2024年4月の連作、4つ

インスタグラムに投稿した、2024年4月の4つの連作です。

自省

とびかかる猫の動きの先にいた獲物はちょうど陰で見えない
変わらない愛はあるのかてのひらにおさまるものはひと口サイズ
目玉焼きの目玉をいくら増やしても命の数はゼロでよかった
内臓が夜中も低くうめくのだ正論なんて魔除けのおふだ
進んだらもっと先まで見えてきて進捗率は一生二割

ぷちり

物置きはいくらか人をだめにして刈り込みバサミばかり四つも
不機嫌な羽音をたてているけれどあとからここに蜂が来たのだ
リニューアルしたとおぼしき美容院の二階に古いままの看板
食パンの一番安いやつを買う安い味だがちゃんと許せる
この木にもきれいな花が咲くようにぷちりと指で虫をつぶした

庭を引きつぐ

すぐそばに庭があるのに花を見ることもないまま一年近く
ときどきは誰かがなにかしなければ森ではなくて庭なのだった
伸びすぎた枝を切るときやり直すことのできない一線はどこ
花をよく見たことのない庭の木のつぼみのようなものを見ている
春に咲く花が春には咲くように咲かなかったらまた次の春

揺れている

花のあと種が散らばる野の草の花を許せばすぐ草だらけ
うじゃうじゃと隙間から出るたんぽぽの舗装の裏も広がる野原
いくらでも姿を変えて生えてくる土さえあればまた生えてくる
笑ってはいないだろうか本当に風が吹くから揺れているのか
日のあたる石のところで居心地のいい顔をしてトカゲが止まる

※「庭を引きつぐ」は短歌連作サークル「置き場」第2号に掲載された連作です。


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