合わなかった。
そんなお話。

でもそこで気づいた。
ネガティブに浸りたいときはどれだけ浸ってても良い。
前向きな歌で無理やり蓋をするくらいなら、
トチ狂った精神でいて良い。

バンドのかっこよさを最初に知る原点となったback numberはそれを教えてくれた。
全盛期のAKBが好きだった私はみんなの理想、偶像のアイドルに首ったけだった。それが初めて今置かれてる目を逸らしたくなる状況、虚しさに真正面から向かっていくアーティストに出会った。それは自分にとっては衝撃だった。
一番の推しのともちんが高1の夏に卒業し、それと入れ替わるように音楽の熱は彼らに注がれた。
バンドを愛する人生はここから始まった。


タイトルにも引用した歌詞の曲でもある、
back numberの青い春。


夢を見ては打ちひしがれて
立ち上がってはまた憧れてさまよって
自分を知った気になって
また分からなくなるそんな
青い春という名のダンスを

思春期のこのもどかしさは誰でも経験してるものだよね。
それに学生時代めちゃくちゃエンジョイしてたけどback number好き!って人もいると思う。
まあええんやで。白は200色あるんやから、音楽の聴き方だって1億通りあんねん。

2014年の横アリでのライブ映像で依与吏が
「青い春という名のダンスを踊りに来たんだろ!?」と観客を煽り、ワーッと大きな歓声があがるのを観た。

世の中には青春は甘酸っぱくなくて苦しいと思う人がこんなにもいるのか。

大学の頃に初めてback numberのライブに行った2017年から今年のドームツアーまで、同じように煽られて声をあげてきた。


高校時代から青春とは何かと聴かれたら
ずっと答えは変わらない。

人生で一番自分の世界が狭い時期。
ランダムなシステムで作られたクラスで居場所を見つけられなかったら落ちぶれる。
一番社会性を育てるべき時期にこじれた者は一生こじらせたまま。


だからこそ愛せるものがある。


大学に入っても私の残念な青春は続いた。

なんせ覚えたての化粧が濃すぎるのである。

メイク初心者あるあるだよね。
100均の太い黒アイライン、気持ち悪い涙袋、顔に全く馴染まない色のリップ。
そして不揃いなショートヘアには胸下まであるロングヘアのエクステをつけ、高校の卒業式から大学入学式までの間に完全に見た目は現在の年齢の25位の社会人と化していた。
契約できる大金を持っていそうと思われたのか、歩いていたらウォーターサーバーを売られそうになった。「まだ学生なんで」って言ったらスッと引き下がった。

おしゃれもろくにしてなかった高校時代の反動で見た目ばかり大人ぶったまま大学デビュー。
そして大学1年の秋に初めての恋人ができる。
相手は年上だった。

浮かれた私はここぞとばかりに恋人との予定を入れまくった。沢山会えてた時期の頻度が普通だと思い込み、相手がサークルの用事などで忙しくデートがあまりできなくなった時期には何でもっと前みたいに会ってくれないのとゴネた。

結果、半年足らずでフラレた。
別れ話の時には「子どもっぽいなと思ってしまう」と言われた。

そして今年、そんな頃の私を表す曲に出会った。新しい学校のリーダーズ、オトナブルー。


彼女たちを知るきっかけになったファーストテイクの動画。
1発撮りの緊張感など全く無く、勝手に来て勝手にやってやった感で歌って踊る彼女たちに釘付けになった。
同じ高校に通ってても違うグループにいるような女の子たちが集まった奇跡みたいな4人だと思うんですよ。首振りダンス、練習してるけどまだ上手く踊れません。

だけどそれ以上に惹かれたのは作詞家をつけずに自分たちで考えたという歌詞だった。

そのうちじゃなくて今すぐがいいの
大人の恋に焦がれて
見た目よりも残るあどけない心だけが先走る
青い蕾のまま大人振る

フラレてからもしばらくは年齢が上の異性だけが恋愛対象だった。次にまた幸せにしてくれるのもまた年上に間違いないと信じ続けていた。
年上に拘ったのは「先輩の彼氏がいる自分」がステータスのように思えて、付き合っていたわずか4ヶ月間に感じていた快楽が忘れられなかったから。

そんな理由でしか人を愛せないうちは、見た目よりも残るあどけない心だけが先走っているのだろう。


まあでもやっぱり唯一楽しかったと言える学生時代である大学4年間は恋愛以外の要素で充実してるといえる時間を過ごせたし、
社会人となった今は好きなバンドに時間もお金も費やせて人生で一番楽しい。制服着てる期間ってテスト、受験、部活やらでなんだかんだ自由時間は少ないよね。高校生、大人になるのも悪くないよ。

結局今を楽しめてるならオールオッケー。


かわいいJKにはなれなかったけど、
黒歴史も丸ごと愛するなんて綺麗事は言えないけど、そんな自分の心も取り残さないでいてくれる音楽をこれからも愛し続けていく。

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