くろだたけし

自作の短歌や、好きな短歌について書いています。短歌では、うたの日、あみもの、うたそらな…

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自作の短歌や、好きな短歌について書いています。短歌では、うたの日、あみもの、うたそらなどに参加しています。 ツイッターは、https://twitter.com/tkuro2016 (2022/04/03)

最近の記事

2024年4月の連作、4つ

自省 とびかかる猫の動きの先にいた獲物はちょうど陰で見えない 変わらない愛はあるのかてのひらにおさまるものはひと口サイズ 目玉焼きの目玉をいくら増やしても命の数はゼロでよかった 内臓が夜中も低くうめくのだ正論なんて魔除けのおふだ 進んだらもっと先まで見えてきて進捗率は一生二割 ぷちり 物置きはいくらか人をだめにして刈り込みバサミばかり四つも 不機嫌な羽音をたてているけれどあとからここに蜂が来たのだ リニューアルしたとおぼしき美容院の二階に古いままの看板 食パンの一番安い

    • 自選短歌 2024年4月

      どこからか来てどこかへと行く鳥がベランダの屋根にたてる足音 どうしても引っ込み思案が直せずに背後霊すらわたしの前に あいさつを元気にされて恥ずかしい悪い人ではないだけの僕 最適な太さのペンが最適でなくなってから使い切るまで ごはんにもパンにも合うと気づかれてツナにとっては不幸な時代 テーブルにそれだけ置いた食パンが廃墟に見える夕陽の加減

      • 2024年3月の連作、5つ

        春のせい 立ち上がりしばらく待ってみたものの特にやる気はやってはこない あげた人ももらった人もいなくなり贈り物だけ消えずに残る 会うために必要なのは約束で眠気は春のせいにしている 眠いとは思わないまま寝たあとでなにをあきらめたのか忘れた あの頃にたいした意味はないとしてもときどき雨は降っていました 童心 なにもまだ事件は起きていないのに夢によくない予感を満たす ありものでふさいだだけの穴だから聞きたくはないことも聞こえる 爪を切るつもりで指を切っちゃだめ爪は伸びても指は

        • 自選短歌 2024年3月

          待てなくて熱すぎるまま食べるから誰も知らないたこ焼きの味 人肌のお湯にひたして待つだけでまさか木乃伊が生き返るとは 姿さえ隠れるほどの薔薇を持つ男が潔白のわけがない 我慢することをやめたら背から羽根額から角脇から触手 成しとげたあとの軽さで花びらは風のちからにすべてまかせる 家政婦は見たけどなにも言わないですべて許して天国へゆく

        2024年4月の連作、4つ

          2024年2月の連作、4つ

          したい デジカメで撮った写真が多すぎて少し整理をしてあきらめて からくりは知らないけれどあてにして晴れの予報で予定をたてる すかしてたわけではなくてマスコミに踊らされても踊れない僕 見たくなる夢もあるって知らないと目を閉じているだけで寂しい やわらかい毛布のようなベランダで奇跡のような昼寝がしたい 昨日の続き 始まりと終わりがちゃんとすることはなかなかなくて昨日の続き とどまると邪魔になるから顔を上げどこかへ向かうふりをしている 木は森になっても静か集まると人は話をしな

          2024年2月の連作、4つ

          自選短歌 2024年2月

          すれ違う自転車が知る風景をわたしは少し前に見ている くるくるとフォークダンスをつつがなく踊ったあともひとりで帰る 腹が出て膝が弱って音痴でも最新版で完全体だ 折るうちに端と端とがずれてゆくわたしが神でなくてよかった 素うどんにのせられているかまぼこに俺は好きだと言ってやりたい この世では社長じゃなくて会長のほうが偉いといつ気づいたの 普通より不良がもてていることをわかったうえで僕らは普通

          自選短歌 2024年2月

          2024年1月の連作、4つ

          よこがお 雨ならば音がするけど雪だからふと見たときにもう降っている 幼さをわざと残したままにして生き抜いてきたクリームパンは 溶けきれず残る砂糖にお湯を足し足りない味の名のないなにか 忘れたりしませんからと言うように来なくてもいいメールが届く よこがおをつるりとなぞるようにして少し若さを盗みたかった 神さま 晴れたときやりたいことが決まらないそれでも雨が続くのはいや ちょうどいい感じにいつもなれなくていじれるものをいじってしまう 計画をちゃんと誰かがたてたからまっすぐな

          2024年1月の連作、4つ

          自選短歌 2024年1月

          視界にはいつもとがった角がありサイは悲しみ以外知らない 縫うための針はないのに引き出しの奥にたまっていく補修布 空っぽの丼を置きふたをしてカツ丼になれと祈るほど暇 お湯で溶くタイプのクラムチャウダーで今日も満足できてしまった のりしろをはみ出すほどにのりをつけ信じることが苦手なわたし 権力の犬にならない権力はどうせわたしを飼ってくれない 春といえど歌いながらは来ないのであれはおそらく酔っぱらいです

