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『kyodo 20_30』ディレクターメッセージ

アートプロジェクト『東京で(国)境をこえる』について

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『東京で(国)境をこえる』は、東京に存在する「見えない(国)境、壁」の考察を通して、異なる文化背景を持つ人々が日常的に出会う場を生み出す拠点(コミュニティ)の形成を目指すアートプロジェクトです。

時代、時間、場所や社会背景によって揺らぎ続け、刷新され続ける、本来確固とした実体のない“アイデンティティ”のその揺らぎが許される場所。それが私たちの考える「コミュニティ」です。

私たちは、昨年2019年10月からこのプロジェクトの中核を担うメンバーの募集、チームビルディング及びプログラムの開発を続けてきました。そしていよいよ、『東京で(国)境をこえる』プログラムの第一弾として『kyodo 20_30』をキックオフする運びとなりました。

プログラム第一弾『kyodo 20_30』実施に向けて

日本は、コミュニケーションの文脈(依存性)が高い言語、文化の国だといわれています。

それは、同質性の高い市民、即ち言語的、文化的あるいは宗教的なコンテクストを含む様々な文脈を共有している市民同士にとっては有利に働くことがある一方で、多文化、多民族、多言語を背景に持つ人々が暮らす社会ではマイナスに働くことが多いです。

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日本、および東京には、既に多くの海外にルーツを持つ人、留学生や、仕事のために来日してこの地で生活している外国人たちがいます。そして今、このコロナ禍の状況下も相まって、現在暮らしている外国ルーツの方々との分断が促進されていくことが危惧されます。以前以上に「境界線」が問題になってくるタイミングかと思います。

そもそも、日本人同士でも、お互い文脈を共有していることが前提となっていることが多すぎるあまり、お互いの“違い”が覆い隠されている部分があるのではないか。

そのような社会で、どのような新しい共棲の仕方を探していくことが出来るのか。それがプログラム第一弾『kyodo 20_30』のテーマです。

『kyodo 20_30』とは?

『kyodo 20_30』は、自分とは異なるアイデンティティを持つ相手と関わることに興味のある人、これからの東京のあり方に関心がある人たちで集まり、これからの共棲について考えていくことを目指しています。

皆さんご存じのとおり、今般のコロナ禍によって、このプロジェクトはもちろん他の様々なアートプロジェクトや、私の専門とする舞台芸術においても必須となっていた、人々が同じ時間、同じ場所に集うことを非常に困難なものとしました。しかしそれは、実際に「集う」ということが人の「生」において如何に貴重なものなのかを改めて思い出させる機会ともなりました。
2020年8月現在、私たちはまだ、具体的に集まって何かを共に作ったり対話したりすることが難しい状況に置かれています。

しかし、従来の形で集まることは出来なくとも、集まり方やつながり方をデザインし直すことはできる。

私たちは、様々な国から集まった異なるアイデンティティを持つ人たちが、共に何かを作り上げようとするとき、そこでは結果的に、国籍や文化的背景の違いを大切にし、最大限お互いの背負った様々な背景、文脈に敬意を払いつつも、決してそれだけにとらわれない、「個」と「個」のコミュニケーションが生まれると考えます。

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そうした「個」の集合体として、ゆるやかで柔軟なつながりを育てることを意図して、活動を展開します。そしてその中で得られる経験と知見は、これからの共棲を考えるために必要な気づきと自由をもたらすものだと信じています。

これらの考えをもとに行う『kyodo 20_30』では、多国籍、多言語、多文化を背景とした20歳~30歳の、10年後の2030年に社会を担う若い人たちを募集。『東京で(国)境をこえる』のテーマである「見えない(国)境、壁」を意識しながら、世田谷区経堂を拠点に、クリエイションやワークショップ、レクチャーなどのプログラムを、様々なメディアを用いて行います。そして活動を通して協働し、共同体についての議論や理解を深めていくことを目的としています。

経堂という街について

経堂という街は、『東京で(国)境をこえる』のディレクターの私がもう20年近く住んでいる街です。大学時代を過ごした札幌、高校生までを過ごした生まれ故郷の名古屋よりも既に長く住んでいる街です。

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住む、は、棲むという字を当てることもありますが、演劇人の私としては、人は空間に住むというより、空間にその身体が棲まわれる、そのような感覚が、強くあります。身体の細部にまで、内側に、住んでいる街の空気が、気配が、空間が棲み込んでいる。

そんなふうに街に棲み込まれて、それが不思議と心地が良い。それが経堂という街の魅力です。東京の世田谷という大都市圏の一部でありながら、どこか昔ながらの商店街があり、個人や家族で経営する飲食店や商店も多い。棲む場所であり、働く場所であり、生活する場所としての街、経堂に、新しいコミュニティの拠点を作りたいと思い、私はこの街を選びました。

今回の募集では、実際にプログラムに参加する20歳から30歳までのプレイヤーと、同時に年齢制限のないサポーターも募集しています。何かご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

皆様のご応募を心よりお待ちしております。

『東京で(国)境をこえる』ディレクター、矢野靖人

『東京で(国)境をこえる』公式Facebookページ

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