くろだたけし

自作の短歌や、好きな短歌について書いています。短歌では、うたの日、あみもの、うたそらな…

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自作の短歌や、好きな短歌について書いています。短歌では、うたの日、あみもの、うたそらなどに参加しています。 ツイッターは、https://twitter.com/tkuro2016 (2022/04/03)

記事一覧

2024年5月の連作、4つ

夢ではない わたしにも寝顔はあると心配で部屋には鍵をかけてしまった 長靴に雨が入ったときわかる裸足になれぬわたしの弱さ 懐かしい甘さも実は罠だとははっと気づけばキ…

6

自選短歌 2024年5月

難しい本を読むのだわからないことばかりだと忘れないため 下っ端は先に死ぬのよ正義にも悪にも染まりきらないでいて 救いとは目覚めることか眠ることか弥勒菩薩の静かな…

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2024年4月の連作、4つ

自省 とびかかる猫の動きの先にいた獲物はちょうど陰で見えない 変わらない愛はあるのかてのひらにおさまるものはひと口サイズ 目玉焼きの目玉をいくら増やしても命の数は…

くろだたけし
1か月前
8

自選短歌 2024年4月

どこからか来てどこかへと行く鳥がベランダの屋根にたてる足音 どうしても引っ込み思案が直せずに背後霊すらわたしの前に あいさつを元気にされて恥ずかしい悪い人ではな…

くろだたけし
1か月前
6

2024年3月の連作、5つ

春のせい 立ち上がりしばらく待ってみたものの特にやる気はやってはこない あげた人ももらった人もいなくなり贈り物だけ消えずに残る 会うために必要なのは約束で眠気は春…

くろだたけし
2か月前
8

自選短歌 2024年3月

待てなくて熱すぎるまま食べるから誰も知らないたこ焼きの味 人肌のお湯にひたして待つだけでまさか木乃伊が生き返るとは 姿さえ隠れるほどの薔薇を持つ男が潔白のわけが…

くろだたけし
2か月前
7

2024年2月の連作、4つ

したい デジカメで撮った写真が多すぎて少し整理をしてあきらめて からくりは知らないけれどあてにして晴れの予報で予定をたてる すかしてたわけではなくてマスコミに踊ら…

くろだたけし
3か月前
8

自選短歌 2024年2月

すれ違う自転車が知る風景をわたしは少し前に見ている くるくるとフォークダンスをつつがなく踊ったあともひとりで帰る 腹が出て膝が弱って音痴でも最新版で完全体だ 折…

くろだたけし
3か月前
8

2024年1月の連作、4つ

よこがお 雨ならば音がするけど雪だからふと見たときにもう降っている 幼さをわざと残したままにして生き抜いてきたクリームパンは 溶けきれず残る砂糖にお湯を足し足りな…

くろだたけし
4か月前
10

自選短歌 2024年1月

視界にはいつもとがった角がありサイは悲しみ以外知らない 縫うための針はないのに引き出しの奥にたまっていく補修布 空っぽの丼を置きふたをしてカツ丼になれと祈るほど…

くろだたけし
4か月前
9

12月の連作、5つ

大掃除 さまざまな人の思いを受けいれる余裕はなくて整理整頓 伝えたいことはどれだけあったのか向きを変えれば薄い奥行き めずらしい石ってだけじゃ宝石と呼ばれないって…

くろだたけし
5か月前
7

自選短歌 2023年12月

わたしにはスイッチはないちょっとずつやる気をためてやっとがんばる そのときになんのつもりになったのか忘れたのだが確かに浮いた 細い木や洗濯物がなかったら風の強さ…

くろだたけし
5か月前
10

11月の連作、4つ

クロワッサン スカスカのクロワッサンをぶつけられ呪いが解けた鼻毛が消えた ラーメンになれるとしたら出汁がいい?具がいい?麺になるのはなしで パン屑になればパンより…

くろだたけし
6か月前
16

自選短歌 2023年11月

ほつれてる袖をどうにかしたいけど今は両手がふさがっている 二番目のママは人造人間で愛はないけど差別もしない サムライの頭はみんなカツラですおしり脱毛だってしてま…

くろだたけし
6か月前
8

10月の連作、4つ

迷う 今空を見るときれいな満月が見えると聞けばわたしは迷う さえずっているのはどんな気持ちかな僕はだいたい黙ってしまう 漬けられた梅酒の梅は悟るしかないとどこかで…

