【レビュー】『次節に繋げたい勝点1』~第25節FC町田ゼルビアVSファジアーノ岡山~

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スタメン

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マッチレポート

両チームの”うれしいゴール”で痛み分け

 大雨が降る中で行われた一戦は、ロングボールを背後に蹴り合うシンプルな戦いで幕を開けた。最初のチャンスは町田。3分にサイドに流れた中島のクロスを長谷川がマークのズレを突いてヘディングシュートを放つも、ボールは枠の外へ。5分には、吉尾のFKを水本が飛び込みながら合わせてゴールネットを揺らしたが、判定はオフサイド。岡山が統率されたラインコントロールでピンチをしのぐと、徐々に押し返していく。デュークへのロングボールを起点にしながら前進を図り、パウリーニョによるセカンドボール奪取で主導権を握る。デュークは馬力のあるプレッシングからボールをかっさらってシュートを放ち、宮崎のクロスをヘディングで合わせるなどゴールへの意欲を示した。。互いにロングボールを軸に置く雨の日らしいとも言える戦い方でゴールを目指すも、DF陣の縦に入るボールへの集中した対応を上回ることができず。スコアレスドローで前半は終了した。

 後半にペースを握ったのは岡山。前半同様にデュークへのロングボールとそこから生まれるルーズボールにパワーを費やし、町田にセカンドボールを拾わせない。どころか、町田を陣地に入れさせない。そんな岡山はセットプレーで高さを生かしてチャンスを作る。71分、白井のFKをファーサイドで待っていた安部の枠を捉えるヘディングシュートはGKのファインセーブに遭う。前節決勝点をアシストした安部は今節でも結果を出そうと気合十分。セットプレー時にはキッカーのもとへ駆け寄り、狙いをすり合わせることに注力した。

 攻め続ける岡山が試合を掌握していたかに見えたが、先に試合を動かしたのは町田だった。80分に、前線にロングボールを蹴り、こぼれ球を拾ったドゥドゥがゴール前にクロスを送る。滑りやすいピッチによって手前でバウンドが伸びたボールは宮崎がクリアできず、吉尾のもとへ。粘りながら得意の左足に持ち替えた吉尾のシュートはGK梅田が右手で弾かれるも、こぼれ球を太田が押し込んだ。8月11日に長女が誕生したばかりの太田が娘に捧げるゴールで町田が先制。チームメイトはゆりかごダンスで祝福した。

 攻め続けて町田にシュートを打たせていない状況の中で一発を仕留められた岡山。自分たちの時間に決めきれなかったことが悔やまれるが、勝点への執念は途切れてはいなかった。相手の間に立ち、落ち着いてパスを繋いで前進することで、先制に成功し勢いを増す町田をかわしてゴール前へ。84分に濱田を投入し、フォーメーションを[3-4-2-1]に変更。よりデュークの近くに選手を配置し、サイドの選手を高い位置に押し上げることで攻勢を強める。

 最後まで諦めない姿勢を貫いた岡山に待望の瞬間がやってきた。87分、左サイドで木村が切り返して右足で送ったクロスを、デュークが相手の前でジャンプ一番。相手の前に入り、頭を振り過ぎることなくしっかりとクロスボールを捉えたデュークのヘディングシュートがゴール左隅に決まり、岡山が土壇場で追いついた。

 勝点を1から3にしたい両者は貪欲にゴールに迫り続けるも、試合は1-1で終了。町田はホーム4連勝がこぼれ落ちた。一方の岡山はアウェイで追いつき、勝点1を獲得。”期待の新戦力”デュークにうれしい移籍後初ゴールも生まれ、充実した内容だったが、攻め続けていた後半中盤に得点を奪えなかったことが課題として残る試合となった。

 次節は町田がアウェイに乗り込み降格圏に沈む北九州と、岡山は中断明けで2分と徐々に霜田監督のサッカーが馴染みつつある大宮をホームに迎え撃つ。(文・写真 難波拓未)


コラム

クロスの質を高めるべく変わった意識

 この試合の貴重な同点ゴールは木村太哉のクロスから生まれた。ミッチェル・デュークが加入して、いままでよりもクロスからのチャンスに期待が高まる岡山の課題はやはりその質。ターゲットマンとして絶対的な存在感を放つ背番号19を生かすも殺すも供給されるクロス次第とも言える。前節に続き、河野諒祐が多くのクロスを供給しチャンスを演出しようと試みたが、成功率は0%と寂しい結果となってしまった。しかし、河野はデュークが得意とするニアサイドを目がけてギリギリのボールを送り続けた。精度はまだまだ向上の余地がありそうだが、意識は明らかに変わっている。アバウトなクロスではなく、中で待つ選手の特徴を生かそうとする狙いがハッキリと感じられた。意識に精度が伴って、右サイドから質の良いボールが多く入るようになれば、デュークの得点は増えて相乗効果のようにチームの総得点数は上がっていくはずだ。(文・写真 難波拓未)

練習で身につけた手応えを囮に

 そんな中で結果を残したのは木村。政田での全体練習が終わると、コーチを呼び出し、ドリブルからのクロスを重点的にトレーニング。縦に突破しスピードに乗りながらの左足でのクロスを何本も蹴り続けた。ストロングポイントであるドリブルからの突破。相手を抜くことが目的ではなく、ゴールに向かって行くためのドリブルにするために、縦に突破してからのクロスの精度を上げることで、縦の威力を強めていく。練習での成果を確かめるように果敢に縦に仕掛けた背番号27は、確実に左サイドで優位に立っていた。マッチアップした三鬼がファウルをするほど、脅威を与えた縦突破がアシストになったクロスの布石になったのかもしれない。縦突破を警戒した三鬼のプレッシャーが弱まった瞬間を見計らっての右足でのクロスが得点をもたらした。練習で手ごたえを掴んだ縦突破からのクロスを囮にした木村のプレーが敵地で貴重な勝点1をもたらし、彼の中での自信がより深まったに違いない。

(文・難波拓未)


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