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企業だけではなく、地域の「やってみよう」も叶えられる場に|Takanawa Gateway Festレポート

11月3日から7日にかけて、「Takanawa Gateway Fest 2021」を高輪ゲートウェイ駅を中心に開催しました。

昨年に続いて2回目の開催となった今回は、「地域とつながり、地域を楽しむ」をテーマに、地域のみなさまと育てた高輪産ホップを使用し醸造したビールをお披露目する「Takanawa Hop Fest」、現在は非公開エリアの「Partner Base Takanawa Gateway Station」でロボット体験や映像や模型、港区観光ボランティアの方々の名所紹介で地域を巡る「未来と今の街を知る Partner Base高輪ツアー」、駅前の仮囲いに駅周辺のまちなみのイラストの掲載が行われました。また、3月開催の「Playable Week」で行われた「枯れない花瓶とサステナブルツリー」「高輪ゲートウェイ駅マルシェ」「station Piano」「高輪ゲートウェイ駅周辺まちあるき」も、引き続き実施しました。

https://note.com/tokyoyard/n/n3e1532ef6395

昨年の「Takanawa Gateway Fest」内で開催した「5 Days CITY」や3月の「Playable Week」では、パートナー企業のみなさまとの「実験」や「共創」の取り組みを、広くお伝えすることができました。

一方で、地域のみなさまが参加可能な場をつくり、持続可能な関係を多面的に築いていくことがわたしたちの大きな課題でもありましたが、2024年度のあたらしい街の開業に向けての工事がいよいよ始まり、地域のみなさまと様々な接点をつくるなかでの変化も少しずつ見え始めました。

今回の「Takanawa Gateway Fest」で「地域」に焦点を当てたのは、一方的にJR東日本の取り組みを発信するのではなく、地域のみなさまが参加するなかで見え始めた変化の一端を発信し、街に関わる方々の輪をさらに大きくしていきたいという意図があります。そのために、この「Takanawa Gateway Fest」を地域の皆さんの「やってみよう」が叶えられる場にし、地域全体のイベントにしていけたらと考えています。

このnoteでは、そうした思いで開催した「Takanawa Gateway Fest」の様子を、JR東日本 品川開発プロジェクトメンバーの桑原和希が各担当者の声とともにお伝えします。

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桑原和希
東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 新事業創造部門 品川くらしづくりユニット(事業計画)
TokyoYard PROJECTで、街のブランディング・プロモーション業務を担当するとともに、地域の窓口となるよう、地域での交流・イベント企画などを行っている。

Takanawa Hop Fest

「Takanawa Hop Fest」では、高輪ゲートウェイ駅周辺エリアの事業者や学校、地域のみなさまとホップを育て、醸造したビールのお披露目が行われました。

JR東日本が高輪ゲートウェイ駅周辺で行う「品川開発プロジェクト」の一環である「TokyoYard PROJECT」では、まちづくり拠点としているTokyoYard Building(以下、TYビル)を中心に、昨年からホップの栽培をスタートしました。グリーンインフラ技術による都市基盤整備や賑わいの創出などを手がける東邦レオ株式会社さんよりご提案をいただいたことがきっかけです。工事で出た廃棄される土を採取して土質検査を行い、苗植えを経て、地域の事業者や学校にご協力頂き各所でホップを育てていただきました。最終的には約2.8キロ、瓶ビール600本分のホップを収穫して醸造。高輪産純度100%のホップでできたビール「TAKANAWA HOP WAY」が誕生しました。当日のイベントでは、栽培に関わっていただいたみなさまや地域のみなさまにお集まりいただき、「TAKANAWA HOP WAY」ビール試飲会も実施しました。

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駅での投票を経て決定した「TAKANAWA HOP WAY」のエチケット

プロジェクト第Ⅰ期はこれまでお付き合いのある高輪エリアのみなさまにお声がけしスタートしましたが、来年度以降の第2期は港南エリアのみなさまにもお声がけをしたいと考えています。また、わたしたちからのお誘いだけでなく、「自分もホップをつくってみたい!」という地域のみなさまの声も大切にしながら、東西を繋ぎ、地域の文化を育んでいきたいです。