          自選短歌 2024年1月

          12月の連作、5つ

          大掃除 さまざまな人の思いを受けいれる余裕はなくて整理整頓 伝えたいことはどれだけあったのか向きを変えれば薄い奥行き めずらしい石ってだけじゃ宝石と呼ばれないってそりゃそうだけど この家の見えない場所で腐りだす水がいるから助けなければ 古い木の家には古いものばかりいつまでも終わらない大掃除 バッカス どう見てもひ弱な僕がプロレスは受けの美学と熱く語って 日本酒は苦手だけれど湯で薄くすれば飲めると結局飲んだ 音痴だし声も変だと気づいてもさらに惰性で歌い続ける バッカスは酒

          12月の連作、5つ

          自選短歌 2023年12月

          わたしにはスイッチはないちょっとずつやる気をためてやっとがんばる そのときになんのつもりになったのか忘れたのだが確かに浮いた 細い木や洗濯物がなかったら風の強さに気づかなかった 復讐を誓う我らは無差別に人をさらって編みぐるみにする 宮殿の夜の深さをくどくどと語った近衛兵士の幽霊 平凡を受けいれるのだ特別は金がかかると知ったからには のぞいたらいない誰かの足があるそんな気がしてのぞかぬ炬燵 屋根裏で鳴いていたから見てみたらそこにいたのがこの馬連です

          自選短歌 2023年12月

          11月の連作、4つ

          クロワッサン スカスカのクロワッサンをぶつけられ呪いが解けた鼻毛が消えた ラーメンになれるとしたら出汁がいい?具がいい?麺になるのはなしで パン屑になればパンより長いことここにいられて屑でよければ 猫ゴリラ着物の娘コロボックル棚に並べて君らは家族 無意識に眠りを奪いあいながらまだなりたいの不老不死に 仏壇 いつからか仏壇があり向こうから見られぬようにそっとのぞいた 外国のお菓子を置いて仏壇に霊の気配は感じなかった 調べたらわかるのだけど仏壇がいくらするのか知らずに過ぎた

          11月の連作、4つ

          自選短歌 2023年11月

          ほつれてる袖をどうにかしたいけど今は両手がふさがっている 二番目のママは人造人間で愛はないけど差別もしない サムライの頭はみんなカツラですおしり脱毛だってしてます 意図しない音が鼻からヒーと鳴る先祖は風の神かもしれない 退屈な会計監査はあとにして舞踏会とかしちゃだめですか さえざえと続く夜道がいつになく長くてきっと故郷への道 あの猫は喧嘩以外じゃ鳴かなくて用心棒の貫禄がある ※「サムライの~」の短歌は「鬘」を「カツラ」に改作しました。

          自選短歌 2023年11月

          10月の連作、4つ

          迷う 今空を見るときれいな満月が見えると聞けばわたしは迷う さえずっているのはどんな気持ちかな僕はだいたい黙ってしまう 漬けられた梅酒の梅は悟るしかないとどこかで思うのだろう スポーツは美しいのか人間が獣のまねをして吠えるのは へらへらと戦争がゆく本当は貧しいくせにいい服を着て 照らす 落ち着いていてもいいのに方角がわからないって気づくと気になる まっすぐが僕のからだにないことをわかった上で直立不動 まだ僕が生きているなら幾重にも重ねられたりするのはやだな 真実を照らせ

          10月の連作、4つ

          自選短歌 2023年10月

          さびしくて眠れなくてもいいじゃない答えのでない問いは尊い 臨月のおまえはまるまる膨らんでなにを産むのか教えてくれない いちかけるいちかけるいち累乗が空回りするように秒針 選ばれた切手に意味があったって同窓会で言われましても 結納を済ませたあとで気が変わりあとは自由に生きるしかない さようなら僕はこれから坂道を転がってゆくそうしたいから

          自選短歌 2023年10月

          自選短歌 2023年9月

          生涯のホームラン数ゼロ本のわたしが今日は喪主をつとめる スリッパの中に隠れていたものの脚の多さを指が感じる 朱鷺という鳥の話を聞きながら眠り薬を飲まされている 神がかると見たい能代湖、過去の子か?殺しの痛み取る鏡か (かみがかるとみたいのしろこかこのこかころしのいたみとるかがみか) どうしてもいるものだけをできるだけ小さくまとめてみたら赤ちゃん システムの直しきれない脆弱性を試しにやさしさと呼んでみる

          自選短歌 2023年9月

          8月の連作、3つ

          自由意志 見えないし気にしていない背中でもかゆくなったらかかなきゃいけない 従順に髪を切られているあいだ目の前にある大きな鏡 飛べるのかわからないのに飛んだのは後ろの人に押されたのです 耐えられるぐらいの軽い裏切りが迷路の奥へ奥へと誘う 目についたものにつられてついてゆくわたしの頼りない自由意志 靴下 靴下の消えてしまった片方をあきらめるまでしばらくかかる 靴下はいちども生きていないのに死んでしまったみたいに見える 靴下のゴムがゆるくてずり落ちてまるまったのがそこにあり

          8月の連作、3つ