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春の東北湯治⑯【恐山参拝~弘前へ向かう】

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 本州最北端の大間崎をこの目で確認し、本旅の大義はこれで果たされた。
自分の体と主治医と相談の上、下北半島に再び立ったことは感慨深い出来事であった。

 自己満足以外の何物でもないが、鳴子温泉(宮城県大崎市)~温湯温泉(青森県黒石市)と経由し800キロ。下風呂温泉は湯も海の幸も秀逸で、桑畑温泉から見える絶景も素晴らしく、大間のバスラーメンが安くて旨いということが確認できた。あの豪雨被害からの胸の痞えが下りるようだ。

 実際のところ、私の様に下風呂のことを気に掛けている温泉ファンは多いと思う。そもそも三沢空港から車で2時間、新青森駅からだと3時間近く要する。追い打ちをかけるように疫病拡大のため足が縛られ、これまで以上に僻遠の地になってしまった。

 素晴らしい温泉街が衰退していると分かっていても、普段の生活がある中でどうしても対岸の火事になってしまう。自然災害に飲まれても何もできない隔靴掻痒は皆同じだろう。何の支援にもならないが、改めて下風呂温泉は素晴らしかったと記しておきたい。

 
 ここまで来ても旅はまだ折り返し。
徐々に南下し、弘前方面の「百沢温泉」へと向かう。下風呂を発った日から本格的にGWに入り、この辺りからより慎重に宿選びを行わなけらばならない。繁忙期でもさほど料金が変わらない宿、浮足立った観光客がいない宿を選定すると、百沢に白羽の矢が立った。

 
 とその前に、一カ所立ち寄らなければならない場所が。
下風呂から南下しむつ市に入ると「恐山」がある。こちらには恐山冷水という湧水処があり、「不老不死」「長寿」「若返り」の水とも言われている。
 スピリチュアルな話だが、この場所には人間のみならず恐山へ集まる霊も飲みに来ると伝えられているそうだ。

 この旅に出て3度目の給水、湯沢で汲んだ「目覚めの清水」がエンプティ寸前だった。恐山へ向かう道中、ヒバの森をバックに少し開けた湧水処が見えた。地蔵菩薩が祀られ荘厳な雰囲気が漂う。

 こちらも綺麗に整備されており、3本の竹筒の手前に駐車スペース様に砂利が轢かれている。車を後進でピタリと寄せ、歩くことなく採水から積載を完了。何とも御利益のありそうな水、感謝の思いを忘れずいただく。このままのペースで行くと、岩手まではこの水と共に生活することになる。

 湧水処から更に10分、恐山菩提寺に到着した。
病の平癒祈願を終えた後、敷地内にある共同浴場へ。こちらには4か所の湯があるが、成分が強いため「薬師の湯」一湯勝負。
 恐山の開山は5月1日、私が訪れたのは仮開山期間中の4月29日。予想通り、やはり誰もおらず独泉だった。

 こちらも下風呂を彷彿とさせる硫黄泉。痺れる熱さとビリビリ感あり、こちらも内側から「ドン」という感じだ。独泉を嚙み締め閉眼し効かせる。汗がポタポタと流れ出し、湯上りに飲んだ恐山冷水の旨さもまた格別だった。

 むつ市から青森県西部の弘前へ。同県内とは言えかなりの距離だ。
道中には垂涎物の共同浴場がゴロゴロしているが、ここは身体の負担を考え我慢。道の駅を休憩ポイントに駒を進める。

 陸奥湾を舐めるように走るはまなすラインを南下していると、道の駅「菜の花プラザ」が見えた。この日は雨風が強く底冷えのする寒さ。ホットコーヒーで暖を取ろうと寄ったのだが、連休とあり外に露店が並んでいた。
 
 かに汁がライブで炊かれており、こちらを昼食代わりに。
下風呂で朝食付きにしたために昼食は抜くつもりでいたが、300円なら許容範囲。やはり道の駅で「キノコ汁」「豚汁」「あら汁」などが出ていると、どうしても手が伸びてしまう。

 ここにはテントや座るところもなく、小雨に撃たれながらの立ち食いだったが、これも忘れられぬ思い出の味。


                           令和4年5月1日

さよなら下風呂温泉
恐山冷水
ピンそばに車を寄せれば歩かずに荷積みが出来る
ちょっと線が細いが、キレのある喉ごし
恐山 薬師の湯 強烈な硫黄臭が漂う
手前は熱くて入れない
風が強かった  トウモロコシはいくらだったか
雨の中立ち食いしたカニ汁 ご馳走様でした

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