【勝因】『前進の潤滑油となる高精度のレイオフ』~J2第27節ツエーゲン金沢VSアルビレックス新潟~

試合結果

2022 J2 第27節
7/16 19:00K.O. @石川県西部緑地公園陸上競技場
金沢(0-3)岡山
29分 高宇洋
48分 鈴木孝司
82分 鈴木孝司

試合を選んだ理由

ファジアーノ岡山が次節に対戦するアルビレックス新潟がどんなサッカーをしているのか。なぜ首位なのか。偵察の意味を込めて選びました。

スタメン


前進の潤滑油となる高精度のレイオフ

終始、新潟がボールを保持するゲームでした。

金沢がプレスをかけることなく[4‐4‐2]で完全にリトリートしたため、ハーフウェイラインに近い場所で新潟のCBがパス交換をするところから試合が展開されていきます。舞行龍ジェームズ、田上大地の優れたパス出し能力、ビルドアップの出口となる両SBの巧みな立ち位置、狭いスペースでもボールを失わない2列目の選手のスキルなど、新潟のビルドアップにおける良いところを挙げればキリがありません。

自陣に引いた相手に対して特に効果的な前進手段となったのが、レイオフです。レイオフとは、楔のパスを受けた選手がサポートする味方に落としのパスをワンタッチで出して、前向きの選手を使うプレーのこと、と定義します。

金沢が自陣にブロックを作ったため、背後のスペースはありませんし、CBの選手がボールを回している状況です。受け手の選手は下がり相手ゴールに背を向けてパスをもらう動きがオーソドックスですが、これは相手に脅威を与えることができません。なぜなら、攻めるゴールから遠ざかりながら背を向けているからです。守る側としてはゴールに向かってくる怖さがないので、パスが出るタイミングでガツンとアプローチに行きやすい。

しかし、新潟は高精度のレイオフを巧みに多用します。基本はCBから最前線の鈴木孝司に縦パスが入り、鈴木が相手を背負いながらワンタッチで落とす。これを高木善朗や島田譲、伊藤涼太郎がレシーブしてゴールに向かっていきます。パスを受け取った選手は前を向いている状況で、鈴木は少し下がって縦パスを落としているのでCBの1選手を引き付けている。相手DFラインが凸凹になったことで生まれたスペースに飛び出していき、ゴール前でスルーパスを受けていました。

3分に舞行龍の縦パスを鈴木が落とし、これをレシーブした島田からのスルーパスに抜け出した高木が右サイドの深い位置に進入しました。18分にもCBからの縦パスを鈴木がフリックし、伊藤のスルーパスに抜け出した松田詠太郎からのクロスに伊藤が自ら入っていくも、わずかに合いません。
29分の先制点はレイオフから生まれた得点ではありませんが、相手が警戒したのか、組織として足を止めて瞬間を察知して藤原奏哉がドリブルで持ち出して右サイドをするするっと抜けていくと、松田のパスに抜け出した高木のクロスは相手にクリアされたが、こぼれ球を拾った高宇洋がミドルシュートを決めました。

48分に2点目のPKが入る直前にも鈴木をクッションとするレイオフからゴールに迫っています。82分の3点目は金沢が途中出場の林誠道を中心に攻勢を強めていた時間帯に生まれました。途中出場の小見洋太がプレスのスイッチを入れて、鈴木が連動することで金沢のCBにパスミスをさせる。パスカットした高からのスルーパスに抜け出した小見が左サイドから入れたクロスを、鈴木が押し込みました。

レイオフがゴールに直結することはありませんでした。しかし、引かれても相手を釣り出て前進することができたのは間違いないです。CBから鈴木に縦パスを当てることはほぼルール化していると思いますが、鈴木選手の落としをレシーブする選手は決まっていません。選手それぞれが周囲の状況を把握して落としを受けに入っていく。そこに被りがない。チームで同じ絵を描けているからこそ、連動性の高いレイオフでの前進が可能なのでしょう。

レイオフの体制に入るときに素早くトライアングルを作るとか、後ろだけでなく横のサポートにも入ることで選択肢を増やすなど決まりや工夫はたくさんあると思います。ここでは言及しきれませんが、止める、蹴るの技術が高い選手たちが集まって連動すると、恐ろしいほどスムーズに敵陣に、ゴール前に入っていけるんだなって感心してしまったほどです。レベルの高さには驚きました。

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