くろだたけし

自作の短歌や、好きな短歌について書いています。短歌では、うたの日、あみもの、うたそらな…

くろだたけし

自作の短歌や、好きな短歌について書いています。短歌では、うたの日、あみもの、うたそらなどに参加しています。 ツイッターは、https://twitter.com/tkuro2016 (2022/04/03)

最近の記事

2024年7月の連作、4つ

抜け殻 七月の桜に爪を立てているゆうべ中身の消えた抜け殻 ひとつめがいた次の日にふたつめの抜け殻がいた並んだ幹に 歴史書もましてや偽書も残さずに暑くなったら鳴くだけの蝉 街に住みたい 自然とは適度な距離を置きながら他人行儀な街に住みたい 現実はきっとどこかがみにくくて大人は狡いガキは汚い 王子様にならない蛙にキスをした こっそり作る夜食のスープ 幸薄系 人生が百年続く時代でも幸薄系へ貢いでいたい 飛びこんだプールに水が無かったら不運ではなく不注意ですよ 缶のまま冷え

    • 自選短歌 2024年7月

      後頭部に傘専用の手が生えることを進化と呼ぶ雨の星 太陽に愛されたなら死ぬだろう ねえカプチーノの渦巻きも宇宙? わたしより君は幸せカレンダーの自分の誕生日に星マーク 流れない排水口を祟りだと怖がる君よ掃除しなさい 手を合わせ目を閉じたあと目を開けて早まったなとまた目を閉じる ターザンは野生児なのに俺よりもスーツが似合う面接も受かる 言い訳にならないけれど果物に思えて指でさわるくるぶし

      • 2024年6月の連作、5つ

        味もつけたい ゴミ袋大中小を使いわける平凡なゴミ生産マシン どこかから自治区と認められているほどの立場で発言をする 生きたまま丸呑みにする食べかたは向いていないし味もつけたい マドンナがあんな旦那に恋をしてインナーマッスルまでもしんなり 終わったら汚れていないほうの手で汚れたほうの手を洗います 捨てどき そのときの気分に合わせて変えられないいつもと同じ空の青色 行き止まりで引き返そうと思ったら道が続いてだらだら歩く だいたいは愛想笑いでいるものの実はわたしも有権者です

        • 自選短歌 2024年6月

          本当の言葉は歌になりたがるリズムはいつもそれを待ってる われわれがなにをするかは未定だが雨天決行だけは言いたい 建物と土地の名義は書き換わりつつがなきかな固定資産税 舞台には美女の首だけ残されてこれは手品じゃないかもしれない もともとは人から奪ったものだけど奪われるのはかなり悔しい

        2024年7月の連作、4つ

          2024年5月の連作、4つ

          夢ではない わたしにも寝顔はあると心配で部屋には鍵をかけてしまった 長靴に雨が入ったときわかる裸足になれぬわたしの弱さ 懐かしい甘さも実は罠だとははっと気づけばキャベツ人間 ピクルスはいてはいけない人たちに送った招待状のたくらみ 目が覚めて夢ではないと迷わずに気づいた朝は年をとります いいんじゃないか 成功はしたが卒業文集の夢と違ってなんか気まずい 脱げたまま置いていかれた片方の靴の群れではなくて枯れ葉が 花はすぐ色がくすんでしまうから造花に変えたことを忘れて 雨だけど

          2024年5月の連作、4つ

          自選短歌 2024年5月

          難しい本を読むのだわからないことばかりだと忘れないため 下っ端は先に死ぬのよ正義にも悪にも染まりきらないでいて 救いとは目覚めることか眠ることか弥勒菩薩の静かな足音 借りたまま返していない本なのに特に心に残っていない 月ぐらい遠くにいれば気の向いたときにきれいと言うだけでいい

          自選短歌 2024年5月

          2024年4月の連作、4つ

          自省 とびかかる猫の動きの先にいた獲物はちょうど陰で見えない 変わらない愛はあるのかてのひらにおさまるものはひと口サイズ 目玉焼きの目玉をいくら増やしても命の数はゼロでよかった 内臓が夜中も低くうめくのだ正論なんて魔除けのおふだ 進んだらもっと先まで見えてきて進捗率は一生二割 ぷちり 物置きはいくらか人をだめにして刈り込みバサミばかり四つも 不機嫌な羽音をたてているけれどあとからここに蜂が来たのだ リニューアルしたとおぼしき美容院の二階に古いままの看板 食パンの一番安い

          2024年4月の連作、4つ

          自選短歌 2024年4月

          どこからか来てどこかへと行く鳥がベランダの屋根にたてる足音 どうしても引っ込み思案が直せずに背後霊すらわたしの前に あいさつを元気にされて恥ずかしい悪い人ではないだけの僕 最適な太さのペンが最適でなくなってから使い切るまで ごはんにもパンにも合うと気づかれてツナにとっては不幸な時代 テーブルにそれだけ置いた食パンが廃墟に見える夕陽の加減

