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「まずJR東日本がチャレンジする必要がある」 担当者たちに聞く、あたらしい街の“Playable”な実験

高輪ゲートウェイ駅が3月14日に開業1周年を迎えることを記念して、3月8日から14日にかけて「Playable Week」が開催されました。

「循環」をコンセプトにした取り組み「枯れない花瓶」とコラボレーションしたサステナブルツリーの展示とリサイクル花器を使用した花のプレゼントをはじめ、高輪周辺エリアをゲーム感覚で歩く「TRY! Mapping!」、写真家のレスリー・キーさんによる、セクシュアル・マイノリティにスポットライトを当てたポートレートの展示「OUT IN JAPAN」、毎月楽しみしているとの声も多い「高輪ゲートウェイ駅ポケマルシェ」、実証実験の各種ロボットのデモンストレーション、2020年夏にイベント「5 Days CITY」でデコレーションした「Station Piano」の展示と演奏会(オンライン配信)など、非対面・非接触のコンテンツを中心とした本イベントに、多くの方々にご参加いただきました。

このnoteでは、JR東日本が「高輪ゲートウェイ駅」周辺で行う「品川開発プロジェクト」の一環である、「TokyoYard PROJECT」の取り組みを発信しています。今回は、「Playable Week」の様子を、JR東日本 品川開発プロジェクトメンバーの山﨑謙次がお伝えします。

山﨑謙次(JR):JR東日本事業創造本部品川まちづくり部門に所属。2019年から品川開発プロジェクトに従事し、地域連携施策、2030年以降の将来計画などを担当(2021年3月時点)。

あたらしい街が掲げる「Playable」とは?

高輪ゲートウェイ駅周辺一帯の品川開発プロジェクトがあたらしい街のあるべき姿として掲げる「やってみようが、かなう街」を目指すにあたり、イベント名にもある「Playable」は重要なキーワードのひとつです。
>>https://note.com/tokyoyard/n/n7459f6c480cf

「実行する」「参加する」「試す」「演じる」「演奏する」「遊ぶ」「実験する」などの意味を持つ“Play”に”able”が合わさった言葉で、街に関わる多くのみなさまが“Play”することを可能にするという意味が込められています。今回のイベントは、JR東日本が多様なパートナーのみなさまとどのような実験をしているか、それがどのように街につながるとイメージしているかを、進捗報告もかねて表現をしたいという想いから「Playable Week」開催に至りました。

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また駅前の開発工事が進むなかでも、地域やお客さまとコミュニケーションをとりながら街の未来を考えるために、高輪ゲートウェイ駅構内を開催場所の中心としました。わたしたちが描く「エキマチ一体」の開発において、駅は街の一部であり玄関口です。その場所で、あたらしい街の価値観をみなさんに知ってもらえるきっかけをつくれたらと考えました。

今回のイベントは、品川開発プロジェクトの地域連携チームが取り組んでいる活動を中心にピックアップし、「Playable(プレイアブル)」「Sustainable(サステナブル)」「Diversity(ダイバーシティ)」など、あたらしい街の価値軸に沿ったコンテンツの表現方法をパートナーのみなさまと探りました。

TRY! Mapping!

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ここからは、「Playable」「Sustainable」「Diversity」に沿ったイベント内容をそれぞれピックアップし、担当者や関係者の声とともにご紹介していきます。

まず「TRY! Mapping!(まちあるき)」では、メンバーや観光ボランティアのみなさまとセレクトした高輪ゲートウェイ駅周辺のスポットを、ゲーム感覚で参加者に巡っていただきました。

高輪ゲートウェイ駅が「グローバルゲートウェイ」を目指すため、まずはこの街を訪れた方々に地域の魅力を知ってもらうことが目的です。

地図をもとにチェックポイントの得点を集める「フォトロゲイニング」の普及活動を行う日本フォトロゲイニング協会さん、以前から継続して活用しているまちあるきアプリ「YORIP」を開発していただいたDNPさん、港区の観光ボランティアのみなさま、「みんなでつくるバリアフリーマップ」のアプリ開発やイベント活動に取り組んでいるWheeLogさんなど、様々なパートナーにご協力いただき、当日は悪天候にも関わらず、地域の方々を中心にご参加いただきました。

