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起業の道のり(仲間集め編)

一念発起して起業を決意した大学3回生の秋。僕は共に事業を始める、仲間集めに奔走していた。

当初のビジネスは「日本全国の観光地動画をつくり、まとめたメディアを提供する」という事業。

動画は、画像や文章と比べて、情報量が圧倒的に多いため、より的確に情報を届けられる。5G通信への移行に伴い、確実に動画の時代がやってくる。

2018年当初には、まだ、観光動画専門のWEBメディアは存在していなかった。コンセプトは『旅行という幸せのキッカケを世界中に届ける。』

……やれる!と思った。

そんな小さくも、熱い野心を胸に、僕は3人の友人を"サシ飲み”に誘い、「なぜ彼らをメンバーに迎え入れたいか」を語り、彼らの思いに耳を傾けた。

中学時代からの同級生である三崎龍人、大学時代のサークルで代表をしていた高橋圭司、同じ研究室で苦楽を共にしてきた松本涼太に声をかけた。

それが、MOVEDOORの始まりだった。

【第1章:仲間を求めた理由】

自分だけではできない何かを成し遂げるためには、仲間の力を借りることが必要不可決だ。

言い方を変えれば、誰かの力を借りず、一定以上の成果は挙げられない。それは起業も同じだろう。

例えば、広報PR会社を設立する上で、プログラミングやデザイン、動画編集、撮影の技術を要する。

当時の僕は、起業に興味こそ持っていたものの、動画を編集できるわけでも、デザインができるわけでもない。全てが「ゼロ」からのスタートだった。

これらを全て1人で習得しようとすれば、膨大な時間と年月がかかる。もし、一人で起業していれば、スタートラインにすら立てていなかっただろう。

加えて僕は飽き性だし、意思は強くない。テスト勉強も、いつも試験直前のギリギリだった。

そんな自分が、たった一人で挑戦すれば、心折れて、継続できないことは、容易に想像できた。

技術面とメンタル面の双方において、仲間を探すことは、学生起業の最優先事項だった。

【第2章:仲間を見つける方法】

仲間を集めるためには、まずは人と会い続けることが必要不可決だ。とにもかくにも、人と会い続けなければ、仲間を見つけることはできない。

当時の僕は、様々な学生団体に所属して、優秀な学生にアプローチしたり、起業や事業に興味を持つ人が集まる勉強会やイベントに足を運んでいた。

オンラインサロンに入って、オフ会に参加したり、友達や知り合いから紹介してもらうのも良い。100人会えば、必ず気の合う仲間に出会えるはずだ。

しかし、この1年。新型コロナウイルスの世界的な流行と共に、オフラインでのコミュニケーションは、すっかり難しくなってしまった。

会えない状況下で、仲間を探すためには
やはりSNSの存在は欠かせないだろう。

主に活用しているのは、FacebookとTwitter。
それぞれの媒体には異なる性質がある。

Facebook
ビジネスに関心があるユーザーが多い。経営層や
事業主も多く、実名である。実績や活動報告など。

Twitter
投稿のハードルが低い。若いユーザーも多いため
自分と似ている価値観のユーザーを探しやすい。

SNSは「自分の考えを広く、多くの人に届けるメディア」として親しまれている。しかし、ただの発信ツールに終始するのは、非常にもったいない。

SNSは、「1対1のコミュニケーションを最速かつ効率的に実現する」ツールとして活躍する。

僕は日頃から、コメントやリプライを活用して、気になる人と積極的に交流をしている。

オンライン上で打ち解けてきたら、メッセージを送り、ZOOMで話したり、対面で話すこともある。

オンライン上であっても、「1対1」の会話を重ねていけば、関係性は確かに深まる。その結果、仲間になってもらえる可能性は十分にあり得る。

本音を綴り、共感できる相手をピンポイントで探し出せるSNSは、現代が生み出した、新しい仲間集めのあり方と言えるかもしれない。

【第3章:仲間を集める技術】

何をやるかと同じくらい、誰とやるかが重要だ。

当時は、学生団体に所属していたこともあり、
周りには、前向きで意欲的な学生が多くいた。

しかし、「誰でもいいから一緒にやろうや!」と声を掛けることに、怖さと違和感を感じた。

なりふり構わず公募すれば、メンバーはすぐに集まる。でも、立ち行かなくなるのは目に見えていた。

きっと、ベンチャーはそんなに甘くない。

将来を共にする、創業時のコアメンバーに対して、当時の僕が考えていた条件が4つある。

①コアメンバーは5人まで
②共に活動した過去がある
③自分と異なる技術と知識
④トップを経験した者たち

これは弊社のケースだ。会社の方向性や規模感によって、考えるべき点や注意すべき点は異なる。

1人の若手経営者の視点として読んでもらいたい。

①コアメンバーは5人まで

乗り越える壁が多いベンチャーにおいて、「創業メンバーは5人以下がベスト」だと考えた。

人数が増えれば、意思疎通は困難になり、返って身動きが取れない。チームが分裂するリスクもある。

少人数すぎても、スピード感に欠ける。起業当初は、なんでも自分たちで手を動かすことになるし、常に思考を巡らせなければいけない。

メンバーと信頼関係を築き、お互いの得意分野を理解して、役割分担と権限委譲を行う。

自分にとって、チーム全体の熱量と情報を、無理なく共有できる人数が「5人」だった。

②自分と異なる技術と知識

観光動画メディアの設立には、動画撮影、WEBデザイン、プログラミング等のスキルが必要だ。

声をかけるメンバーを厳選する中で、自分と異なるスキルを持つメンバーが、集まってきた。