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樋口健太郎
東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 新事業創造部門 品川くらしづくりユニット(事業計画)
地域の魅力発信イベント企画や運営、近隣学校との連携などを担当。

JR東日本は高輪エリアでは新参者になりますから、わたしたちがしっかりと地域に歩み寄って関係性をつくらないといけない。そんな思いからホップづくりの仲間を集めはじめました。

ホップ栽培の拠点であったTYビルは、近隣の方にもなかなか知られていないのがほとんどです。イベントだけでなく、こうした継続的な取り組みを通じて、例えば地域の季節の行事にTYビルを使ってもらえるような、地域住民の方々が気軽に足を運べる憩いの場にしていきたいです。逆に我々も地域のみなさま主催の行事に積極的に参加していきたいです。

今回つくったビールも、高輪の名産として街の飲食店でも販売できるようするのが理想です。さらに、ホップづくりも地域に根付いた生活者のみなさまとより連携しながら、使用する土や水、栽培・醸造・販売、そして瓶などの再利用まで、高輪で完結し循環するような仕組みをつくっていけたらと思います。

高輪ゲートウェイ駅マルシェ

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「高輪ゲートウェイ駅マルシェ」では、全国各地、そして高輪エリアの素晴らしい食を届ける方々の「やってみよう」が叶えられる場となるよう、食に関する様々な事業者のみなさまにご協力をいただきながら、高輪ゲートウェイ駅にて継続的に開催しています。

今回は、仙台農業園芸センター・JRフルーツパーク仙台あらはまにて栽培した、生産量が非常に少なく幻のりんごと言われる「ぐんま名月」、「奥州ロマン」 をセット販売しました。

また、地域住民に親しまれる高級食パンの名店「帝塚山 ぱん士郎」と連携し、高輪ゲートウェイ駅オリジナル焼印入りの本食パンも販売しました。

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どちらも市場流通が大変少ない品種であるとともに、高い糖度が特徴の完熟リンゴを、もぎたての状態で高輪ゲートウェイ駅まで新幹線を使って輸送

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イベント限定焼印入りの食パンは、予約販売・当日販売ともに完売

今回のマルシェでは、「地域へ発信する」「地域から発信する」という2つのコンセプトがあります。具体的には今回のりんごのように、全国各地の豊かな食を高輪エリアにお住いのみなさまへお届けすること。また40年以上パン作りを続ける老舗の味を高輪エリアに来た域外の方へ販売を通じて知っていただくことです。これまでも全国各地の豊かな食を駅で販売してきましたが、食を通じて地域の魅力も伝えられたのではと思っています。

地域の方々とコミュニケーションをとるなかで、高輪エリアは周辺にスーパーが少ないことから、少し離れた目黒・恵比寿・品川エリアでお買い物をする機会が多いということがわかりました。「ぱん士郎」が渋谷区・広尾に位置するにも関わらず高輪地域で愛されているのは、そうした生活圏と良い商品を買いたいというお客さまのニーズが背景にあるのではないかと感じています。そのため、「どこまでがあたらしい街か」を考え、単に物理的なエリアで区切るのではなく、地域に存在する暮らしのありかたや生活者の「こうあってほしい」からアプローチしていく。今回はそうした意図で、広尾のパン屋さんに出店いただきました。

今後も、全国・地域の生産者や飲食に携わる方々、また地域にお住まいのみなさまの声に耳を傾けながら、少しずつ輪を広げていきたいと考えています。

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山縣佑亮
東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 新事業創造部門 品川くらしづくりユニット(事業計画)
まちびらきを念頭に置いた新サービスの創造、地域での交流・イベント企画、モビリティを担当。

今後は、歴史のある白金高輪エリア、比較的新しいマンションやお住まいの方々が増えている港南エリアと、日本全国を「食」というキーワードでどのようにつないでいくかが課題であると思っています。

