【レビュー】『先制点が持つ意味』~第21節ファジアーノ岡山VSヴァンフォーレ甲府~

全文無料公開。面白いと感じていただけたら、投げ銭150円やスキ、RTやいいねをよろしくお願いいたします。

スタメン

画像1

ファジアーノ岡山
・フォーメーションは4-4-2。
・DF宮崎智彦とMF徳元悠平がコンディションを整えて、第19節琉球戦と同じスタメンに。
・13試合ぶりに帰ってきたFW齊藤和樹はベンチスタート。

ヴァンフォーレ甲府
・フォーメーションは3-4-2-1。
・前節からのメンバー変更はDF浦上仁騎→DFメンデスのみ。
・MF野津田岳人の左足、MF泉澤仁のドリブルには注意したいところ。


相手の懐に潜る攻撃

 1-3と敗れて2連敗を喫したファジアーノ岡山だったが、決して悲観しすぎる必要はない。相手は違うが、京都戦よりも攻撃の形を作り、確実にゴールに迫った。

 相手のスキを突いて攻めていく攻撃が受動的な攻撃なら、自ら相手のスキを生み出して攻めていく攻撃は主体的な攻撃となる。この試合では1点しか奪えなかったものの、主体的な攻撃ができていたと言える内容だった。

 主体的な攻撃を可能にさせた要因はライン間への侵入だろう。FW上門知樹が相手のライン間(DFとMFの間)で縦パスを引き出すシーンがいつも以上に多く、相手の懐に潜ることに成功していた。相手の懐に潜ることで、相手の意識を集めて、空いたサイドに展開して攻めていく。懐に潜ることで相手のスキを生み出そうという狙いが感じられた。

 潜る動きをしていたのはFW上門知樹だけではない。Jリーグ100試合出場を達成したMF宮崎幾笑もその一人。背番号10は積極的に内側に入り、積極的にライン間や脇に潜るプレーを見せていく。

 開始早々にボランチの脇でパスを引き出すと、ゴールを目指してドリブル開始。十分に相手を引きつけて外から上がってくるDF廣木雄磨にパス。DF廣木が1タッチでマイナスのクロスを入れて、FW川本梨誉が合わせるも、相手のブロックによって防がれた。

 ゴールこそ奪えなかったが、懐に潜ることを起点にサイドを使ってゴール前に迫っていく形をいきなり演出。スピード感の溢れる連動した攻撃をあいさつ代わりに見せた。

 その他にも3分にはMF白井永地がライン間のFW上門知樹へ鋭い縦パスを通して、その落としをMF宮崎幾笑が3人目の動きで潜っていくチャンスもあった。

 ライン間に潜っていくオフザボールの動きとそのタイミングを見逃さずに差し込む縦パス。主に受け手は2列目の選手が、出し手はボランチの選手が担当。彼らの意志が連動したようなプレーを多く見れた試合だったため、中央でのコンビネーションが向上していることを感じ、今いる選手の特徴をさらに引き出せそうな嬉しい予感がした。


試合を難しくさせた先制点

 試合の入りはワクワクさせるものだったため、ホーム3勝目となる勝利を期待したが、甲府がそれをさせてくれなかった。

 今シーズン先制された試合での勝利はない。つまり、自分たちでひっくり返す逆転劇を演じれてはいない。勝利した試合は先制して逃げ切るものばかり。先制後に、守備の強度を上げるシステム変更を行い追加点を狙う。リードで握った主導権をフルに生かす戦い方だ。この勝ちパターンを実現させるために、今の岡山が勝つためには先制点を与えないことが重要になる。

 しかし、甲府に先制点を与えることになる。29分に、相手スローインをクリアしたボールがMF鳥海晃司へ。MF鳥海はコントロールして、くるりと小回りの利いたターンで岡山のゴールに向かってきた。このエリアは岡山の選手が多く、、MF鳥海にとっては数的不利な局面にもかかわらず、単独突破を図ってきた。虚を突かれたMF白井永地とDF安部崇士、DF宮崎智彦でMF鳥海のドリブルを止めようとするが、MF鳥海を倒したファウルと判定される。

 このファウルで与えたゴール前でのフリーキック。MF野津田岳人の左足から放たれたボールは壁を越えてゴールに吸い込まれるように飛んでいく。GK梅田透吾が懸命に飛び、手をいっぱい伸ばしてボールに触れようとするが及ばず。欲しかった先制点を奪われた。

先制に成功した甲府は岡山の出方を伺うように5-4-1のブロックを組んで守備を引き締めた。パスの出所を読んで入ってくる縦パスを狙いながら、懐に潜られても追い出す、あるいは前を向かせない守備を徹底。岡山のやりたいことをやられた印象だった。

 48分にはDF新井涼平のロングフィードに抜け出されたDF関口正大の折り返しから、MF泉澤仁に決められて2失点目。ボールホルダーに一瞬プレスがかからないところで盤面をひっくり返されるような攻撃をゴールに結びつかせてしまった。

 1点を追いかけられるチームが1点を追いかけるチームを上手く出し抜いた形に。この2失点目が重くのしかかることになった。


頼もしい背番号18の帰還

 54分にMF宮崎幾笑と交代して右SHの位置に入ったMF齊藤和樹。13試合ぶりの復帰となったFW齊藤が勢いをもたらしていく。

 ドリブルで右サイドの深い位置に侵入したり、左サイドからのクロスに迫力を持って飛び込んだりと背番号18が持つパワーをどんどん発揮。ゴールを目指して突き進んでいく姿は、相手を寄せ付けない重戦車のよう。守備では前から激しくプレスをかける強度、相手ボールになった瞬間に奪いに行く切り替えの早さを発揮。攻守において強くて頼もしいFW齊藤が帰ってきた。


終盤に見せたサイドから侵略するような攻撃と諦めない姿勢


 そんなFW齊藤と同じタイミングで投入されたMF木村太哉も左サイドからドリブルで局面を打開しようと奮起。懐に潜ることを中心とした前半の戦いぶりから一転、サイドから強引に侵略していく攻撃にシフトチェンジしてゴールに迫った。両サイドからのドリブル突破やクロス。形なんて関係ない。貪欲にゴールを奪うためだけにプレーする。82分にDF井上黎生人がハンドを取られ、そのPKを決められて3点目を献上するが、選手の背中を押すようなサポーターの手拍子を受けて野心をむき出しにした選手たちが意地を見せる。

 90分に右サイドを上がったDF河野諒祐が1対1で仕掛ける。縦への突破を図った背番号16が相手より半歩前に出てクロス。ニアサイドに入ってきたMF喜山康平がヒールキックで中央に望みを託す。これに反応したFW上門が足元に止めてシュートを決めた。

 3点のリードをひっくり返せなかったが、ギアを上げて相手を押し込み、一矢報いるゴールを決めた。その直後もMF木村の突破からのクロスをDF河野が合わせるなど最後まで諦めない姿勢を見せた。

 試合に敗れたことはもちろん悔しいが、最後まで勝利を目指して戦う。スタジアムと一体になってゴールに向かって行くことができた岡山はまだまだ強くなれる。若い選手が多かったり、自分たちで試合を難しくさせる部分があったりと、チームとしての若さを感じるが、そんなチームと一緒に成長していきたいと素直に思った。良いプレーを結果に繋げていけるかという部分に注目して、次節を見ていきたい。


ハイライト


コメント



ここから先は

0字

¥ 150

読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポート資金は遠征費や制作費、勉強費に充てさせていただきます!