くろだたけし
7か月前
18

自選短歌 2023年10月

さびしくて眠れなくてもいいじゃない答えのでない問いは尊い 臨月のおまえはまるまる膨らんでなにを産むのか教えてくれない いちかけるいちかけるいち累乗が空回りするよ…

くろだたけし
7か月前
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2024年5月の連作、4つ

夢ではない

わたしにも寝顔はあると心配で部屋には鍵をかけてしまった
長靴に雨が入ったときわかる裸足になれぬわたしの弱さ
懐かしい甘さも実は罠だとははっと気づけばキャベツ人間
ピクルスはいてはいけない人たちに送った招待状のたくらみ
目が覚めて夢ではないと迷わずに気づいた朝は年をとります

いいんじゃないか

成功はしたが卒業文集の夢と違ってなんか気まずい
脱げたまま置いていかれた片方の靴の群れでは

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自選短歌 2024年5月

難しい本を読むのだわからないことばかりだと忘れないため

下っ端は先に死ぬのよ正義にも悪にも染まりきらないでいて

救いとは目覚めることか眠ることか弥勒菩薩の静かな足音

借りたまま返していない本なのに特に心に残っていない

月ぐらい遠くにいれば気の向いたときにきれいと言うだけでいい

2024年4月の連作、4つ

自省

とびかかる猫の動きの先にいた獲物はちょうど陰で見えない
変わらない愛はあるのかてのひらにおさまるものはひと口サイズ
目玉焼きの目玉をいくら増やしても命の数はゼロでよかった
内臓が夜中も低くうめくのだ正論なんて魔除けのおふだ
進んだらもっと先まで見えてきて進捗率は一生二割

ぷちり

物置きはいくらか人をだめにして刈り込みバサミばかり四つも
不機嫌な羽音をたてているけれどあとからここに蜂が来

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自選短歌 2024年4月

どこからか来てどこかへと行く鳥がベランダの屋根にたてる足音

どうしても引っ込み思案が直せずに背後霊すらわたしの前に

あいさつを元気にされて恥ずかしい悪い人ではないだけの僕

最適な太さのペンが最適でなくなってから使い切るまで

ごはんにもパンにも合うと気づかれてツナにとっては不幸な時代

テーブルにそれだけ置いた食パンが廃墟に見える夕陽の加減

2024年3月の連作、5つ

春のせい

立ち上がりしばらく待ってみたものの特にやる気はやってはこない
あげた人ももらった人もいなくなり贈り物だけ消えずに残る
会うために必要なのは約束で眠気は春のせいにしている
眠いとは思わないまま寝たあとでなにをあきらめたのか忘れた
あの頃にたいした意味はないとしてもときどき雨は降っていました

童心

なにもまだ事件は起きていないのに夢によくない予感を満たす
ありものでふさいだだけの穴だか

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自選短歌 2024年3月

待てなくて熱すぎるまま食べるから誰も知らないたこ焼きの味

人肌のお湯にひたして待つだけでまさか木乃伊が生き返るとは

姿さえ隠れるほどの薔薇を持つ男が潔白のわけがない

我慢することをやめたら背から羽根額から角脇から触手

成しとげたあとの軽さで花びらは風のちからにすべてまかせる

家政婦は見たけどなにも言わないですべて許して天国へゆく

2024年2月の連作、4つ

したい

デジカメで撮った写真が多すぎて少し整理をしてあきらめて
からくりは知らないけれどあてにして晴れの予報で予定をたてる
すかしてたわけではなくてマスコミに踊らされても踊れない僕
見たくなる夢もあるって知らないと目を閉じているだけで寂しい
やわらかい毛布のようなベランダで奇跡のような昼寝がしたい

昨日の続き

始まりと終わりがちゃんとすることはなかなかなくて昨日の続き
とどまると邪魔になるか

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自選短歌 2024年2月

すれ違う自転車が知る風景をわたしは少し前に見ている

くるくるとフォークダンスをつつがなく踊ったあともひとりで帰る

腹が出て膝が弱って音痴でも最新版で完全体だ

折るうちに端と端とがずれてゆくわたしが神でなくてよかった

素うどんにのせられているかまぼこに俺は好きだと言ってやりたい

この世では社長じゃなくて会長のほうが偉いといつ気づいたの

普通より不良がもてていることをわかったうえで僕らは普

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2024年1月の連作、4つ

よこがお

雨ならば音がするけど雪だからふと見たときにもう降っている
幼さをわざと残したままにして生き抜いてきたクリームパンは
溶けきれず残る砂糖にお湯を足し足りない味の名のないなにか
忘れたりしませんからと言うように来なくてもいいメールが届く
よこがおをつるりとなぞるようにして少し若さを盗みたかった

