とだかせきらい(戸高石瀬)

【メインテーマ】各地の河童伝承、河童関係民話について研究。主に文献調査を行い、情報蓄積…

とだかせきらい(戸高石瀬)

【メインテーマ】各地の河童伝承、河童関係民話について研究。主に文献調査を行い、情報蓄積・提供する。 【サブテーマ】「石瀬万録」の続編として文化的テーマに挑戦。 【私について】アラサー、女性、なまけもの。草野石瀬(くさのせきらい)の子孫です。

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    誰にも見つからない・じめっとした薄暗い場所で本を読んだり仮眠をとったりします。とにかく「誰にも観測されない」ことが重要です。そんな私が、NOTEマガジンというかたちで自分勝手な読書会を開きます。

最近の記事

関西カッパ考察#1「ガタローに勝った子ども」(河童民話伝承収集)

大阪は河童が遠い 大阪では、地名の多くが水にまつわるものになっている。 筆者は2023年4月に大阪府へ引っ越してきた。30年余の人生で、初めて九州の外に住民票を置く。 まず「大阪歴史博物館」にて古代の遺跡に萌えた。加えて、この土地が如何に水と密着した歴史をたどってきたかを知る。 湿地、沼、池、沼、川、池・・・。 「これは河童伝承がたくさんありそうだ!」 期待に胸を膨らませたのだが、調べても調べても、オモシロ河童話に巡り合えず。(ちょっとした小話は見かけるものの…。) 九州

    • 妖怪は救いである──映画「岬のマヨイガ」を観た後のなぐり書きが出てきた話

      2024年元日に起きた震災。 その後の国内の出来事。今も、苦しいです。 とても言語では表しきれない。 防災かばんやストック品を点検していたら、 紙の端に書きなぐった言葉が出てきました。 昨年、2023年2月17日の自筆。 「妖怪は救いにならなくては。」「救い」としての異形。 昨年の私が答えを出していました。 くるしい時、何が救いになるのかは、人それぞれ。 まるまるした子犬の写真、 きょとんとした猫の顔、 くだらないギャグマンガ、 何も考えないショート動画、 美しい風景、

      • 京都にて発見「薩摩ガラッパ」軽石でできた郷土玩具

        「石ふしぎ博物館」を訪問 2023年5月某日、京都御苑の隣にある石の博物館へ立ち寄った。友人と別の用事で京都に来たが、ふとWeb上で知って、筆者希望で目的地に追加した。 アンモナイトとか動物糞の化石とか、とりあえず行けばきっと「良い」はず! その感覚におおむね同意してくれる友。 公益财回法人 益富地学会館 (石ふしぎ博物館) https://masutomi.or.jp 当日は五月快晴、歩くと汗。来館時あまりにも汗を垂らしていたため、スタッフがあわてて冷房をつけてくださ

        • 天狗と河童のハーフ「てんがらもん」(鹿児島県郡山)【河童伝承フィールドワーク・資料調査】その3

          平成16年の民話集に記された答え ここまで、寄り道をしながら「てんがらもん」について述べてきたが、鹿児島市立図書館で資料をとりよせ、真髄にせまることにした。 以下は、『郡山の民話と伝説』(郡山町文化協会ふるさとを学ぶ会民話部会平成16年3月31日発行)の「八重山天狗どんと甲突池のガラッパさんのおはなし」の文末(注釈)から引用する。 天がらもん=人間。天狗=みどり(山)、ガラッパ=水なのだ。この解釈を地元の商工会が明示している。 そうすると、拙記事の「その1」に掲載した天狗

        関西カッパ考察#1「ガタローに勝った子ども」(河童民話伝承収集)

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          天狗と河童のハーフ「てんがらもん」(鹿児島県郡山)【河童伝承フィールドワーク・資料調査】その2

          甲突川(こうつきがわ)は神の月 甲突川は鹿児島市街地を割るように流れ、市民の憩いの場となっている河川。延長26キロメートル。 薩摩川内市との市境、八重山のふもとの「甲突池」を水源とする。二級河川である。 以下画像の通り、古い表記は「神月川」だった。 「三国名勝図会」とは、江戸時代後期に薩摩藩が編纂した薩摩国、大隅国、及び日向国の一部を含む領内の地誌や名所を記した文書である。 江戸時代後期の時点で「神月川」。 であれば、今の「甲突池」は当時「神月池」だったのだ(!)。なんと

          天狗と河童のハーフ「てんがらもん」(鹿児島県郡山)【河童伝承フィールドワーク・資料調査】その2

          天狗と河童のハーフ「てんがらもん」(鹿児島県郡山)【河童伝承フィールドワーク・資料調査】その1

          異彩をはなつ河童民話 鹿児島市の北部、郡山の八重山地区に「てんがらもん」の民話がある。 八重山(やえやま)の天狗どんと、甲突川(こうつきがわ)のガラッパさんが仲良くなって、ふたりの間に生まれた男の子が「てんがらもん」と名付けられ、やんちゃではあったけれども親孝行で優しい子に育ち、両親とともに八重山と甲突池を守りつづけたそうな……というお話。地元の商工会青年部が紙芝居を作成して披露している。 (参考:https://www.youtube.com/watch?v=80MFfF

