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梅壺物語

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梅田桃子さんとの撮影時に生まれた物語がふくらみ、時代を越えてひとつの壺を受け継いでいった女性たちの、一連の物語となりました。 章立ては以下のようになっています。 0. 『梅壺… もっと読む
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『梅壺物語』登場人物紹介

『梅壺物語』登場人物紹介

桃:東京のある遊郭に身を置く娼妓。両親を早くに亡くしたが、母親から受け継いだ壺を大事に持っている。

T:東京帝國大学の学生。桃の馴染みの客。

萩原新三郎:新進気鋭の浮世絵師で元浪人。妻がいるにもかかわらず、美人画のモデルとなったお露と恋仲になる。

お露:江戸の呉服屋の一人娘。明治維新後には両親から実質的に家業を引き継ぎ、繊維の輸出入をおこなう商社へと発展させた。

京の君:源九郎判官義経の正

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『梅壺物語』「桃の段」(あらすじ)

『梅壺物語』「桃の段」(あらすじ)

以下は2021年11月13日~25日に「AAA ANNEX GALLERY」(横浜)に出展した作品「梅壺物語」に添えた物語のあらすじです。

【あらすじ】

 時代は昭和初期。両親を早くに亡くした「桃」は、娼妓として遊郭に身を置いている。彼女の唯一の持ち物は一抱えほどの大きさの壺で、その中に母親から受け継いだ大切なものを仕舞っているという。
 馴染みである帝大生の「T」は、彼女が「決して覗いてはい

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『真景牡丹灯籠』(あらすじ)

『真景牡丹灯籠』(あらすじ)

【あらすじ】

 新進気鋭の浮世絵師、新三郎は、美人と評判のある商家の一人娘、お露の美人画の制作を依頼される。新三郎はスケッチのため何度かお露のもとを訪れるうちに、二人は相思相愛の仲になる。
 しかし新三郎には妻があった。妻は彼のパトロンである浮世絵の版元の娘であり、また彼は妻を愛していたので、作品が完成すると、お露のもとに訪れることは差し控えることとした。
 お露は新三郎のことが忘れられず、何度

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『梅壺の由来』(あらすじ)

『梅壺の由来』(あらすじ)

【あらすじ】

 壇ノ浦の合戦で平家一門を滅ぼし、京都に凱旋した義経は英雄と讃えられたが、一方で鎌倉にいる頼朝からは疎まれ、次第に対立するようになる。義経が無断で朝廷から官位を得たことも、彼の立場を危うくした。
 そうした中、義経の元に鎌倉からの文が届く。義経に謀反の疑あり、というのだ。そして身の潔白を示すために、平時忠の娘であり、義経に嫁いだ京の君の首を打て、としたためられていた。
 京の君は身

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『梅壺物語』「梅の段」(あらすじ)

『梅壺物語』「梅の段」(あらすじ)

 東京のある繊維問屋の娘として生まれた梅子は、母親から厳しく躾けられて育った。幼い時から三味線や常磐津を習い、成長するにつれて近所でも評判の美少女と呼ばれるようになった。しかし母親による過剰なまでの束縛に、梅子は窮屈さと生き辛さを覚えていた。
 そうした梅子にとって、家の中で心を許せる相手は叔母であった。叔母は家業の経営の実質的な責任者であり、家長としての厳しい面も持っていたが、梅子に対しては優し

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『梅壺物語』プロローグ

『梅壺物語』プロローグ

 「ユウ、いま片付けてるから、あと三分だけ待って」ドアの向こうから桃が答える声を聞きながら、ユウはアパートの廊下でしばし待ちぼうけすることとなった。駅に着いてからもショートメールを送っているのだが、ユウが桃の部屋に待たずに入れたことはこれまでない。
 ちょうど三分たってから、「ごめんね、いつも待たせて」と言う桃がドアを開けた。キャミソール一枚の格好で、化粧はしていない。そのかすかにそばかすが浮いた

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『梅壺物語』エピローグ

『梅壺物語』エピローグ

 「雨もあがって、よかったね・・・・・・」雲間から差し込む日の光に照らされて、緑の葉が輝く梅の古木を眺めながら桃は言った。その日は朝から雨だったが、この縁側に座って休んでいる間に、雨は上がって空も明るくなってきた。
 庭の梅の木は横に広く枝を伸ばした大樹で、何百年も前からそこにあったような堂々としたたたずまいであった。しかし梅の木の寿命は百年程度とのことなので、この木も最初に植えられたものから何代

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『梅壺物語』関連年表

『梅壺物語』関連年表

 以下は『梅壺物語』に関連する事項の年表です。作者の忘備録として作成したものですが、物語の背景を理解する一助となれば幸いです。

【年表】

1168年 京の君、大納言平時忠の娘として生まれる。

1185年 京の君、源九郎判官義経に嫁ぐ。同年、侍女しのぶが京の君の身代わりとなって殺害される。京の君としのぶの母おわさは、密かに京都北白川の尼寺に匿われる。

1189年 義経、頼朝によって奥州平泉で

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