「インスマスの影」(18歳以上向け)
蔭洲升という土地に私が目を向けるきっかけとなったのは、卒業論文のテーマに関連した文献を図書館で収集している時に、一冊の写真集に触れたことであった。
私は東京の大学で建築学を専攻しており、卒業論文のテーマとして日本の古民家と歴史的街並みを選ぶこととした。当初は沖縄の八重山地方の、例えば竹富島の景観などに関心を寄せていたが、次第に奄美群島の伝統的な村落景観に焦点を絞ることとした。ひとつには先行研究の多い沖縄よりも、奄美群島の方が研究の余地が残されているのではないかという目論見