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アマチュア・フォトグラファー。本業は考古学者。ここではTwitterで書ききれない文章…

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アマチュア・フォトグラファー。本業は考古学者。ここではTwitterで書ききれない文章を載せます。コメントには返信できません。 http://twitter.com/tomoishi1976 http://tomoishi1976.web.fc2.com/

マガジン

  • 小説『編集者・石川知実の静かな生活』

    雑誌社に勤めるアラフォー女性・知実が日常で感じたことを徒然なるままに綴ります。 (小説ですので内容はフィクションです)

  • ともいしの官能怪談

    恐怖と官能はヒトの根源的な存在とつながっています。 ここでは古今東西の怪談の、エロティックな面を脚色した小説を掲載していきたいと思っています。 (18歳以上向けです)

  • 小説『たそがれのディードリット』

    『ロードス島戦記』の二次創作小説。ディードリットを主人公とし、英雄戦争の60年後の世界を描きます。

  • ドラゴンクエスト二次創作もの

    ドラゴンクエストの二次創作ものです。恋愛小説です。

  • 梅壺物語

    梅田桃子さんとの撮影時に生まれた物語がふくらみ、時代を越えてひとつの壺を受け継いでいった女性たちの、一連の物語となりました。 章立ては以下のようになっています。 0. 『梅壺物語』登場人物紹介 1. 『梅壺物語』「桃の段」 2. 『真景牡丹灯籠』 3. 『梅壺の由来』 4. 『梅壺物語』「梅の段」 5. 『梅壺物語』プロローグ 6. 『梅壺物語』エピローグ 7. 『梅壺物語』関連年表

最近の記事

知実の能登半島取材記(『編集者・石川知実の静かな生活』)

 2024年1月1日は忘れられない日となった。能登半島地震が起こった日である。  あたしと健太は正月は京都で過ごしていた。ちょうどお風呂に入りに行こうとした時に揺れた。あたしはすぐに気付いたが、健太は最初気付いてなかったようだった。 「健太、揺れてるよ!」  あわてて二人で部屋の柱にしがみついた。揺れは激しくなかったが、けっこう長い時間、揺れていたような気がする。泊まっていたのが老舗の旅館なので、木造の建物がきしんで恐怖心を覚えたが、揺れが収まった時は本心から安心した。201

    • 今も生きている色町(『編集者・石川知実の静かな生活』)

       東京藝術大学大学美術館で開催している「大吉原展」を観てきた。  この展示は開催前から物議を醸し、いわゆる「炎上」となった。それは、キャッチコピー「江戸アメイヂング」をはじめとして、あたかも遊廓を遊園地かテーマパークのように表現し、性的搾取である売買春の舞台となった吉原を美化するものだとする批判が巻き起こったのだ。  そうした批判を受けて、展示の冒頭に掲げられた主催者の趣旨説明には以下のような文言があった。 「(吉原は)現在では許されない、二度とこの世に出現してはならない制度

      • 女子三人が性癖を語る会(編集者・石川知実の静かな生活【番外編】)

        座談会出席者 ・ 梅田サクラコ(桜):アラ還の小説家。北海道北見市出身。既婚。二人の子と一人の孫がいる。書く小説は女性の欲望を描いた濃厚なものが多いが、本人はいたってサバサバした性格。 ・ 石川知実(知):アラフォーの雑誌編集者。北海道札幌市出身。既婚。子なし。奔放な性格だが、本人は自分のことを真面目でお堅いと思っている。 ・ 稲本恵美(恵):アラフォーの外資系ファームに勤務するOL。京都府峰山町(現京丹後市)出身。未婚(パートナー有)。天は二物を与える才色兼備。鷹揚な性格で

        • 戸口に現れたもの

           彼の目の前には、親友エドワード・ピックマン・ダービィだったものの死体がある。そして彼の手には拳銃が握られており、まだ真新しい硝煙の臭いがただよっている。彼は確かにここで六発の銃弾を放ち、それはすべて目の前のものに命中したのだった。  エドワードを殺したのは自分ではない。ダニエル・アプトンは心の中でそうつぶやいた。この状況を見た者は、誰もが彼を正気ではないと判断するだろう。しかし彼は自分が正気であると確信していた。そして彼は今まさに、親友の仇を討ったのだと信じていた。  病院

        知実の能登半島取材記(『編集者・石川知実の静かな生活』)