わたしは百貨店の食品バイヤーとして日本全国の様々な食材や食文化に触れてきた経験と当社の最大の武器である地域とのネットワークや列車荷物輸送のノウハウを活用しながら「地域へ発信し、地域から発信する」取り組みを通じて、あたらしい街をご利用されるお客さまの幸福を実現していきたいと思います。

未来と今の街を知る Partner Base高輪ツアー/高輪ゲートウェイ駅周辺のまちなみ風景

地域のみなさまの「やってみよう」が集まる場所にするためには、あたらしい街のことをより知っていただく必要があると考えました。

「未来と今の街を知る Partner Base高輪ツアー(以下、Partner Base高輪ツアー)」では、未来の街の模型・映像の鑑賞、ロボット操作体験、周辺の街の魅力を知る名所紹介などを組み合わせたツアーを実施。実施場所の「Partner Base Takanawa Gateway Station(以下、Partner Base)」は、これまでパートナー企業向けに限定していた駅構内の非公開エリアで、今回初の一般公開となりました。

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LUUPの試乗会 ※ツアー参加者に限定された私有地内での走行のため、ナンバーやミラーなどを取り付けておりません。

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スマート・ロボット「temi」

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協働運搬ロボット「THOUZER」

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複合型サービスロボット(自律移動型)

まず参加者のみなさまには、駅で実証実験中の電動キックボードシェアサービス「LUUP(ループ)」や自律移動・遠隔操作が可能でAIアシスタント機能を持つ、スマート・ロボット「temi(テミ)」、協働運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」などを実際に体験していただき、その後、あたらしい街の概要やコンセプト、JR東日本のまちづくりにかける思いをお伝えすることを目的とした「Gate01」で、未来の街を模型と映像で観賞いただきました。最後に、港区観光ボランティアの会のみなさまのご協力のもと、高輪地区を巡るまちあるきのルートを歴史や文化、裏話を交えながらご紹介し、現在の街について知っていただきました。

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約20にも及ぶ地域のまちあるきコースを持っている観光ボランティアガイドのみなさま。今回、紹介した非接触型モバイルスタンプラリーを活用したまちあるきコースも監修している

「Gate01」やロボット体験で未来の街を想像しながら、歴史・文化を再発見してもらうことでエリアの現在・過去も知っていただきたい。そんな思いからこの企画を実施しましたが、事前予約制ながらも定員に達し、盛況に終わりました。今後も地域の過去と未来を繋ぐ取り組みを地域の方と行っていきたいと考えています。

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「高輪ゲートウェイ駅周辺のまちなみ風景」では、高輪エリアの名所イラストを駅前の仮囲いに掲載しました。いまはまだ殺風景な開発用地や無機質な仮囲いの前を通る際に、少しでも地域の風景に思いを馳せていただきたいと考えたことが出発点になっています。港区芝浦に事業所を構え、地元地域の風景をスケッチしたイラストを活用したまちおこしの活動を行っている田町・白金マーチング委員会(リコージャパン株式会社)さんのお力添えにより、イラストを提供いただいています。

こういった活動は「マーチング委員会」として全国で展開され、まちなみイラストを使った印刷物を作ったり、地元の印刷屋さんに印刷物を発注するなど、地域の活性化を目的とした活動を行っているそうです。エリア全体を盛り上げたいという思いが合致して、今回の掲出に至りました。

また、今回掲載された場所以外の「好きな風景」を駅のポスター投票とSNSで募集したので、今後新規イラストとして描き起こす予定となっています。

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渥美 佑子
東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 新事業創造部門 品川くらしづくりユニット(事業計画)
TokyoYard PROJECTで、街のブランディング・プロモーション業務を担当。

昨年の「5 Days CITY」では、映像コンテンツや実験を通して目指す街の雰囲気を、地域のみなさまに体感いただきましたが、今回はより臨場感のある空間で街の未来・現在・過去を知っていただくきっかけをつくるべく「Partner Base高輪ツアー」「高輪ゲートウェイ駅周辺のまちなみ風景」を実施しました。

