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春の東北湯治⑱【岩木山の温泉 湯段温泉~嶽温泉】

<前回はこちら>

 三本柳温泉を湯逸した私は、すぐに気持ちを切り替え宿に戻った。
リハビリにしては長距離を歩いたために身体に痛みが出てしまい、部屋で休息を取り30分後に再出発。車に乗り向かったのは「湯段温泉」。
 こちら存在は知っていたが前訪の際には立ち寄らず、未湯のままだった。かつては湯治場として長期滞在向けの宿もあったらしい。

 岩木山麓の南側をなぞる様に西へ進むと、手前に見えてくる「岩木山総合公園」や「嶽温泉」はかなりの人出だった。青森に来て初めてまともに人だかりを見た。

 この前日は東北各地の山間部や仙台市でも降雪があるほどの冷え込み。
打って変わって好天となったこの日はかなりの人流があったようだ。
遅咲きの桜並木の奥に望む冠雪の岩木山は筆舌に尽くし難い佳景で、多くの観光客がカメラを構えていた。

 桜並木を抜け湯段温泉郷に着くと、3軒の宿が密集しているポイントがある。2軒は営業している気配がなく、一軒は完全に廃屋状態。「ゆだんの宿」は入口に立ち寄りOKと出ており、こちらにイン。リフォームされていて綺麗な内装だった。


 多くの人出から混雑も覚悟したが、こちらも誰もおらず独泉に成功。
男女別の内湯しかないこの宿、小さい湯船にドバドバと源泉が注がれていた。廃業した宿の湯口を塞いだためなのか、ものすごい量がオーバーフローしている。

 金気臭あり、適温の42度ほど。温泉街としては風前の灯火かもしれないが、かつて湯治場として機能していたのは納得の泉質。数十分前に逸した三本柳温泉の代湯としては十分過ぎるほどだった。

 
 ちょうど昼時になり、この辺りで食事を摂るとすれば嶽温泉街の「山のホテル」食堂か、向かいの田沢食堂。山のホテルの内湯には名物「たたみの湯」があり、浴槽を囲うように洗い場に畳が敷かれている。以前にも訪れているが、絶景内湯を再び目に焼き付けたくフロントへ向かう。

 だがこの日の混雑は凄まじく、食事を待つ人の列が出来ており、何と日帰り入浴をするのにも1時間以上待ちが発生するという。後ろ髪引かれるが流石に諦めた。

 
 旅館と食堂を兼ねている田沢旅館(食堂)は待ち時間なく入ることができた。嶽温泉は共同源泉なので他の宿でも湯は同じ。山のホテルがあれだけ混んでいるのにこちらも独泉だった。階段を半地下に降りてドン突き、脱衣所の先に内湯があった。

 ここに寄るのは初めてで、男女別の内湯の奥に混浴があることを知った。そして下風呂スタイルの生簀型のブルー浴槽、打たせ湯の様に遥か頭上から源泉が叩き付けられている。

 湯は適温で、強酸性ではあるもののそれほどビリビリ感はない。
前日の下北半島からの運転で背中と肩に張りが出ており、ポイントをずらしながらかけ流しの源泉を「ドドドッ」とあてる。

 背を打った湯がジャバジャバと飛び散り、他人がいたらえらく迷惑だろう。だが有難いことに終始誰も来なかった。連休に入っても尚、岩木山麓の温泉では誰とも鉢合うことはなかった。

 
 浴後に併設の食堂で中華そばをいただく。滞在中の百沢温泉「山陽」と同じく、連休のため若いご夫婦と小さい子供が里帰り中のようだった。大家族のようで大変な賑いだった。

 嶽温泉も深刻な後継者不足に陥っているそうで、全ての宿が跡取りがおらず、このままでは温泉街そのものが倒れてしまう。
本旅で経由してきた黒石市の温湯ぬるゆ 温泉では「客舎」がなくなり、下風呂温泉も全て跡取りがおらず、こちらでもまた。。

 中華そばをいただき息子さんが立つ会計へ。

 「何とかこの宿を守って下さい」、と言われても困ると思うので、心の中で。

                           令和4年5月3日

桜並木の奥に岩木山 満開に冠雪が見事
湯段温泉「ゆだんの宿」
正面は綺麗で側面はボロい 
金気臭あり 素晴らしい浴感だった
田沢食堂であり田沢旅館 日帰り400円
落下式の源泉 地下にあるからこそ
田沢食堂で中華そば これも美味かった

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