2024年5月の連作、4つ
夢ではない
わたしにも寝顔はあると心配で部屋には鍵をかけてしまった
長靴に雨が入ったときわかる裸足になれぬわたしの弱さ
懐かしい甘さも実は罠だとははっと気づけばキャベツ人間
ピクルスはいてはいけない人たちに送った招待状のたくらみ
目が覚めて夢ではないと迷わずに気づいた朝は年をとります
いいんじゃないか
成功はしたが卒業文集の夢と違ってなんか気まずい
脱げたまま置いていかれた片方の靴の群れではなくて枯れ葉が
花はすぐ色がくすんでしまうから造花に変えたことを忘れて
雨だけど本もノートもないときは傘がなくてもいいんじゃないか
新しい女王蜂がワンオペで作り始めた巣をすぐ壊す
五月の光
何度でも五月は若いままで来て声を出すのも僕はためらう
太陽は清らかだけど意思がないプラスをやがて越えるマイナス
あのへんで火事が起きたと聞かされてそっちを見たら煙が見える
想像のしっぽは動かせないけれどつかまれるのは嫌な感じだ
はしたないぐらいに好きでいたことも昔のことで五月の光
飛行機雲
五十年たっても同じ体形を維持しているかのごとき母校よ
百歳で僕が死んでも変わらずに運動会は年に一回
大空になにか言っても無駄でしょう鳴るたび消えてゆく大太鼓
一枚の空に残った結果論飛行機雲が十字を描く
田んぼからラブホが生えてきたけれど道が見つからなくて行けない
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