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着地の仕方、あるいはとりあえず息を継ぐ アドベント2021

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年に一度だけなのは更新、そしてクリスマス。 飛べないなら、ひとまず息の継ぎ方から覚えよう。
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記事一覧

2021カレンダーごあいさつ

 全アドベントカレンダー、開き終わりましたでしょうか。大変でしたでしょう、お疲れさまでし…

tmk
2年前
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25.おまけ 魔女の食卓3:ネコと和解せよ

 昨晩サバトへ行かなかったのを、伯母たちに咎められた。  正確には、伯母のように世話を見…

tmk
2年前
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24.ノッティングヒル イミグレーション

 母には姉が一人いて、二人の下には異父妹がいる。  そう珍しい話ではない。貧困に妻と娘二…

tmk
2年前
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23.擬態する白鳥ではないもの

 春から夏にかけて、水路はとても賑やかになる。  適切な気候にぶらぶら歩きを楽しむ人が増…

tmk
2年前
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22.垣根の上を飛び越える

 ところが、池の水面は青々とした浮草で埋まっていて、水中の様子は杳として知れません。王様…

tmk
2年前
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21.今がその時

 月曜日の登校中に、一羽のカラスに話しかけられた。  実は彼女は未来人で、意識だけを過去…

tmk
2年前
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20.指紋

 浴室の鏡に、指紋を見つけた。  わたしのものではなかった。壁に鏡を押さえつけているような跡だった。わたしはそんなことをした覚えはない。それに、こんなに太い指も持っていない。  白い線が渦を描いて、湯気の中ではっきりと浮かび上がっていた。タオルで拭っても消えない。どうやらそれはガラスの内側についたもので、設置のときにうっかり素手で触ってしまったものらしかった。  わたしはバスタブから出たばかりで、水滴の残る素肌からは、まだ湯気が出ていた。  でも入浴した記憶がない。  よく考

19.鳩に倣う

 鳩に倣い、ものを忘れることにした。  わたしの住む団地は多くの場所と同じく、鳩に餌をや…

tmk
2年前
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18.十分に発達した幻想迷宮は、公営住宅と区別がつかない。

 僕は知らなかったことだけれど、第二次世界大戦が終わってより制定された住居法によれば、そ…

tmk
2年前
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17.ガラス窓のドールハウス

 僕の職場はカムデンの方にあって、そこへ行くまでにアビーロードを通る。  そう、ビートル…

tmk
2年前
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16.旅の土産に

 夏、期末試験が終わった直後から行方不明になっていた友人から、連絡をもらった。  夏休み…

tmk
2年前
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15.庭のパン焼き窯

 僕の家では休みの度に、田舎の祖父母の家で何日か過ごすのが決まりのようになっていた。  …

tmk
2年前
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14.この度、魔法少女であることが発覚しました。

 三十代を半ばすぎると、健康診断が大事だと周辺がうるさくなる。  婦人系の病気の検査も、…

tmk
2年前
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13.山に眠る

 女あり。  舟にひとり、七つの児を抱え渡る。  腕四本あり、乳房豊かに六つほど腹に連なる。足はなく、足りぬ乳に代わり末児に含ませし、片の目を欠く。  長く砂の海を行く。  昼の暑さ厳しく、これを避け休む。幼しの子、繭を作りこの中にて過ごす。年かさの子、弱き弟妹を飲み込み腹の中にて守らんとす。その上に母、骨を広げ自らの肢体で日の傘とする。女の背、陽に焼け肉落つ。  夜、空に花咲く。  花の色、闇に露降りて移り、雨を赤く染める。女これを飲む。時に髪を糸として魚を釣り、児らの腹を