港区は都会的で少し無機質なイメージを持たれがちですが、豊かな歴史的背景をもち、昔ながらのお店や文化が残る場所でもあります。「Partner Base高輪ツアー」では、地元の人も知らないルートや歴史を紹介することで、地域の新たな発見をしていただくひとつの機会にできたのではないかと思います。

同時に、わたしたちが知らない情報を地元の方から教えていただいたり、参加者のなかには、ボランティアの方も驚くほどに地域の歴史に詳しいお子さまがいたりと、わたしたちにとっても新たな発見の場となりました。地域の文化をこうした未来を担う世代へ紡いでいけるよう、こういった接点の場を継続的に設けていけたらと考えています。

枯れない花瓶とサステナブルツリー

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過去に行われた「枯れない花瓶とサステナブルツリー」「高輪ゲートウェイ駅マルシェ」「Station Piano」も、地域のみなさまにより身近なものとして参加いただけるよう実施しました。

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「枯れない花瓶とサステナブルツリー」では、近隣の小学校の生徒たちの協力を得て配布する花瓶を収集していただきました。また、「未来の街でしたいこと。こんな街になったらいいなと思うこと」を書き出してもらい駅の特設ボードに掲出。ツリーには地元の幼稚園の園児たちが書いた思い思いの絵やメッセージを飾り付けました。イベント当日には自分が書いたカードを探しに園児たちが駅を訪れてくれたりと、高輪ゲートウェイ駅を身近に感じてもらうきっかけにしてもらえたのではないかと思います。同時に、これらの思いが本当に叶う街にしていかなければならない。そう再認識させてくれる、わたしたちにとっても貴重な機会となりました。

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及川茉莉
東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 新事業創造部門 品川くらしづくりユニット(次世代まちづくり創造)
TokyoYard PROJECTで、街のブランディング・プロモーション業務を担当。

イベントやコミュニティ活動の中で築いた小中学校との繋がりと、幼稚園のみなさんとの新たな繋がりを生かして、高輪ゲートウェイ駅の取り組みに参加していただけるひとの輪が少しずつ大きくなっていると感じます。

一方で、長期間に渡って進行する当プロジェクトは、担当者が人事異動で代わってしまうことも多いのが実情です。地域との結びつきを大切にするというミッションを掲げているからには、会社的な都合でせっかく深めた地域との繋がりが断たれてしまうという問題が起きないよう、たとえ担当者が代わってしまっても新たな担当者がその想いを継ぎ、同じ熱量で地域と関わっていけるような工夫が必要だと感じています。

そうすることで、様々なひとが常に繋がり合う、持続可能な地域との関係性をつくっていきたいです。その結果として、「サステナブルツリー」のような取り組みが地域のシンボルになる未来が訪れてほしいと思います。

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前回展示のみとなっていた「Station Piano」は、演奏できるように開放(10:00~17:00)

地域の「やってみたい」を叶えられる場に

イベントだけでなく、年間を通して行っているホップの活動や、町内会や商工会議所のみなさまとの交流、高輪ゲートウェイ駅マルシェ以外での食材の新幹線輸送、築堤見学・課外授業などをはじめとした幼稚園〜大学との学校連携など、地道ではありますが、継続的に地域とコミュニケーションをとることで、地域のみなさまとの接点が少しづつ増えてきたと感じます。

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そうした繋がりを積み重ねながら、この「Takanawa Gateway Fest」が、わたしたちのやっていることを発表するだけの場ではなく、地域の皆さんの「やってみよう」が叶えられる場になっていき、ひいては駅にとどまらない街全体の恒例行事になってほしいと考えています。

大きな施設をつくり、テナントを入れて「はい、おしまい」ではなく、街と地域に無数の接点があり、駅とエリアが一体となって持続していくこと。それがJR東日本が高輪エリアで目指す「やってみようが、かなう街」です。今回、「Takanawa Gateway Fest」のハンドアウトには、協力していただいた方々の一覧を掲載しました。そこに地元企業や住民の方の名前が増えていくことが、あたらしい街のありかたに近づいている何よりの証になると思うのです。

取材・構成:和田拓也
撮影:山口雄太郎
ディレクション:黒鳥社

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