2024年1月の連作、4つ

インスタグラムのアカウントに投稿した、1月の4つの連作です。

よこがお

雨ならば音がするけど雪だからふと見たときにもう降っている
幼さをわざと残したままにして生き抜いてきたクリームパンは
溶けきれず残る砂糖にお湯を足し足りない味の名のないなにか
忘れたりしませんからと言うように来なくてもいいメールが届く
よこがおをつるりとなぞるようにして少し若さを盗みたかった

神さま

晴れたときやりたいことが決まらないそれでも雨が続くのはいや
ちょうどいい感じにいつもなれなくていじれるものをいじってしまう
計画をちゃんと誰かがたてたからまっすぐな道ばかりになった
閉じられた扉の奥の工場は捨てられたあとまだそこにある
神さまはいてもいなくてもかまわない名探偵がいたら会いたい

石けんで洗う

一円や五円が財布に残ったり残らなかったりして過ぎてゆく
顔に触れ骨をなぞれば眼球がはまるところはふたつの穴だ
わたしへと言葉がやってくる前もわたしはここにいたのでしょうか
足りないと感じて水を飲むこともやがてやめたくなるかもしれない
生肉のあぶらが溶けるぐらいには手はあたたかく石けんで洗う

モザイク

これ以上汚れるのなら朝イチでまるごと洗い流したい顔
コーヒーもお茶もなんだか面倒でお湯を飲んだが正しくはない
じゅうたんを上にかぶせたぐらいでもこの冬一番降った雪だよ
午前中ひとつ荷物を送ったら午後に荷物のぶんの空白
モザイクの向こうのものを想像はせずにモザイクとして見ている

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