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小説投稿サイトのコンテストに投稿した作品のテーマを間違って執筆していた!?と思いきや、まさかの大どんでん返しが。『デタラメだもの』

まさか、こんなことが起こりうるのか? 唖然呆然としてしまう事態ってものは、数年に一度くらいは起こるような気がする。そして、それが起こってしまった。エブリスタという小説投稿サイトのコンテストに投稿する作品のテーマが『あと5分』だったにも関わらず、『あと5日』と勘違いして、壮大なるミスをやってのけたわけである。

なんのルーティーンかはわからないが、エブリスタのコンテストの結果発表は、後輩と安い居酒屋でお酒を嗜み、その途中、トイレに行っているときに行われることが多い。今回も例に漏れず、同様の場面で結果を目にした。

はははん。今回もおもしろそうな作品が賞を獲ってらっしゃるな。大賞から順にスマートフォンをスクロールしていき、自身の作品が賞を獲ってやしないか、または馴染みの作家さんが賞を獲ってやしないか、などを思案しながらページを下へ下へと送っていく。

「あらまぁ。今回も賞を獲れてなかったじゃないの。愉快な作品を書いたつもりなのになぁ」
トイレから席に戻り、ブツブツ言いながらビールをクイッと飲む。もしかして自身の作品が賞を獲っているのを見落としているのではないか? と、未練たらしい思考が支配し、次はページの下部から上部に向かって、再度、賞を獲った作品のラインアップを眺めて行く。やっぱり、ない。世の中、そんなに甘くない。

と、そこで事件は起きた。自身が執筆した愉快な作品の内容を思い浮かべつつ、ページの最上部へと辿り着く。そうよね、今回のテーマは『あと5分』だったもんねぇ。そうそう。『あと5分』――ん? あと5分?

奇怪なズレを感じた。時空の歪みに似たものと言っても過言ではない。そうだ。自身の作品を思い浮かべる脳内には、『あと5日』という日付ベースで構成を組んだ作品が「今回のコンテストも残念だったね!」と微笑んでいる。しかしだ、目の前には『あと5分』という分ベースを課したテーマがそびえ立っている。そう。『あと5日』をコンセプトとして執筆してしまっていたのだ。一気に吐き気を催したのは言うまでもない。

まずは、こう思うよね。もしこの世にタイムマシンがあったなら、時を遡り、今回の作品を執筆したあの頃に戻って、「今回のテーマは『あと5分』だよ」と自身の耳元で囁いてあげたい。いや待てよ、これほどまでに進化のスピードが速い昨今。意外と既にタイムマシンって、開発されてるんじゃねえの?

藁をも縋る思いでスマートフォンのインターネットブラウザを起動し、『タイムマシン 格安』で調べてみた。高価であれば諦めざるを得ないので、念のため、格安というキーワードも添えて検索するあたり、抜かりない性格だと自負している。(そもそも、抜かりない性格なら、正式なテーマで執筆できてるよね。あははん)

しかし、画面に表示されたのは、喉から手が出るほど渇望しているタイムマシンではなく、『松任谷由実/TIME MACHINE TOUR Traveling through 45 years』という、ユーミンが全国40万人を動員した、自身初のコンサートツアーのベスト版『タイムマシーンツアー』を映像化したDVDを販売している通販サイトだった。

なるほど。タイムマシンはまだ開発はされていないが、先にユーミンがタイムマシーンツアーをやってのけていたんだな。これはこれで感慨深いものがある。思わずビールをクイッとやる。

いかんいかん。感慨深さなんて味わってる場合じゃない。分ベースで書かねばならないコンテストを、日付ベースで書いてしまっている阿呆がここにいるわけだ。なんとかせねばならん。

次に考えついたのは、大御所ぶってみる、という案。具体的には、自分のことを大御所だと思い込み、「まぁ、与えられたテーマは『あと5分』でしたけれども、私が書きたかったのはあくまで『あと5日』でしてですなぁ。やはり作家というものは、大衆に迎合することを拒んでしまう生き物なのですな。書きたいものを書く。たとえそれがコンテストだろうと」なんてスタンスで凛と構えておけばいいじゃない。そう思った。

いや。それならそもそもコンテストになんて出さず、自身のWebサイトか何かでヒッソリと公開していればいいわけで。なにがなんでも書きたいものを書く――なんてプライドを貫くタイプの作家なら、尚のことコンテストへの投稿が似合わない。著しく矛盾している。この手もダメか。

そうだ。単純に、言い訳すればいいだけか。思い返せばあのコンテストの作品を執筆する時期は、想像を絶するほどに多忙だったはずだ。お客様の都合により、例年、お盆休みなんて取れない。世間は夏休みムードでも、こちとら平日ムードで生活していた記憶がある。

あんなにも忙しかったら誰だってテーマくらい勘違いするよね。仕方がないわ。ミスでも偶然でもなく、あれは必然だわ。しょうがないと諦める部類のやつだわ。もう、笑うしかないわ。あかん。言い訳というものは、なんと情けないものか。書いていて虚しくなってきた。やめだやめだ。

そういえば例の作品を執筆した際、プロットまで書いていてボツにした作品があったような気がする。そう思い、今現在、この記事の執筆中、何気なく過去の作品群を見返してみた。すると、鈍器で頭を殴られた。否、殴られたような衝撃が走った。

なんと、『あと5分』のテーマが設けられたコンテストには、『あと5分』をテーマとした「命を救ったはずなのに」という作品を、ちゃんと執筆していたのだ。そしてあろうことか、その数回後に催された『〇〇、はじめました』というテーマのコンテストに、『あと5日』をカウントダウンする類の「サヨナラ・カウントダウン」という作品を投稿していたことが判明。

襲ってきた感情について、順を追って説明したい。まず初めに襲ってきたのが、「正しいテーマで執筆できていたということは、正しくコンテストに落ちていたということか。ぐすん」という悲しみ悔しさの感情。

そして次に襲ってきたのは、近しい時期に開催されたコンテストにも関わらず、似たようなコンセプトの作品を執筆してしまう自身の筆力の無さ、を憐れむ感情。

そして、最後に襲ってきた感情が、最もハートを震撼させた。「え? テーマを間違わずに執筆できていたってことは、この記事、どうなるのん? テーマを間違えて執筆したというところが記事の肝になってるのに。そこが覆っちゃったら、記事が成立しないじゃないの。どうするの? どうするのよ?」という感情。もうこんなにもたっぷりの文字数、書いちゃってるよ。取り返しつかないよ。

ひとまず、記事を全選択し、消去のボタンに触れてみる。しかし、実に惜しい。テーマを間違っていなかったことが判明するまでは、実に愉快なエピソードだと思い、ルンルン気分で執筆していたし。中盤に出てくるユーミンのあたりなどは、実によく書けている。くそう。記事を生かすしかないじゃないか。

なんとか記事の方向性を軌道修正できた。そう思い込もう。テーマを間違えたことについて書いていたが、実はテーマを間違えていたと思い込んでいた自分自身が間違えていた。二重の間違いというコンセプトで記事を仕上げる以外に方法はない。

まあ、当方、ある程度の筆力は持ち合わせているので、あと5分ほどのお時間をいただければ、全くの別コンセプトで記事くらい書けるけどね。三半規管の仕組みについて、の記事とかね。まぁ、それが愉快かどうかは別として。

デタラメだもの。


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