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ある参加者の方からは、「同じ港区でも北部の高輪地区と南部の芝浦港南地区でこんなに違うのかと、自分が住む街を改めて知る良いきっかけになった」といった声をいただくことができました。これはメンバーがまちあるきを行うなかで感じたことでもあり、それぞれの街の顔を知ったり、訪れるきっかけをつくれたことを嬉しく思います。

「 TRY! Mapping!/まちあるき」担当者の声

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樋口健太郎(JR東日本 事業創造本部 品川まちづくり部門)

品川開発プロジェクトの柱には、「地元の方々との繋がり」があります。コロナ禍で、社会全体としてもJR東日本としてもできることが限られていますが、この1年でのイベントなどを通して、少しずつではありますが、地域の方々と接点を増やすことができたと思います。

ただ、イベントだけでは増やした接点を深めることはできません。個人的には、商店街の集まりや地元のお祭りなどに顔を出して会話をしていきたいです。イベントによって下地をつくれたと思いますから、それで終わらないために、「この前のイベントではお世話になりました」からのお付き合いを築いていく段階に入っていると思います。お互いに頼り、頼られる存在になれるように、ここからもっと街のことを知り、地域の様々な方に直接お声がけしてコミュニケーションをとらせていただきたいと考えています。

枯れない花瓶とサステナブルツリー

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改札内のイベントスペース(短冊形のサイネージ前のスペース)では、「枯れない花瓶」の配布とサステナブルツリーの展示を行いました。「枯れない花瓶」とは、四ツ谷を中心に展開するフラワーショップ・デフラックスさんが約10年にわたって続けている花のサブスクリプションサービスです。3ヶ月に1度小さな花瓶を購入し、それを持参することで、入荷途中などで、茎や枝が折れ、短くなってしまった行き場のない花などを毎日無料で提供してもらえるサービスです。花瓶に花が絶えないことがその名前の由来となっています。生産者が育てたものを無駄にせず、花で地域に豊かさをもたらす取り組みがあたらしい街の考え方と合致し、ともに活動を行っています。

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今回は、JR東日本社員が持ち寄った空き缶や空き瓶を花瓶として活用し、洗浄・消毒後、デフラックスさんに用意していただいた花とともに、JR社員や高輪ゲートウェイ駅・駅長から配布しました。たまたま通りかかった方や家族連れの方、長年建築の設計に携わり当駅を注視していだいていた年配の方、電車好きのお孫さんに渡すために来た方など多くの方に立ち寄っていただき、準備した花は、約10分でなくなってしまいました。

また、同じくデフラックスさんに制作いただいた、捨てられるはずだった枝や花を再利用したサステナブルツリーにも多くの方々に立ち止まっていただき、花や緑で彩られた、駅構内の珍しい姿をお見せすることができました。

「枯れない花瓶とサステナブルツリー」担当者の声

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及川茉莉(JR東日本 事業創造本部 品川まちづくり部門)

「わたしたちの事業は、安全を第一に考えなければいけません。ですから、近くに線路が通る駅構内に大きな植物や木を設置する場合、常にひとが見ていないといけないため常設はかなりハードルが高いという側面があります。

もちろん駅の安全性を確保しながらですが、Playableな精神を体現する駅として、そして街の玄関口としてみなさまを迎えるため、そういったなかでも、今後も七夕やクリスマスなど、季節の装飾をして定期的に展示していきたいと考えています。「Playable」と「安全」は必ずしも相反することではないと思うので、こういった展示もさまざま試しながら、みなさまに豊かさを感じていただくための方法を探っていけたらと思っています」