          天狗と河童のハーフ「てんがらもん」(鹿児島県郡山)【河童伝承フィールドワーク・資料調査】その1

          阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし(阿佐ヶ谷姉妹)幻冬舎文庫

          姉妹だけれど、姉妹から最も遠い 読む前は「よく歌うピンクドレスのマダムたち」「細かすぎるモノマネの人たち」という印象のみでした。 彼女らの日常を体感することで徐々に親近感が湧き、自分が3人目の妹のような心地に。 最終的に私は今年、友人の披露宴でくすんだピンクのワンピースドレスを着ました。しっかり影響をうけたのです。 読み終える頃には、筑前煮のように染みわたる滋味。 暮らしを愛しつつ、お互いにぶつぶつ文句を言っている。ぶつぶつ。ぐりぐり。 私にも姉が居ます。顔の系統が似て

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          阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし(阿佐ヶ谷姉妹)幻冬…

          ローカル文献より「兵主坊と猿の生肝」(椎葉村の昔語り)【河童文献調査考察】

          このシリーズ【河童文献調査考察】では、原文から引用し、客観的考察と個人的感想、内容に応じて話題を広げていく。 * * * 今回は宮崎県椎葉村の郷土書籍『平家の里 椎葉村の昔語り(上巻 昔ばなしの部)』より寄稿する。同著では椎葉の里山に伝わる99のお話を、口語から書き起こした上で詳しく解説している。 また、椎葉村といえば明治42年、柳田國男が「後狩詞記」を著した、民俗学の聖地である。 兵主坊と猿の生肝騙し合い説話の王道「猿の生き肝譚」大変興味深いことにこの類話は世に点在する。

          ローカル文献より「兵主坊と猿の生肝」(椎葉村の昔語り)【河童文献調査考察】

          ローカル文献より「河童の嫁入」(鹿児島昔話集)【河童文献調査考察】

          このシリーズ【河童文献調査考察】では、原文から引用し、客観的考察と個人的感想、内容に応じて話題を広げていく。 * * * 今回はローカルな文献で面白いものがあったため寄稿する。鹿児島の昔話としてひっそり伝わる「河童の嫁入」である。キツネなら聞いたことがあるが、カッパはいかがか。 真夜中の雨の擬音は「ボソボソ」。河童の声は「ヒンヨウ ヒンヨウ」。 短い編だが鹿児島弁が入り混じり、遠野物語のように目の前で語られるごとき味わいがある。 河童怪異について単独行動中の報告が一般的に多い

          ローカル文献より「河童の嫁入」(鹿児島昔話集)【河童文献調査考察】

          「遠野物語」のカッパ(3)足跡【河童文献調査考察】

          はじめに 私、戸高石瀬のライフワークは、全国各地の河童伝承を収集することである。既に数多の民俗学研究者によりしゃぶりつくされた「河童」という怪異。現代においては一般化されたイメージが定着した上で、忘れ去られようとしている。 これまでのローカルな活動(ZINE等)では、文字数の関係で原文を引用掲載できなかった。しかし本音では、原文を正確に蓄積し、いつでも参照できるようにしたかったのだ。 超ローカルな文献をあさっていると、河童伝承がメインでなはないもののほうが多い(〇〇地区の昔

          「遠野物語」のカッパ(3)足跡【河童文献調査考察】

          「遠野物語」のカッパ(2)Y字路【河童⽂献調査考察】

          はじめに 私、⼾⾼⽯瀬のライフワークは、全国各地の河童伝承を収集することである。既に数多の⺠俗学研究者によりしゃぶりつくされた「河童」という怪 異。現代においては⼀般化されたイメージが定着した上で、忘れ去られようとしている。 これまでのローカルな活動(ZINE等)では、⽂字数の関係で原⽂を引⽤掲載できなかった。しかし本⾳では、原⽂を正確に蓄積し、いつでも参照できるようにしたかったのだ。 超ローカルな⽂献をあさっていると、河童伝承がメインでなはないもののほうが多い(〇〇地区の

          「遠野物語」のカッパ(2)Y字路【河童⽂献調査考察】

          「遠野物語」のカッパ(1)一升樽【河童文献調査考察】

          はじめに 私、戸高石瀬のライフワークは、全国各地の河童伝承を収集することである。既に数多の民俗学研究者によりしゃぶりつくされた「河童」という怪異。現代においては一般化されたイメージが定着した上で、忘れ去られようとしている。 これまでのローカルな活動(ZINE等)では、文字数の関係で原文を引用掲載できなかった。しかし本音では、原文を正確に蓄積し、いつでも参照できるようにしたかったのだ。 超ローカルな文献をあさっていると、河童伝承がメインでなはないもののほうが多い(〇〇地区の昔

          「遠野物語」のカッパ(1)一升樽【河童文献調査考察】