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優美堂のこと

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東京ビエンナーレの「優美堂再生プロジェクト」に参加した体験記です。埃だらけになりながらの解体作業から、ギャラリースペースの壁を作り上げる施工作業。作品展での壁画制作なども。
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エピローグ/プロローグ

エピローグ/プロローグ

「おーい久しぶり」と、店番をしているののちゃんに声をかけたら、めっちゃテンション上げて抱きついてきてくれたのがうれしかった。1年以上もこの優美堂で一緒だったから、覚えてくれてる。

さて、東京ビエンナーレにあわせてオープンしたこの新しい優美堂。9月にビエンナーレが終了した後も、作品展示や、カフェを含む、地域に密着したコミュニティアートスペースとして様々なワークショップやイベントの会場になる予定です

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優美堂でつながる、広がる

優美堂でつながる、広がる

東京ビエンナーレの最終日に、神田川の聖橋から万世橋の区間に、小さな木製の船を流してタイムレースをするという「天馬船プロジェクト」というのがありました。これも、優美堂と同じく、中村政人さんが中心となって動いているプロジェクト。

ある日、僕は優美堂での作業を終えた後、「3331 Arts Chiyodaで天馬船に旗を付ける作業があるから、手が空いてる人は参加して!」っていうことで、その作業現場に向か

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優美堂再生プロジェクトの個人的振り返り

優美堂再生プロジェクトの個人的振り返り

■優美堂から額縁を運び出すまず驚いたのは、おびただしい量の額縁の数。運び出す作業とは聞いていたけど、これほどとは!優美堂の建物から、30人がかりで延々と額縁を運び出し続け、運び出した数はなんと3,000点。

優美堂からトラックを使って運び出した先は、3331 Arts Chiyodaのメインギャラリースペース。広い空間が、どんどん額縁で埋まっていく。さて、これは本当に全部片づけることができるのだ

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優美堂からアートでつながる

優美堂からアートでつながる

2021年4月3日に、優美堂の「オンライン企画会議」がありました。東京ビエンナーレの会期中「優美堂再生プロジェクト」の展示企画として、1,000点の作品を優美堂に展示しようというもの。会議の内容は、その作品展の詳細と、「キュレーター募集」というものでした。

僕は、「へー、面白そうだな」と感じたものの。その時は「作家さんの知り合いもいないので、僕には難しいかな」と思いました。

そして、東京ビエン

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ハンコで絵を描く

ハンコで絵を描く

優美堂で描いたハンコアートについては、既にEdge Rankのマガジンの方でも書いたけど。あらためて。

ハンコアートとは、ゴム印を使って絵を描くことです。

■きっかけは「会社ごっこ」

ハンコアートのきっかけは、2009年の夏にやった「会社ごっこ」のアートプロジェクト。日本橋で小さなオフィスを借りて、そこを拠点にして夏の間ひたすら創作活動をしていました。

「会社」の風体で、ロゴや看板をつくり

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高所での作業

高所での作業

優美堂で施工作業をしていた時。「なるほどな」っていう興味深い体験をしたので、ここに書いておきます。

神田小川町にある、80年前に建てられた元額縁屋さんの建物をリノベーションする作業中。僕は、二階で作業をしていました。解体作業によって壁や天井などの板をだんだんと外していき、二階の床も脆い板だけに。踏みどころが悪いと、バキッと踏み抜きそうになります。それなりの高さがあり、一回のフロアはコンクリートな

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優美堂の楽しみ方

優美堂の楽しみ方

行き方優美堂の行き方は、いくつかあります。地下鉄の一番近い出口から向かうのも良いですが、ちょっと遠回りして散歩しながら訪れるのも良いですよ。私も、「優美堂再生プロジェクト」でこの建物のリノベーションをお手伝いしていた際、いろんな行き方で訪れていました。

