不老不死

私は不老不死の薬を作った

猛毒をどれほど飲んでも

剣で自らの胸を

深く貫いたとしても

決して死ぬ事はない

そんな天才科学者である私が犯した

唯一の過ちは

その薬を飲んでしまった事だ

歳は忘れた

二百まで数えたが

その愚かさに気づき数えるのをやめた

その何十倍もの時が流れた

そして今、私は

孤独に耐えながら

死を勝ち取る事の出来る

薬の研究に打ち込んでいる

隕石の飛来により訪れた

氷河期で生命は死に絶えた

そして地球は

長い時間をかけて

再生の途を辿ろうとしている

緑が大地を埋め尽くし

水は浄化され

新しい命が生まれようとしていた

そこに私のような者が

いてはならない

不老不死の呪縛を打ち破り

安らかな死を夢みる

その薬の開発も

最終段階に入っている

だが

それを完成させるために

必要なたった一つの物

それは

若い女性の血液

それを手に入れるまでには

この先

どれほどの年月を要するのだろうか

私は愚かな天才科学者

世界の終わりに立ち会い

世界の始まりを待つ

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