        マガジン

        • 小説『編集者・石川知実の静かな生活』
          13本
        • ともいしの官能怪談
          15本
        • 小説『たそがれのディードリット』
          6本
        • ドラゴンクエスト二次創作もの
          5本
        • 梅壺物語
          8本

        記事

          たそがれのディードリット[エピローグ act.3:エピソード1988]

           カノン王国の辺境の地サボーにあるマーモ国の難民キャンプ。ここはこの地に逃れてきた難民たちの暮らす場所であったが、決して彼らの安住の地ではなかった。  サボーには銀の鉱山があり、難民たちはその労働力として酷使されていた。政治的混乱が十年以上続くこのロードス島において、歴史あるカノン王国ももはや王国としての求心性はなく、この地はサボー辺境伯の独立国家の体をなしていた。そして国家や王といった存在があてにならないこの時代において、金や銀、そして鉄といった資源こそが最も信頼に足るもの

          たそがれのディードリット[エピローグ act.3:エピソード1988]

          たそがれのディードリット[エピローグ act.2:炎の魔女]

           ロードス歴871年、ロードス島西部の辺境の村でひとりの女性が生を受けた。彼女の名はアインス。古いロードスの言葉で「数字の1」や「はじまり」を意味する名である。  彼女は幼少の頃から不思議な力を持っていた。最初の頃は天気を当てたり探し物を見つけたりするくらいの、少しばかり人より勘が鋭いといった程度のものであったが、そのうち少し先の未来を言い当てるようになった。  また彼女の両親は敬虔なマーファの信徒だったので、彼女も幼い頃から村にあるマーファの教会に通っていたが、十歳頃になる

          たそがれのディードリット[エピローグ act.2:炎の魔女]

          たそがれのディードリット[エピローグ act.1:旧友との約束]

          「ジークはあたしがディードリットだってこと、前から気付いていたの?」 「まさか! 城で初めて聞かされてびっくりしたよ」  あたしとジークはヴァリス王国の王都ロイドを出立し、ライデンに向かう旅を続けていた。  ジークはあたしの正体を知っても、これまでと変わらない態度で接してくれた。ただ、二人きりのときはこれまでの「ユリ」ではなく「ディード」と呼んでくれることとなった。  変わったところといえば、ジークがときおり昔の話を聞いてくるようになったことだ。特にパーンの話を聞きたがった。

          たそがれのディードリット[エピローグ act.1:旧友との約束]

          たそがれのディードリット[エピソード2・参道での仇討]

           あたしたちはヴァリス王国の首都ロイドまであと三日というところまでたどり着いた。カノン辺境の荘園ナヌカで巡り合った出来事に、ジークは当初かなりショックを受けていたが、旅を続ける数日のうちに彼は元の快活さを取り戻した。ナヌカでのことも、それから二人の間で話題に出ることはなかった。  一方でロイドに近付くにつれて、ジークの心は別なことにとらわれ始めたようだった。最初は単純に母親と再会することに緊張しているのかと思ったが、やがてどうもそれだけではないような気がしてきた。  宿場町で

          たそがれのディードリット[エピソード2・参道での仇討]

          たそがれのディードリット[エピソード1・猩々退治]

           その日、家に戻ると屋根の上に二羽のカラスがとまっているのに気が付いた。それ以上、特に気を留めずに玄関の戸を開くと、カラスたちは地面に降りてきてあたしのかたわらに来た。  家の中に入ろうとすると、カラスたちも歩いて一緒に入ろうとしてきた。カラスは警戒心の高い鳥なので、不思議な行動をするものだと思ったが、あるいはこれは何かあるのかなと思い直した。 「小さな子たち、あなたたちも家に入りたいの?」  声をかけるとそれに反応するように、小さな脚で歩きながら家の中まで入ってきたので、カ

          たそがれのディードリット[エピソード1・猩々退治]

          たそがれのディードリット[プロローグ・旅立ち]

           アラニアの王都であるアランの街は、ロードス島の北東に位置している。建国から五百年近い歴史を誇るこの国の都には、巧みな石工であるドワーフ族によって築かれた石造りの建物が立ち並んでいる。  かつて「帰らずの森」と呼ばれた森のほとりに営んだつつましい家で、あたしはこの六十年ほどを過ごしてきた。その間にも、ときおりロードス島の各地に出向いていくことはあったが、ちょうど十年前に伴侶であり最愛の人であったパーンが亡くなってからは、ほとんど外に出ることもなかった。ところが今回は、旧友のた

