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『古事記ディサイファード』第一巻009【Level 1】超圧縮版漫才風古事記 これだけ読めば暗号が解ける (5)

海幸山幸

「さて、どんどん早送りしてウミサチ(海幸彦(うみさちひこ))とヤマサチ(山幸彦(やまさちひこ))という兄弟の話へ飛ぶで」
「ウミサチヤマサチてなんか聞いたことあるな」
「兄の海幸彦(火照命(ほでりのみこと))は海の漁のエキスパートで、弟の山幸彦(火遠理命(ほおりのみこと))は山の猟のエキスパートや」
「漁師と猟師か」
「ほんで兄弟の力関係の話やからリョーシリキガクや」
「嘘つけ!」
「ヤマサチは〈たまに役割交換してみいへんか?〉とウミサチに提案するが二回も断られvよった」
「転職願望でもあったんかいな」
「三度目でやっとウミサチは渋々合意した」
「ボケツッコミもときどき交換してみたくなるからな。気持ちわからんでもないな」
「猟具と漁具を交換し、ヤマサチは魚釣りへ、ウミサチは山へ猟に出かけたんや」
「慣れない仕事するとろくなことないで」
「両者とも収穫はゼロや」【Level 1】
「言わんこっちゃない」
「その上海へ行ったヤマサチは兄に借りた釣り針を無くしてもうたんや」
「まあ釣り針の一つぐらいしゃあないやろ」
「ところがウミサチは大激怒や。
  なにーっ! 返せよ! 俺の釣り針を返せーっ!」
「なに釣り針ぐらいでそないに怒っとんねん?」
「ヤマサチは十束剣(とつかつるぎ)を砕いて五〇〇個の釣り針を作って弁償しようとしてもウミサチは受けとらへんかった。千個作って返そうとしても受けとらへん。〈あの釣り針でなきゃだめなんや!〉いうて」
「どんな特製の釣り針やったんや?」
「ヤマサチが海辺で泣いていると塩椎神(しおつちのかみ)が現れた」
「スライムみたいに唐突に現れよるな」
「ヤマサチが事情を話すと塩椎神は竹で小舟を作ってヤマサチをそれに乗せた」
「乗せてどないするん?」
「この船を私が押し流しますからそのまま潮の流れに任せとってください」
「いい加減なやっちゃな」
「オートクルーズやねん」
「自動運転か!」
「しばらくいくと魚の鱗のように家を並べて作ったワタツミ(綿津見神(わたつみのかみ))の宮殿がありますよってに」
「ピラミッドみたいなやつかいな?」


「その傍らの泉に桂の木があるのでその上にいれば海神の女がなんとかしてくれると思います」
「親切なんか無責任なんかようわからん」
「言われた通りにすると……」
「……するんかーいっ?!
  信じられん素直さやな」
「塩椎神の言った通りになった」
「なったんかーい!」
「そこでトヨタマヒメ(豊玉姫命(とよたまひめのみこと))が現れましてん」
「今度はなにもんや?」
「まあ、ゴッツイケメンやわ、とヤマサチを宮殿の中へ招き入れ、アシカの皮畳八重(かわだたみやえ)、絹畳八重(きぬだたみやえ)を敷いて座らせ恋におちて結婚してしまいましてん」
「登場したばかりでいきなり電撃結婚かいっ! なんやそのカワダタミヤエ、キヌダタミヤエっちゅうのんはっ!? タタミ十六枚も敷いてどないすんねん? 笑点か!」
「いや、あれは座布団やて。ヤマサッチャン実は相当イケメンやったから」
「いやイケメンとタタミ関係ないやろ!」
「ほんですっかり何しに来たんだか忘れてもうた」
「ぼけとんのかいっ!」
「三年後やっと釣り針のことを想い出しましてん」
「認知症か!」
「ほんでワタツミノカミが魚たちを集めて釣り針がひっかかってる者はおらんかとアンケート取りましてん」
「アンケート!」
「すると赤い鯛が名乗り出てきた。なんか喉に釣り針がひっかかってまんのやけど……」
「三年もほっとくな! 呑気なタイやな」
「ついに見つかったウミサチの釣り針!」
「遅すぎや!」
「ほんでも広い海ん中で見つかったんは奇跡的やろ?」
「そりゃまあそや知らんけど……」
「ワタツミは釣り針と鹽盈珠(しおみつたま)と鹽乾珠(しおひるたま)をヤマサチに渡すとこれでウミサチを溺れさせたり助けてやったりして服従させちゃいなさい、とアドバイスしたんや」
「さすが海神。不思議なアイテム持ってまんがな」
「鹽盈珠は潮を満ちさせ、鹽乾珠は潮をひかせる力を持つ魔法の玉っちゅうわけや」

(つづく)


※ 最初から順を追って読まないと内容が理解できないと思います。途中から入られた方は『古事記デイサイファード』第一巻001からお読みいただくことをお薦めいたします。

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