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八月の湯治②【いざ、増富温泉へ】

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 午前10時、少し遅めの出発。
中央道に乗り西へ。調布基地(味スタ)を追い越し、右に競馬場、左はビール工場・・・、そして小仏トンネルでいつも通り渋滞にハマる。相模湖からは再び流れ出し、笹子トンネルを抜けると甲府盆地へ。

 この辺りは大好物の温湯ゾーン。上質な源泉が至る所で湧出しており、笛吹~甲府、韮崎エリアは度々連湯しお世話になった。

 「岩下温泉旅館」、「山口温泉」、「韮崎旭温泉」などは、夏場の体調不良にはもってこいの名湯。だが、時期が時期なのでここは我慢。今回は出発から帰宅まで、宿の湯以外はノーダイブに徹する。

 甲府を超えると中央道は北へ、八ヶ岳方面へ登っていく。
この先山梨と長野の県境は、嘗て日本の高速道路最高標高地点(900m)だったエリアだ。※現在は東海北陸道が開通し、松ノ木峠付近に抜かれてしまった。

 その少し手前、山梨県は北杜市須玉ICで出口へ。ここからは一般道でジリジリと東を目指し緩やかな坂路を登っていく。途中みずがき湖畔のビジターセンターで休憩を取る。

 東京方面は降雨に見舞われたが、この辺りは晴れ渡っていた。
万緑を写した美しき湖面に心奪われる。決意を新たに入植への覚悟を決める。この先一週間は湯治生活。街に入れば右顧左眄せず、平穏を取り戻すまで街を出ない。


 再び車を走らせること10分。到着したのは「増富ラジウム温泉」。
秋田県の玉川温泉、鳥取県の三朝温泉と並び、日本屈指の放射能含有量を誇る温泉地だ。
 専門家ではないので多言は控えるが、放射能は多量になれば劇薬にもなるが、微量であれば免疫力の向上、体の細胞の活動を活性化、老化の抑制等に効果があるとされる。ホルミシス効果というやつだ。
 
 こちら増富温泉は慢性関節リウマチを始め、痛風、皮膚病、外傷後遺症など様々な疾病に効果があることが報告されている。
 「信玄の隠し湯」の一つでもあり、戦傷兵たちの創傷にも効果があり、「武士の湯」とも呼ばれていた。
 同じころ、オーストリアのバートガスタインという温泉も「兵士の湯」と呼ばれ、戦で傷ついた兵士の治療場として使用されていたという。
 
 当時は東西交流は勿論なく、成分分析などが行われる遥か昔。経験的な事実に基づいて入浴が薦められていたのだ。現代になって化学分析が行われるようになり、両温泉が「放射能泉」という泉質だったことが明らかにされた。
 このような事実を知れば、まだまだ温泉への深耕は興味が尽きない。 
分析書上は非常に薄くても、じわじわ効いてくるものもあれば、ガツンと来るものも。
 同じような成分でも、香りや肌触り、色が全く違うことも多々ある。未だ数値には現れない成分も存在するのだろう。
  


 増富温泉の入口付近、共同の駐車場に車を置き散策を開始。何度も来ている温泉街だが長期滞在は初、商店や食事処などをロケハンする。

 この一帯もかなり廃れており、どの旅館や商店も年季が入っている。かつて営業していた自炊専用の宿は廃墟となってしまっていた。こちらは街の中心にある金泉閣という旅館の別館。
 
 感染拡大防止のため休館とのことだが、復活する日は来るのだろうか。
その奥には湯治宿の総本山とも言える「不老閣」。こちらも以前は自炊棟が存在し、4,000円台~宿泊が可能だったが現在は利用できない。
 
 増富温泉では現在自炊可能な宿はないようだ。滞在する宿も炊事場はないため、弁当などに頼ることになる。栄養が不足しないよう、サプリメントや野菜ジュースは大量に積載。


 最初に足を踏み入れたのは、「かもしか」というお土産屋。パンやカップラーメンなど、必要最低限の食物は並んでいた。元旅館だったようで、食堂も併設されていた。

 おじさんに声をかけ、何時まで営業しているかを伺う。「客が来なければ閉める」という。こちらに夕食を期待すると食逸する可能性がありそうだ。   
 かつてはこのような商店は重宝されたのだろうが、自炊棟がなくなってしまっては客足が鈍るのも当然か。

 続いて斜め向かいの「村松物産店」へ。こちらは手打ちうどんが名物。建物自体は古いが内装は綺麗にされており、お土産類が並び一部はカフェとなっている。女将さんらしき方(大女将)がいたので声をかける。
 
 こちらの食堂は昼営業のみだが、夜は事前に予約をすれば食事出しも出来るという。物があれば、、という雰囲気だった。

 旅の趣旨、そして暫くこの地にいることを伝える。すると表向きのメニューにはないが、おにぎりなどの軽食のテイクアウトを用意できるという。如何にも気の良さそうな方で、いろいろと世話を焼いてくれそうでほっとした。
 その他商店もを回るが、夕食が安定して手に入りそうなのはこの商店のみ。湯治中はもともと粗食を心掛ける、おにぎりがあれば充分。

 その後約2年振りに、旅館「三英荘」に突入。

女将さん、元気かな。確か前訪の時点で私と大差ない年齢のお孫さんがいらしたはず。。

  
                           令和3年8月7日

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みずがき湖 万緑の湖面が美しい
かもしか バス停にもなっている

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