          たそがれのディードリット[プロローグ・旅立ち]

          「羽衣」(18歳以上向け)

           透き通るような湖水。そこに遊ぶのは八人の乙女。彼女らは天女である。ここ余呉の湖の美景に憧れ、彼女らは年に一度、ここで水浴びをするのであった。  その刹那、彼女たちの顔に不安の影が走る。人が近付いてくる気配を感じたのだ。彼女らは急いで岸に上がり、柳の木にかけていた羽衣を羽織った。たちまち彼女らの姿は白鳥に変わり、次々と西の空へと飛び去っていった。  ところが八人いた天女のうちの一人だけが、自分の羽衣を見つけることが出来ずにいた。彼女は狼狽してしばらく辺りを探し回ったが、何も見

          「羽衣」(18歳以上向け)

          書を捨てストリップ劇場に行こう(『編集者・石川知実の静かな生活』)

           念願だったストリップ観劇を、ついに初体験してしまった。  ストリップに興味を持ち始めたのはかれこれ一年ほど前である。それまではストリップというと、かなりいかがわしい風俗と思っていた。ところが最近は女性客も多く、また踊りの内容もやらしさだけではなく美しさや可愛らしさを追求したものが多いという話を聞くようになった。  またひとつのきっかけは、親しくさせていただいている作家の梅田サクラコ先生の、ストリップをテーマにした小説『ステージライト』を読んだことである。サクラコ先生はストリ

          書を捨てストリップ劇場に行こう(『編集者・石川知実の静かな生活』)

          蠱惑の水彩画(『編集者・石川知実の静かな生活』)

           最近、水彩画を始めた。  そのきっかけは昨年12月に、水彩画のワークショップに参加したことだった。そのワークショップはアーティストの宗像カヲルさんが主催したもので、あたしは水彩画の素養がまったくないままに飛び込んだのだった。  実は宗像カヲルさんは、あたしが以前より注目していた方だった。今の出版社に入って最初に配属されたのはエンタメ系の雑誌だったのだが、その時にある国民的アイドルグループの新人メンバーとして彼女が加入し、あたしは彼女のインタビュー記事を担当することとなって

          蠱惑の水彩画(『編集者・石川知実の静かな生活』)

          知実の震災手記(『編集者・石川知実の静かな生活』)

           2011年3月11日の東日本大震災は、あたしの人生の中でも最大の出来事のひとつとなるのは間違いない。  当日午後、あたしは上野で打ち合わせを終えたところだった。そして編集部に帰る前に、急ぎでPDFファイルを送る用事があったので、駅前のマンガ喫茶に入った。  当時すでにスマホはあったが、まだ今ほど使っている人は多くなく、あたしはいつもB5サイズのパナソニックのレッツノートを持ち歩いてモバイルの仕事をこなしていた。ただやはり当時は今ほどWifiが使える場所がなかったので、マンガ

          知実の震災手記(『編集者・石川知実の静かな生活』)

          知実、セクハラ攻撃を受ける(『編集者・石川知実の静かな生活』)

           女子を四十年近くやっていると、これまで受けてきたセクハラ攻撃は枚挙にいとまない。  最初の明確なセクハラ攻撃は、中学の時の痴漢被害だった。あたしの実家から学校のある仙川までは近かったが、それでも京王線で三駅の距離だったので電車通学をしていた。朝は上り方面だったので、いつもかなり混み合っていた。  最初はあたしも状況がよく分からなかった。自分の尻に何かが触れているのは感じたが、誰かの鞄が触れているのだと思っていた。ところがそれが誰かの手であると気が付いた時には、その手はより

          知実、セクハラ攻撃を受ける(『編集者・石川知実の静かな生活』)

          知実、おばんざい屋の女将になる(『編集者・石川知実の静かな生活』)

           友人の恵美が「おばんざい屋」を開いたというので訪ねて行った。  恵美は京都の大学の時に知り合った。あたしは文学部で、彼女は理工学部だったが、共通の知り合いを通じて出会って意気投合し、あたしの大学時代の数少ない友人のひとりとなった。卒業後の彼女は誰もが知っている大手の製薬会社に就職した。傍目で見ても順風満帆なキャリアを進んでいた彼女だが、ちょうどコロナ禍の真っ只中だった二年前に、外資系のコンサルティングファームに転職し、東京に引っ越してきた。  ちょうど引っ越してきてすぐの頃

          知実、おばんざい屋の女将になる(『編集者・石川知実の静かな生活』)