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春の東北湯治⑲【さらば青森~鶯宿温泉へ】

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 青森での滞在は1週間。宿代は温湯 ぬるゆ温泉後藤客舎の3千円(税込)を筆頭に格安宿をアサイン。大型連休を噛みながらも一泊平均は4千円を少しはみ出る程度に収めた。だが温湯は炊事場にカメムシが飛んでいたため、下風呂と百沢は炊事場がなかったために食費が嵩んだ。

 百沢温泉を発ったのは5月1日。一年で最も値が張るこの期間に、私は隠し玉とも言える宿をここにぶつけた。ここであれば、一泊2千円(税込・別途入湯税75円)で宿泊できる。炊事場もあり食費も抑えられる。だが、、予約を取るのに一苦労。

私  「あの、予約をしたいのですが」
女将 「別の宿と勘違いしていませんか?来ない方が良いですよ」
私  「いえ、大丈夫なんです。御宿で間違いありません」
女将 「でも、来てから想像と違うと言われても困りますので」
私  「(苦笑)」

私  「以前に1週間、そちらで湯治したことありますので」
女将 「あー、何か覚えているかも」
私  「どうしてもお願いします」
女将 「うーん」

 鶯宿温泉「石塚旅館」の女将さんと交渉すること5分。
とうとう根負けした様子で予約を受けてくれた。別にこの宿は人気宿な訳でも何でもなく、誰も旅行客はいない。廃校の如きビジュアルで、少々隙間風もキツく、そしてカメムシも。。

 
 シャワーもカランもない浴室。観光で来た客は到着してからその造りに驚き、他の宿に移る方もいるという。私も最初は驚いたが、生活していると徐々に慣れて行き、最後は離れるのが少し寂しくなる不思議な宿だ。
 
 源泉は男女別の内湯が一つ。かけ流しで配湯されており、地元の客が家風呂代わりに昼夜訪れる。鶯宿温泉には他にも多くの宿があるが、毎日入る方がここを選ぶということは、質は折り紙付きと見て良いだろう。
 こちらで4日間滞在することにより、遂にこの湯治期間中の一泊平均は3千円台に突入する。

 
 弘前から鶯宿からも結構な移動距離。じりじりと南下し、途中秋田県鹿角市の「道の駅おおゆ」で休憩を取る。自炊生活に備えていぶりがっこ等の食料を購入。

 そこからもまだ運転は長い、近くの「大湯温泉」に立ち寄り身体を休める。「荒瀬共同浴場」は鄙び系そのものの造りで、無人スタイルでチケットを投入して中へ。

 足元湧出泉としても知られているが、源泉自体は別の場所からの引湯。
簀子上の湯底から大きめの気泡がぷくぷくと上がる。少々熱めではあるが、下から揚げられているので鮮度もなかなかのものだ。

 下風呂からの恐山、そして嶽温泉と続いていた硫黄泉の連湯。
身体や芯まで成分が残っており、服やタオルも洗濯しても匂い残りがあるほどだった。大湯は久々の無色透明で、改めてさっぱり系源泉の良さを堪能した。

 鹿角インターから東北道を使えば早いが、節約のために一般道で八幡平を西回りで超える。ここに備えてスタッドレスで来たようなものだが、雪の回廊は解けていた。標高1,000m付近を通過しても雨が降っていた。

 鹿角の街中を出ると341号線は信号がなく、1時間近くブレーキを踏まずに快適ドライブが可能だ。時折路面の工事用信号があったものの、運良く回避し田沢湖まで一息で出た。

 後生掛、玉川、乳頭温泉郷と垂涎物の名湯が揃うが横目で見送る。いつか身体の痛みが全て消えれば、またゆっくりと湯巡りをしてみたい。

 田沢湖線沿いを西に進むと「小岩井農場」のある雫石町へ。弘前を発ってから実に5時間(90分近く休憩しているが、)、一年振りに鶯宿温泉に到着。

 女将さんも私のことを覚えていてくれたようだが、やけに素っ気ない対応だった。最近は気管支が悪く通院が欠かせないという。
ここでは何のサービスもなく完全なセルフスタイル。布団だけはあるという趣だ。

 自炊生活に備え引越しを終えると、ここでもある方と再会を果たした。


                           令和4年5月4日 

(※石塚旅館さんは現在新規のお客様は受けていない模様です)

荒瀬共同浴場 先客がいたために中は撮影できず
段階的に値上げされた 今は200円
鶯宿温泉街へ
石塚旅館玄関
ちょっと薄暗い 慣れれば居心地が良くなってくる
石塚旅館の玄関 この自販機、、

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