神さま

晴れたときやりたいことが決まらないそれでも雨が続くのはいや
ちょうどいい感じにいつも

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自選短歌 2024年1月

視界にはいつもとがった角がありサイは悲しみ以外知らない

縫うための針はないのに引き出しの奥にたまっていく補修布

空っぽの丼を置きふたをしてカツ丼になれと祈るほど暇

お湯で溶くタイプのクラムチャウダーで今日も満足できてしまった

のりしろをはみ出すほどにのりをつけ信じることが苦手なわたし

権力の犬にならない権力はどうせわたしを飼ってくれない

春といえど歌いながらは来ないのであれはおそらく酔

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12月の連作、5つ

大掃除

さまざまな人の思いを受けいれる余裕はなくて整理整頓
伝えたいことはどれだけあったのか向きを変えれば薄い奥行き
めずらしい石ってだけじゃ宝石と呼ばれないってそりゃそうだけど
この家の見えない場所で腐りだす水がいるから助けなければ
古い木の家には古いものばかりいつまでも終わらない大掃除

バッカス

どう見てもひ弱な僕がプロレスは受けの美学と熱く語って
日本酒は苦手だけれど湯で薄くすれば飲め

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自選短歌 2023年12月

わたしにはスイッチはないちょっとずつやる気をためてやっとがんばる

そのときになんのつもりになったのか忘れたのだが確かに浮いた

細い木や洗濯物がなかったら風の強さに気づかなかった

復讐を誓う我らは無差別に人をさらって編みぐるみにする

宮殿の夜の深さをくどくどと語った近衛兵士の幽霊

平凡を受けいれるのだ特別は金がかかると知ったからには

のぞいたらいない誰かの足があるそんな気がしてのぞかぬ炬

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11月の連作、4つ

クロワッサン

スカスカのクロワッサンをぶつけられ呪いが解けた鼻毛が消えた
ラーメンになれるとしたら出汁がいい?具がいい?麺になるのはなしで
パン屑になればパンより長いことここにいられて屑でよければ
猫ゴリラ着物の娘コロボックル棚に並べて君らは家族
無意識に眠りを奪いあいながらまだなりたいの不老不死に

仏壇

いつからか仏壇があり向こうから見られぬようにそっとのぞいた
外国のお菓子を置いて仏壇に

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自選短歌 2023年11月

ほつれてる袖をどうにかしたいけど今は両手がふさがっている

二番目のママは人造人間で愛はないけど差別もしない

サムライの頭はみんなカツラですおしり脱毛だってしてます

意図しない音が鼻からヒーと鳴る先祖は風の神かもしれない

退屈な会計監査はあとにして舞踏会とかしちゃだめですか

さえざえと続く夜道がいつになく長くてきっと故郷への道

あの猫は喧嘩以外じゃ鳴かなくて用心棒の貫禄がある

※「サム

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10月の連作、4つ

迷う

今空を見るときれいな満月が見えると聞けばわたしは迷う
さえずっているのはどんな気持ちかな僕はだいたい黙ってしまう
漬けられた梅酒の梅は悟るしかないとどこかで思うのだろう
スポーツは美しいのか人間が獣のまねをして吠えるのは
へらへらと戦争がゆく本当は貧しいくせにいい服を着て

照らす

落ち着いていてもいいのに方角がわからないって気づくと気になる
まっすぐが僕のからだにないことをわかった上で

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自選短歌 2023年10月

さびしくて眠れなくてもいいじゃない答えのでない問いは尊い

臨月のおまえはまるまる膨らんでなにを産むのか教えてくれない

いちかけるいちかけるいち累乗が空回りするように秒針

選ばれた切手に意味があったって同窓会で言われましても

結納を済ませたあとで気が変わりあとは自由に生きるしかない

さようなら僕はこれから坂道を転がってゆくそうしたいから