「いもり酒」(『苅萱桑門筑紫𨏍』より)(18歳以上向け)
九州は筑前国の武将、加藤左衛門尉繁氏には、正妻の牧の方と側室の千鳥の二人の妻がいた。繁氏はどちらにも偏ることなく愛情を示し、二人の妻も日頃から互いに仲良くしているように見えた。
ある時、二人は一緒に琴を弾いていたが、やがて疲れたのか、二人とも碁盤を枕にして昼寝を始めた。そこに外出先から戻った繁氏が、二人がいる部屋を訪ねようとしたところ、何やら障子の向こうが騒がしい様子である。その時、障子の影に映っていたのは、二人の妻の髪の毛がどちらも蛇のようになって、相争っている姿であっ