地下鉄の一番近い出口は、地下でつながっている新御茶ノ水駅、淡路町駅、小川町駅のB5出口。地上に出てから、ワンブロック歩くだけ。2分くらいで着きま

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優美堂ヤサシイ山登りツアー

優美堂ヤサシイ山登りツアー

7月10日に優美堂がオープンした後、東京ビエンナーレの期間中に街歩きの企画を実施しました。私が普段やっている、「アーバンアルピニスト」の街歩き企画の、優美堂バージョンのコースをつくって。

テーマは、「登らない山登り」と、東京ビエンナーレのお勧めスポット紹介。「山」とつく地名やスポットを訪れたり、富士塚に登ったりするというツアーは、以前何度かやったことがあります。そこに、優美堂と東京ビエンナーレの

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壁をつくる

壁をつくる

「優美堂再生プロジェクト」の施工作業で学んだことはいろいろあるけれど、この「壁をつくる」という工程を学べたことはとても有意義だった。

屋根や壁をはがしてスケルトンの状態になったところから、防水シートと断熱材を貼り、シナベニヤを貼ってから、石膏ボードで覆っていく。継ぎ目にテープを貼り、パテを塗って目地を埋め、最後に下地と仕上げの塗料を塗る。

その過程で、小型のタッカーや、インパクトドライバー、丸

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記録すること

記録すること

作業の工程をせっせと写真を撮っていたら、「前田さんは記録魔だね」と中村さんが言った。「中村さんもそうじゃないですか」と僕は言って、二人で笑った。

もともと書くことが好きで、さらに写真を撮るのも好きなので、「ブロガー」という肩書を得てからは水を得た魚のようにひたすら写真を撮って記事を書き続けた。いろんな「ブロガーイベント」に参加しては、その感想などをブログに記録する。そんな記事が蓄積していって、ブ

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優美堂でやってみたいこと

優美堂でやってみたいこと

2018年から、月に1回くらいのペースで個人主催の勉強会(ときどき大人の遠足や街歩き、テーマを決めた飲み会など)をやっています。最初は、渋谷にある知人の会議スペースで。その後、中銀カプセルタワービルに滞在中にいろいろみんなで企画をやったり。最近はもっぱらオンラインでの開催ですが、東京ビエンナーレ期間中は再び街歩きなどやりつつ。

テクノロジーとクリエイティビティをテーマに、みんなで知識を持ち寄りつ

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ユウビスト

ユウビスト

優美堂で作業をする人たちのことを「ユウビスト」って最初に名付けたのは、中村政人さんだったのだろうか。とにかく、今はこの呼称が定着している。

不思議な魅力のある場所なのですよ。この優美堂って。そして、ここにはいろんな年代の、いろんな人たちが集まっていて、みんながそれぞれの個性やスキルを活かしつつ、優美堂を再生するというプロジェクトに貢献している。

僕も、そんなユウビストのひとり。

ここに、みん

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ご縁とタイミング

ご縁とタイミング

ちょうど10年くらい前。神田須田町にあるオフィスに通って仕事をしていた頃、この神田小川町にある優美堂の前をよく歩いて通っていた。その時は、数ある店のひとつでしかなく。「へー、額縁を売っているんだ」というくらい。店内に足を踏み入れたこともなかった。

ただ、この特長的な看板建築のたたずまいは記憶に残っていた。正面に描かれた富士山。10年前から、もうすでにだいぶ剥がれてボロボロだったけど。不思議な存在

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ノミで木と対話する

ノミで木と対話する

心静かに、木と対話する。

「こうですか?」
「いえ、ちょっと違います」
「じゃぁ、こっち?」
「そっちも、間違いじゃないですけど……」
「あ、わかった!こんな感じですね」
「えぇ、そうです。そのまま、まっすぐに」
「はい!ありがとうございます」

木には、節とか木目があって、きれいにノミで加工するには、そういった年輪の流れみたいなのを把握して、的確な方向に削る必要があるんですね。正しい向きで削る

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