高輪ゲートウェイ駅 駅長の声

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中村多香

「これまで、駅は鉄道に乗るために利用するという役割が大きかった場所ですが、訪れた方が楽しむことができる、新しいものを味わえるような駅をつくっていきたいです。コロナ禍ということで見送ったものも沢山ありますが、もっと多くの実験をやって、色々なことが始まる場所にしていきたいと考えています」

パートナーの声

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株式会社デフラックス 代表取締役・西田太郎

「たとえば、みどりの窓口の一角に、「みどりの図書館」ができれば面白いと思うんです。駅で家に飾る観葉植物をレンタルでき、枯れそうになりそうになったら返してまた養生、万が一枯れたら腐葉土にして循環させるような取り組みです。そんなふうに緑をもって駅に集まることで、コミュニティが生まれたら素晴らしいだろうなと感じますし、今回の企画が緑と駅が起点のコミュニティづくりの第一歩になったらと思います」

Station Piano

同じくイベントスペースで、Station Pianoがお披露目されました。2020年9月に開催された「5 Days CITY」で参加者から集めたメッセージ付きの手形ステッカーと、事前に集めたハンドスタンプで、花火を描いた世界に一つだけのピアノです。

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高輪に事業所を構えるヤマハミュージックジャパンさんが取り組むプロジェクト「Love Piano」を、JR各駅・駅ビルでの企画展示した際に協力させていただいたことをきっかけに、音楽を通じて地元企業や地元住民がコミュニケーションを取り、つながることができるツールのひとつになってほしいという想いから実現しました。

常設して様々な方に自由に弾いていただきたいところですが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、現在は一般開放せずに展示のみになっています(2021年4月時点)。

「Station Piano」担当者の声

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榎本貴浩(左) 一瀬美那(右)

榎本貴浩(JR東日本 事業創造本部 品川まちづくり部門・2021年3月時点)
「高輪ゲートウェイ駅とあたらしい街では様々な先進技術を実験的に活用していく場として、100年先の心豊かなくらしづくりを目指しておりますが、それだけではなく、音楽が持つ豊かさのように、人にとってずっと変わらないものも大切にしながら、まちづくりを進めていきたいと思っています」

一瀬美那(JR東日本 事業創造本部 品川まちづくり部門・2021年3月時点)
「『いつ弾けるようになるのか』という問い合わせもJRに寄せられているということもあり、楽器や音楽のパワーを実感しています。こういう状況とはいえ、やはり自由に弾いてもらいたいというのが正直なところですね。今後は節目節目でできるだけStation Pianoを活用し、皆さんに親しんでいただける『豊かさのシンボル』であり、コミュニケーションツールのひとつになったらと思います」

OUT IN JAPAN

わたしが企画を担当した「OUT IN JAPAN(写真展)」では、5年間で1万人のLGBTポートレート撮影を目指すプロジェクト「OUT IN JAPAN」で、世界的写真家のレスリー・キーさんが撮影したLGBTQを中心とした方々の写真を40枚セレクトいただき、フォトパネルを設置しました。

「OUT IN JAPAN」制作チームの代表であり、東京オリンピック・パラリンピック開催を契機にセクシュアル・マイノリティに関する情報発信を行う「プライドハウス東京」コンソーシアム代表でもあるLGBTQアクティビスト・松中権さんらと会話をしながら、企画を実現しました。

「グローバルゲートウェイ」を標榜し、誰もが活躍できる街を目指すうえで、ダイバーシティは欠かせないテーマです。この企画には、LGBTQを含めた様々なマイノリティの方々にとっても暮らしやすい街をつくることを表明する意味を込めています。

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わたし自身は、いままでセクシュアル・マイノリティであることを公言する知人・友人は周りにおらず、企画を検討するにあたってさまざまな方々とお話ししたり、社内でLGBTQの勉強会を定期的に行うなかで、セクシャリティにまつわる様々なことを学びました。

公共の空間内で掲出される広告物の表現ひとつをとっても、広告が打ち出す「家族」のイメージに自分たちが含まれていないと感じること、テレビで偶然「こういうひとがいるんだ」と知らなければ、性自認をする機会は一生なかったかもしれないということ。

