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春の東北湯治⑰【百沢温泉~三本柳温泉】

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 大型連休に入った4月29日。私が宿泊の拠点として選んだのは弘前市にある「百沢ひゃくざわ温泉」。こちらも5年振りの再訪となった。
 
 毎年200万人が訪れるという「弘前さくらまつり」会場からも30分ほどの距離。この時期に一人客を受けてくれる宿自体少なかったという理由もあるが、それ以上に百沢の湯にもう一度入っておきたかった。

 投宿は旅館「山陽」。弘前の観光スポットの筆頭、岩木山神社のすぐ横にある老舗宿だ。施設自体はかなり年季が入っているが、部屋は綺麗でWi-Fiも強く、連休前に終わらせたかった業務をこちらで行った。

 天気が悪かったためか連休初日というのに客は私以外もう一組しかいなかった。岩木神社もパラパラとしか人がいない。これまで回ってきた温泉地と同様、青森の温泉街はどこか寂し気だ。

 
 百沢にある3軒の旅館は兼業をしており、かつて宿泊したこともある「富士見荘」は酒屋、「旅館中野」は食堂、こちら「山陽」は以前はお土産屋と食事処をやっていたようだ。入浴後夜風に当たろうと外を歩くも、向かいの2軒の宿は真っ暗だった。

 百沢には温泉ファンには良く知られた「㈱百沢温泉」という日帰り施設がある。施設名に㈱が付くあたりも珍しく、そしてその掃除機のヘッド部分の様な湯口も非常に有名だ。扇形にドバドバ出る源泉は質量ともに卓抜で、ファンならば一度は見ておきたいところ。

 到着してから数時間毎に現地まで行くが、こちらだけは人気があるのか終日駐車場が混雑していた。人の多いところはどうも苦手、宿に居れば独泉出来るため、掃除機ヘッドは諦めることに。

 百沢の4軒に引湯されるのは全て自家源泉。隣り合う宿だというのに別の湯元を持っているというから驚きだ。宿泊の山陽の湯も鶯色で金気臭あり、のパワフルな源泉を堪能した。

 撮影禁止という情報も聞いていたが、館主に伺うと「そんな事実はない」、「どんどん撮ってください」とのことだった。方針が変わったのだろうか。

 
 到着初日は大女将が受付をしていたが、2日目になると若い男性がお見えになられた。息子さんのようで、里帰りも兼ね繁忙期だけ戻って来るのだろうか。翌日は晴れ予想で、夜になるとさくらまつり帰りの宿泊客が5組ほど訪れた。

 この旅館は合宿所にもなるほどの大きさがあり、カラオケや宴会場も館内に存在する。部屋も30近くあるが、現在はほとんど使っていないようだ。結局3日間の滞在期間中、この宿でも一人とすれ違ったくらいで同浴することはなかった。

 明朗闊達な息子さんとは、一度だけ話をすることが出来た。

男性 「だけ温泉とかは行かれましたか?」
私  「田沢食堂(※旅館併設)に行こうかと」
男性 「三本柳も良いですよ。この辺りではあそこだけ自噴なんです」
私  「以前行ったことがあります。そうだったんですね」

男性 「震災の後、この辺は全て電源が落ちて湯が止まったんです。でも三本柳だけは自噴なんで出続けたんですよ」
   「引っ張っていないので、他よりも温いんです」
私  「そうでしたか。ではちょっと行ってみます」

 
 三本柳温泉までは歩いて15分ほど、天気も良くリハビリついでに歩いて向かった。歩いている内に微かな記憶が蘇り、脱衣所や浴槽の雰囲気も思い出されてきた。  

 だが、意気揚々と門を潜るも東北4県(青森、秋田、岩手、山形)以外は入浴禁止と女将さん。ごねても迷惑をかけるだけなので、ここは大人しく退散。旅館としても折角来た客を断腸の思いで断っているのだ。

 青森の凄いところは、こんな状況においても簡単にカバーリングできる点だ。次善の策とは思えない程の、他県ではエース級の湯が点在している。

 気持ちを切り替え、岩木山麓を西へ向かうことにした。

                                令和4年5月2日

旅館山陽 合宿できるほどの広さ
部屋は清潔 冷蔵庫あり
Wi-Fiも強かった
百沢温泉富士見荘 酒屋を兼業
百沢温泉 旅館中野 食堂を兼業
ドバドバ ㈱百沢温泉にも負けていないと思う
三本柳温泉
撃沈

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