12月の連作、5つ

インスタグラムのアカウントに投稿した、12月の5つの連作です。

大掃除

さまざまな人の思いを受けいれる余裕はなくて整理整頓
伝えたいことはどれだけあったのか向きを変えれば薄い奥行き
めずらしい石ってだけじゃ宝石と呼ばれないってそりゃそうだけど
この家の見えない場所で腐りだす水がいるから助けなければ
古い木の家には古いものばかりいつまでも終わらない大掃除

バッカス

どう見てもひ弱な僕がプロレスは受けの美学と熱く語って
日本酒は苦手だけれど湯で薄くすれば飲めると結局飲んだ
音痴だし声も変だと気づいてもさらに惰性で歌い続ける
バッカスは酒の神さま神さまを最初に見たと言ったのは誰
気がつけば知らない駅に僕はいて運命じゃないただの間違い

アメリカ

靴下の片方だけに穴があき平等という理想と現実
引っ越しをしたと葉書を送ったら宛先不明で戻されてきた
石屋には大きく舌を出し笑う親しみやすい石製の犬
花束は人から人へ手渡しで渡すサイズにおさまっている
(これは夢)アメリカ行きのバスに乗り角を曲がれば謎のアメリカ

寝る

遠くからここまで風は吹いてくるほかにはなにも届かなくても
会議などしてる場合じゃないときも会議以外にすることがない
視界からはみ出すほどにでかいなら見えないことにしてしまいたい
餌じゃないと主張するのが難しい無理なく口にはいる大きさ
ぶわぶわの羽毛布団にもぐりこみ次のなにかが起きるまで寝る

午後眠い

友だちになれるとしたら人間に見えないようなロボットがいい
どしゃ降りのあとも絶滅していない蟻ってやつは油断できない
悪いことしても捕まらない人も捕まる人もホモサピエンス
寿命だと誰かが告げに来たときも地図を見ながら迷っていそう
午後眠いわたしにかつて勢いがあったかどうか聞いてどうする

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