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王道フレンチのノスタルジー

フランス料理という言葉には、どこか特別な響きを感じます。イタリアンやスペイン料理、中華に和食、いずれもごちそうであることに変わりはありませんが、なぜかフレンチ=豪華な食事というイメージがあるのです。

おそらく、子どもの頃祖父が家族をつれていってくれた、フランス料理のレストランで、フォークとナイフを使う順番を教えてもらったりした記憶も、その要因のひとつかもしれません。おさない自分にとって、ホテルのメインダイニングの個室は、非日常どころか、夢のような世界でした。


🇫🇷今ごろのフレンチ

そんなフレンチも街のビストロなんかでは、わりと気軽に食べられるようになりました。予算もランチなら1000円、夜でもドゥ・プラと呼ばれる前菜、メインの2皿仕立てのコースなら、3000円くらいというのも珍しくはないですよね。

身近になって、親しみやすくなると同時に、軽やかな味付けのフランス料理も一般的になりました。

バターの代わりにオリーブオイルを使い、トマトをふんだんに使った、南仏スタイルのメニューは、あっさりとしてヘルシーという魅力もあって、ひとつのポジションを築いたといってもよいでしょう。その軽さがあってこそ、毎日のように気軽にランチの選択肢にはいるのかもしれません。

🇫🇷王道の魅力

でも、やっぱりフランス料理というと、こういうメニューに魅力を感じたりしませんか。

濃厚な味付けで、食べ応えがあって、合わせるワインも重厚なもの。バターたっぷり、フォンドボーの旨味に、赤ワインをふんだんに使った、濃い味系の王道フレンチです。

そんな牛肉の赤ワイン煮込みが、クラシックフレンチの肉料理の王様なら、魚はこれ。

たっぷりのバターで焼き上げるムニエルという調理法。見た目が茶色くて、一見地味ですが、この質実剛健ともいうべきルックスには、威厳すら感じます。

🇫🇷舌平目発見

今回、そんなムニエルをつくってみたのは、これがきっかけ。

そう、舌平目が売っていたことです。しかも1尾380円。けっこう立派な大きさです。

🥕付け合わせもクラシック

まずは付け合わせの準備からスタート。赤、白、緑の彩りを目指して、まずは赤のにんじんから。

細くなった先に近い部分の皮を剥いたら、縦2つに切り分けて、面取りをします。

沸騰したお湯にいれて、竹串を刺して、すこし抵抗がある適度の固さまで下茹でします。

緑は絹さや。

筋を取ったら、根元の部分を矢の羽根の形に、V字に飾り切りしておきます。

白は今回はヤングコーン。縦に2つに切っておきます。

砂糖、水をお鍋にあわせ、沸騰したらヤングコーンをいれ、すこし経ってから、絹さやと下茹でしたにんじんをプラス。

バターとこしょうを足して、全体にバターをからめながら軽く煮込めば、グラッセのできあがり。これもクラシックな王道の付け合わせです。

盛り付けると赤、白、緑、理想の彩りが揃いました。甘いにんじん、おいしいですよね。

付け合わせのトリコロールカラーに関しては、ちょっとこだわりもあるので、またあらためてそれをテーマに記事を書いてみたいなと思ったりもしてます。

🔥焼きませ、ムニエル

続いて、主役の登場。

舌平目は両面にしっかりと粉をまぶし、余分な粉ははたいておきます。一般的には小麦粉を使うところですが、わがやは天ぷら粉。揚げ物のときに天ぷらがさくっと揚がるのはもちろん、卵なしでフライもののバッター液がつくれたりと便利なので、もっぱら天ぷら粉ビリーバーです。

フライパンにオリーブオイルを敷いて、バターを加えて火にかけます。

バターがぶくぶく泡立ってきたら、火をすこし弱めて、舌平目を投入。

両面をこんがり焼き上げます。表面の粉のおかげで、かりっとした食感に焼き上がるのが、ムニエルのポイント。

どどーんとお皿に。うん、立派ですね。どうだ、これが王道、クラシックフレンチだ。

🥄仕上げのソースは香ばしく

さあ、仕上げにソースをつくります。ムニエルのソースといえば、サーモンなんかだとタルタルソースを添えたりもしますが、ここはやっぱりソースもクラシックな王道でいきましょう。

ブール・ノワゼット、いわゆる焦がしバターです。

舌平目を焼いたあとのフライパンをキッチンペーパーでさっと拭って、バターを20グラムほど入れて加熱します。

フライパンを拭くときは、ごしごしとこすると、溶けだした魚の旨味もこそげ落としてしまうので、あくまで軽くです。

バターが茶色くなって泡立ってきたら、レモン汁を投入。

すこし煮詰めて、刻んだパセリをたっぷりと。

こしょうで味を調えて、このまま舌平目にたっぷりとかけます。

ちなみに有塩バターを使っているので、塩はいれません。こういう料理をするとき、無塩バターを使うと本格的な感じがしますが、ふだん使いのバターで十分。その塩味もそのまま使っちゃいます。

香ばしい香りのソースをまとった舌平目のムニエル、焦がしバターのソースを添えて完成です。

ただちょっと質実剛健すぎて、見た目が無愛想かも。でもそれも、なんだか由緒正しさや、伝統をの魅力の一端なのかもしれません。このルックスを見ていると、現代より時間の流れが緩やかな、古きよき時代に帰ったような、そんな懐かしい気持ちになります。

🍴ムニエルの完成です

でもちょっとは飾りたい。そこでこれ。レモンスライスを載せて、その上に刻みパセリアゲイン。黄色と緑でちょっと華やかになりました。

食べるときはやっぱり、フォークとナイフでいきたいですね。舌平目はわりと身の外しやすい魚なので、ナイフですっすっと切り込みを入れて、フォークを差し込めば、身はぽろっと外れてくれるはず。

🧈バターの魅力

バターの香りって、食欲をそそりますよね。朝おきたときのトーストに塗ったバターの香り、卵で包む前のチキンライスを炒めるときのバターの香り、茹で上がったパスタにからめるバターの香り。どれも、おいしそうと感じる香りです。

軽やかなオリーブオイルの口当たりと香りも大好きですが、やっぱりフランス料理というと、バターの香り漂う、クラシックなこういうひと皿にそそられます。

こんなメニューには、やっぱりワインがほしくなります。それも、辛口で樽の香りのきいた濃厚な白ワイン。ふくよかなワインに、まろやかなバターの香りと、あっさりとした舌平目のほくほくする食感。おもてなしのディナーにもぴったりです。

たまにはこんなフレンチで、ワインを添えたおもてなしもよさそうです。

素敵なおもてなしになりますように。

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