見出し画像

言葉を仕事にするひと

たいていものもは、
なんでも買ってすぐ間に合ってしまう、
そんな世の中にだんだんなってきました。
なるほど便利にはちがいありませんが、
なんでもそうして暮していると、
どうしてかふっとさみしくなる、
なにか心のどこかにすきまができたような
むなしさを、そういったものを
感じるときがあります。
お母さんの手料理が恋しくなるのも
そんなときです。
なんでも買って間に合うから、
手作りのあたたかさが、
ひとしお身にしみるのでしょうか。
美しいものを   暮しの手帖社


書籍「美しいものを」には、
雑誌「暮しの手帖」の
初代編集長である花森安治さんの遺した
“暮し”を見つめる言葉が
おさめられています。


モダンな挿絵とともに綴られる
花森さんの言葉は、

目の前の人にやさしく語りかけているような
あるいは、
ひとつひとつのバランスを慎重に考えて
編み上げたような
特有の語り口が
他にない魅了を放っています。


なんとなく気忙しく、
物事への向き合い方が
すこし粗末になっているとき、
この本を読むと

背すじがシャンとして
気の引き締まる思いがしてくるので
この本は
大切な、愛読書のひとつ。
私の、だい好きな本です。



花森安治という人は
一体どういう人だろう。

そう思って、彼に関する本や
彼に関わった人たちの書籍を
いくつか読むうち

私は、彼が大切にしていたという
“実用十教訓”に出会いました。


一、やさしい言葉で書く
二、外来語は避ける
三、目に見えるように表現する
四、短く書く
五、余韻を残す
六、大切なことは繰り返す
七、頭でなく、心に訴える
八、説得しようとしない(理詰めではなさない)
九、自己満足しない
十、一人のために書く

自分で考えて生きよう  松浦弥太郎


得意になって、上からものを述べることなく
自身も読者と肩を並べ
同じ目線に立ってペンを執る。
読みやすく、分かりやすく、
それでもって決して書きすぎない。
ほんの少しのヨハクを持たせて
読者自身が、その内容に
思いを巡らせることができるように書く。

この十教訓からは
言葉を仕事にするひととしての覚悟、
それから
謙虚な姿勢が伝わってくるようです。

そうやって、
たった一人の読者のもとに
ちゃんと想いが届くようにと
噛み砕き、練り上げ、こしらえた
真心の文章だからこそ
花森さんの綴る文章、手掛けた雑誌は、
多くの人の心を捉えてきたのだと思います。




数字やデータがばかり
重宝される時代になった今も

最後に
ひとの心を揺さぶるのはきっと
思いのこもった言葉です。

伝えるということ、
日本の美しい言葉の数々ことを、
私ももっと、考えてみようと
思っています。




この記事が参加している募集

仕事について話そう

これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