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ともいしの官能怪談

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恐怖と官能はヒトの根源的な存在とつながっています。 ここでは古今東西の怪談の、エロティックな面を脚色した小説を掲載していきたいと思っています。 (18歳以上向けです)
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記事一覧

戸口に現れたもの

 彼の目の前には、親友エドワード・ピックマン・ダービィだったものの死体がある。そして彼の…

tomoishi
2か月前
7

「羽衣」(18歳以上向け)

 透き通るような湖水。そこに遊ぶのは八人の乙女。彼女らは天女である。ここ余呉の湖の美景に…

tomoishi
4か月前
3

「畜生塚」(18歳以上向け)

「関白殿下が……高野山清巌寺にて、ご自害あそばされた由にございます」  治部様はそう私に…

tomoishi
9か月前
3

「怪談乳房榎」(18歳以上向け)

 柳島に住む菱川重信は、年は三十七になる江戸で評判の絵師であった。元は秋本越中守に仕える…

tomoishi
9か月前
1

「播州皿屋敷」(18歳以上向け)

 時は戦国時代。播州(播磨国)の姫路を治めていたのは小寺氏であった。小寺氏の重臣で青山に…

tomoishi
11か月前
1

「道成寺」(18歳以上向け)

【安珍と清姫の伝説】  奥州白河より安珍という僧が熊野に参詣に来た。この僧は大層な美形で…

tomoishi
1年前

雪女(18歳以上向け)

 武蔵国のある村に茂作と巳之吉という二人の木こりがいた。茂作は老人で、彼の年季奉公人であった巳之吉は十八の少年であった。毎日、彼らは村から二里(約8km)ほど離れた森へ一緒に出かけた。  その森へ行く道の途中には大きな川が流れており、そこを越すには渡し船で行く必要があった。これまで何度か橋がかけられたこともあったが、洪水があるたびに流されてしまった。普段から流れが急であるため、渡し船が欠かせなかった。  茂作と巳之吉はある冬の日に、帰り道で大吹雪に見舞われた。なんとか渡し場ま

「天守物語」(18歳以上向け)

【群鷺山の地主神社の獅子に関する伝承】   播磨一国を治める武田播磨守はある日、紅葉山に…

tomoishi
1年前
1

「いもり酒」(『苅萱桑門筑紫𨏍』より)(18歳以上向け)

 九州は筑前国の武将、加藤左衛門尉繁氏には、正妻の牧の方と側室の千鳥の二人の妻がいた。繁…

tomoishi
1年前

エーリッヒ・ツァンの音楽(18歳以上向け)

 私は地図を何枚も広げて、入念に探してみたが、オーゼイユ街という町名は見つからなかった。…

tomoishi
1年前
1

「豊志賀の死(真景累ヶ淵)」(18歳以上向け)

 江戸は根津の七軒町に住む豊志賀は、浄瑠璃の富本節の女師匠で、三味線を教えて生計を立てて…

tomoishi
1年前

「女殺油地獄」(18歳以上向け)

[前段までのあらすじ]  大坂本天満町で油屋を営む河内屋の次男坊の与兵衛は、放蕩の日々を…

tomoishi
1年前

「忍夜恋曲者」(18歳以上向け)

 鎮守府将軍源頼信の家来にして勇者として名高い大宅太郎光圀は、関東は下総国を旅していた。…

tomoishi
1年前

「インスマスの影」(18歳以上向け)

 蔭洲升という土地に私が目を向けるきっかけとなったのは、卒業論文のテーマに関連した文献を図書館で収集している時に、一冊の写真集に触れたことであった。  私は東京の大学で建築学を専攻しており、卒業論文のテーマとして日本の古民家と歴史的街並みを選ぶこととした。当初は沖縄の八重山地方の、例えば竹富島の景観などに関心を寄せていたが、次第に奄美群島の伝統的な村落景観に焦点を絞ることとした。ひとつには先行研究の多い沖縄よりも、奄美群島の方が研究の余地が残されているのではないかという目論見