結果として、一人ひとりが、上記の得意分野に集中し、お互いの弱さを補い合うチームとなった。

③共に活動した過去がある

声をかけたメンバーは、学生時代にプロジェクトの企画やゼミなど、「共に何かに取り組み、壁を乗り越えてきた経験」を持つ人物ばかりだ。

共に活動してきた仲なら、お互いのことを深く理解しているし、信頼関係がある。たとえ困難にぶつかっても、解決の糸口を見出せると考えた。

一方で、互いを知らない状態で事業を始めるには、一定のリスクがあることを伝えたい。

起業して数ヶ月。仕事量も増えてきた頃、新たに数名のメンバーを迎えることになった。彼らと活動するのは、その時が初めてであった。

お互いの温度感や熱量、仕事に対する価値観が分からない状態では、意思疎通が困難で、彼らとは些細なことで、よくすれ違った。

「全てをかけて取り組みたい」という僕たちと「自分たちのペースで関わりたい」という彼らは、きっと初めから、違う景色を見ていたのだろう。

熱量の差異、スキルや経験の差、困難の捉え方。話し合いの末、彼らは別の道へ進むことになる。

振り返れば、彼らの意思を汲み取れないまま、誘い入れた僕に責任がある。予め、お互いを良く理解して、こちらも一定の条件を提示すべきであった。

会社の基盤がまだ整わない創業期は、乗り越えなければならない壁があまりにも多い。だからこそ、

創業メンバーを誘い入れる際には、ミスマッチを防ぐことが大切。なんとなくジョインさせるのは危険だ。求める条件を提示して、合意してもらおう。

④トップを経験した者たち

MOVEDOORの創業メンバーは全員、学生団体やサークル活動で代表を務めてきた。

それ故に、全員がチームを俯瞰して、自分がどのように貢献できるか、思考を巡らせている。

何事においても、当事者意識が高いのだ。

当事者意識を「影響と責任を持つことを諦めない範囲」と定義するなら、程度の差こそあれど、当事者意識を持たない人など、本来存在しない。

ある人にとっては、「言いつけられた自分のタスク」かもしれない。ある人にとっては、「プロジェクト全体の進捗」かもしれない。

その意識の「幅と高さ」をどこまで広げられるか。

もちろん、そこに正解は無いけれど、コアメンバーであるなら、当事者意識を持てる人が好ましい。

「自分がいることでチームを良くしていきたい」

そう思えるのは、代表を経験してきた人の視点であり、「自分でなにかを生み出すこと」に魅力を感じられる、これ以上ない頼もしい人材だと思う。

【第4章:仲間を集める技術】

仲間を誘うときには、自己を開示し、
ビジョンを語り、強い共感を集めることが大切だ。

「なぜ、この事業をやるのか」

「なぜ、あなたとやりたいのか」
「なぜ、今なのか」

そんな唯一無二のストーリーを伝えていく。Why(なぜ)を語れない事業や起業は、やはりどこか虚しく、短命に終わってしまうだろう。

数ある進路の中で「この道を選びたい」と感じてもらえなければ、仲間にはなってもらえない。

こちらの思いを一方的に伝えるだけでなく、相手の夢や目標をヒアリングして、こちらの活動や思想と上手にリンクしてあげることも大切だ。

共に活動することが、
彼らの理念に繋がっている状態が理想だ。

「チームに入ることで、
 彼らがどのような人生を歩めるのか?」

どこまでも真剣に考え、可能性を提示していくことが、仲間集めの最重要事項だと感じている。

【最後に:仲間を集めた責任】


起業当初のメンバーは、当時、大学3回生。就職活動を控えた、ごく普通の大学生だった。

就職は、人生を左右する大きな決断だ。

「プライベートの充実を!」と叫んでも、1日の大部分を占めるのが仕事であるし、人によってはその仕事が「人生の生きがい」になっている。

彼らは大手企業に就職して、グローバルな事業に関わることも出来た。もちろん、上京もできた。

そんな彼らが、膨大な選択肢から、ここを選んで、付いてきてくれた。嬉しさの一方で、言葉では表現できない、プレッシャーがあった。

それでも、信じ合える仲間の存在があったから、苦しいときも、笑い合って進んでこれた。

未熟であっても、泥臭く挑戦すること。
辛いときこそ笑うこと。
ピンチと挫折を共に楽しむこと。

「大切な人の人生の時間を借りている」という重責もエンジンにして、前だけを見て走ってきた。


起業当初に掲げていた「観光動画メディア」の構想は、残念ながら、半年で終止符を打つことになる。

ビジネスプランも甘かった。いきなり世界中にインパクトを与えたり、社会を変えられるほどの実力や経験を、まだ僕達は持ち合わせていなかった。

大きすぎる目標、実力不足な自分。信じてくれた仲間に対する不甲斐無さで、僕は潰されそうだった。

しかし、落ち込んでいる暇はない。

「これからどうするかだけを考えよう」

ターゲットからコンセプト。全ての戦略を早急に立て直し、僕たちは次の一手を考え始めた。

「大きすぎる目標よりも、まずは自分達が出来ることで、目の前の1人に喜んでもらえる仕事を」

地に足を付けて、一歩ずつ進もうと誓ってから、我々はデザインや映像の制作をスタートした。

そこから数ヶ月、数々の実績を重ね、制作会社から、広報PR会社へと成長してきた。

ミッションは「広報PRで事業成長を実現する」

現在は、成長を売る広報PR会社」をモットーに、兵庫県三田市を拠点に活動している。

初めての事業は失敗に終わったが、仲間と懸命に磨いてきたスキルが無くなることはなかった。

今こうして、クライアントとワクワクするような事業に関われているのが、何よりの証拠だ。

挫折を乗り越えた瞬間。僕たちは本当の意味で、仲間になれたのかもしれない。

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