こうしたことを知り、家族のかたちや自身のアイデンティティについて、「こういう在り方もあるんだ」と背中を押せるような表現を、駅のような公共性の高い場所だからこそ積極的に発信していく必要があると強く感じるようになりました。

もちろん、トイレなどのハード面が抱える課題も品川開発プロジェクト全体で真剣に考えつつ、ソフトの面でもどんな方でも過ごしやすいエキ・マチをかたちづくっていきたいと考えています。

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山﨑謙次(JR東日本 事業創造本部 品川まちづくり部門・2021年3月時点)

高輪ゲートウェイ駅ポケマルシェ&ロボットデモ

また、これまでも定期的に行っている「高輪ゲートウェイ駅ポケマルシェ(以下、ポケマルシェ)」や「高輪ゲートウェイ駅ロボットデモ(以下、ロボットデモ)」も開催されました。

ポケマルシェは、全国の農家・漁師から旬の食材を直接購入できるアプリ「ポケットマルシェ」と連携した次世代型のマルシェです。商品を予約販売し、採れたての食材をJR東日本の大きなリソースである鉄道ネットワーク・新幹線を活用して東京まで輸送、高輪ゲートウェイ駅で受け取ることができます。
>>https://note.com/tokyoyard/n/n24f8698c3c7a

あたらしい街での豊かな食環境づくりを目指して月1回程度実施しており、4回目の開催となる今回は、宮城県産の生産物を中心にお届けしました。今回は新たな試みとして、3月に開業したばかりの観光型農園「JRフルーツパーク仙台あらはま」からいちごを、西武ホールディングスとの連携により、西武鉄道が主催する「SEIBU Green Marchē」から茶葉もラインナップに加わりました。

「毎月楽しみしている」との声も地域の方から多くいただいており、継続して取り組んでいきたいと考えています。

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また、バックヤードを中心に実証実験を行うロボットの公開デモンストレーションも改札付近で実施しました。

たとえば、ちょっとした段差でも乗り越えられなかったり、ガラスの壁は追突してしまうことがあったりと、あたらしい街でのロボット導入には様々な課題があります。普段は、これらの課題を一緒に考えていくために、まちづくりパートナーの方々を中心にロボットを使っていただいているんです。

今回のロボットデモでは、アバターロボット、軽食・飲料配送ロボット、荷物配送ロボット、協同運搬ロボット、清掃ロボットなど、普段は見られない多様なロボットも多く稼働しました。

ロボットが自由に動き回る駅で、「あたらしい街」らしさのひとつを実感いただけたのではと感じています。

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あたらしい街は、どこまでがあたらしい街?

駅構内をつかったイベントは、JR東日本のアセットとはいえ制約も多く、様々なハードルが存在します。しかし、お客様の安全を最優先に考えると同時に、「やってみようが、かなう街」をコンセプトに掲げているわたしたちが、まず継続的にチャレンジをしていかなければなりません。

「あたらしい街は、どこまでがあたらしい街なのか?」という議論が、メンバーのなかでもよくあがります。開発用地にできる街だけがあたらしい街なのか、それとも街ができることで多くの影響をうける周辺エリアもあたらしい街なのか。

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わたしたちの考えは後者です。周辺の地域とゆるやかに繋がり、関係性を積み重ね、100年先を見据えた心豊かな街をともに模索していく。そのために、今回お伝えしたような、メッセージを込めた取り組みを行いながら、オープンで丁寧なコミュニケーションを続けていくことが重要です。

街は開業してからがはじまりですから、その長いスパンのなかで輪が広がり、プレイヤーが増え、例えば今回紹介したような活動が街のどこかで行われて、周辺地域に還元される。そんな未来を信じて、実験を続けていこうと思うのです。

インタビュー・構成:和田拓也
撮影:山口雄太郎
ディレクション:黒鳥社

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