言葉を仕事にするひと
書籍「美しいものを」には、
雑誌「暮しの手帖」の
初代編集長である花森安治さんの遺した
“暮し”を見つめる言葉が
おさめられています。
モダンな挿絵とともに綴られる
花森さんの言葉は、
目の前の人にやさしく語りかけているような
あるいは、
ひとつひとつのバランスを慎重に考えて
編み上げたような
特有の語り口が
他にない魅了を放っています。
なんとなく気忙しく、
物事への向き合い方が
すこし粗末になっているとき、
この本を読むと
背すじがシャンとして
気の引き締まる思いがしてくるので
この本は
大切な、愛読書のひとつ。
私の、だい好きな本です。
*
花森安治という人は
一体どういう人だろう。
そう思って、彼に関する本や
彼に関わった人たちの書籍を
いくつか読むうち
私は、彼が大切にしていたという
“実用十教訓”に出会いました。
得意になって、上からものを述べることなく
自身も読者と肩を並べ
同じ目線に立ってペンを執る。
読みやすく、分かりやすく、
それでもって決して書きすぎない。
ほんの少しのヨハクを持たせて
読者自身が、その内容に
思いを巡らせることができるように書く。
この十教訓からは
言葉を仕事にするひととしての覚悟、
それから
謙虚な姿勢が伝わってくるようです。
そうやって、
たった一人の読者のもとに
ちゃんと想いが届くようにと
噛み砕き、練り上げ、こしらえた
真心の文章だからこそ
花森さんの綴る文章、手掛けた雑誌は、
多くの人の心を捉えてきたのだと思います。
*
数字やデータがばかり
重宝される時代になった今も
最後に
ひとの心を揺さぶるのはきっと
思いのこもった言葉です。
伝えるということ、
日本の美しい言葉の数々ことを、
私ももっと、考えてみようと
思っています。
*
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