          自選短歌 2024年4月

          2024年3月の連作、5つ

          春のせい 立ち上がりしばらく待ってみたものの特にやる気はやってはこない あげた人ももらった人もいなくなり贈り物だけ消えずに残る 会うために必要なのは約束で眠気は春のせいにしている 眠いとは思わないまま寝たあとでなにをあきらめたのか忘れた あの頃にたいした意味はないとしてもときどき雨は降っていました 童心 なにもまだ事件は起きていないのに夢によくない予感を満たす ありものでふさいだだけの穴だから聞きたくはないことも聞こえる 爪を切るつもりで指を切っちゃだめ爪は伸びても指は

          2024年3月の連作、5つ

          自選短歌 2024年3月

          待てなくて熱すぎるまま食べるから誰も知らないたこ焼きの味 人肌のお湯にひたして待つだけでまさか木乃伊が生き返るとは 姿さえ隠れるほどの薔薇を持つ男が潔白のわけがない 我慢することをやめたら背から羽根額から角脇から触手 成しとげたあとの軽さで花びらは風のちからにすべてまかせる 家政婦は見たけどなにも言わないですべて許して天国へゆく

          自選短歌 2024年3月

          2024年2月の連作、4つ

          したい デジカメで撮った写真が多すぎて少し整理をしてあきらめて からくりは知らないけれどあてにして晴れの予報で予定をたてる すかしてたわけではなくてマスコミに踊らされても踊れない僕 見たくなる夢もあるって知らないと目を閉じているだけで寂しい やわらかい毛布のようなベランダで奇跡のような昼寝がしたい 昨日の続き 始まりと終わりがちゃんとすることはなかなかなくて昨日の続き とどまると邪魔になるから顔を上げどこかへ向かうふりをしている 木は森になっても静か集まると人は話をしな

          2024年2月の連作、4つ

          自選短歌 2024年2月

          すれ違う自転車が知る風景をわたしは少し前に見ている くるくるとフォークダンスをつつがなく踊ったあともひとりで帰る 腹が出て膝が弱って音痴でも最新版で完全体だ 折るうちに端と端とがずれてゆくわたしが神でなくてよかった 素うどんにのせられているかまぼこに俺は好きだと言ってやりたい この世では社長じゃなくて会長のほうが偉いといつ気づいたの 普通より不良がもてていることをわかったうえで僕らは普通

          自選短歌 2024年2月

          2024年1月の連作、4つ

          よこがお 雨ならば音がするけど雪だからふと見たときにもう降っている 幼さをわざと残したままにして生き抜いてきたクリームパンは 溶けきれず残る砂糖にお湯を足し足りない味の名のないなにか 忘れたりしませんからと言うように来なくてもいいメールが届く よこがおをつるりとなぞるようにして少し若さを盗みたかった 神さま 晴れたときやりたいことが決まらないそれでも雨が続くのはいや ちょうどいい感じにいつもなれなくていじれるものをいじってしまう 計画をちゃんと誰かがたてたからまっすぐな

          2024年1月の連作、4つ

          自選短歌 2024年1月

          視界にはいつもとがった角がありサイは悲しみ以外知らない 縫うための針はないのに引き出しの奥にたまっていく補修布 空っぽの丼を置きふたをしてカツ丼になれと祈るほど暇 お湯で溶くタイプのクラムチャウダーで今日も満足できてしまった のりしろをはみ出すほどにのりをつけ信じることが苦手なわたし 権力の犬にならない権力はどうせわたしを飼ってくれない 春といえど歌いながらは来ないのであれはおそらく酔っぱらいです

          自選短歌 2024年1月

          12月の連作、5つ

          大掃除 さまざまな人の思いを受けいれる余裕はなくて整理整頓 伝えたいことはどれだけあったのか向きを変えれば薄い奥行き めずらしい石ってだけじゃ宝石と呼ばれないってそりゃそうだけど この家の見えない場所で腐りだす水がいるから助けなければ 古い木の家には古いものばかりいつまでも終わらない大掃除 バッカス どう見てもひ弱な僕がプロレスは受けの美学と熱く語って 日本酒は苦手だけれど湯で薄くすれば飲めると結局飲んだ 音痴だし声も変だと気づいてもさらに惰性で歌い続ける バッカスは酒

          12月の連作、5つ

          自選短歌 2023年12月

          わたしにはスイッチはないちょっとずつやる気をためてやっとがんばる そのときになんのつもりになったのか忘れたのだが確かに浮いた 細い木や洗濯物がなかったら風の強さに気づかなかった 復讐を誓う我らは無差別に人をさらって編みぐるみにする 宮殿の夜の深さをくどくどと語った近衛兵士の幽霊 平凡を受けいれるのだ特別は金がかかると知ったからには のぞいたらいない誰かの足があるそんな気がしてのぞかぬ炬燵 屋根裏で鳴いていたから見てみたらそこにいたのがこの馬連です

          自選短歌 2023年12月