見出し画像

転職エージェントが感じたコロナ禍の1年間での転職活動の変化(求職者と企業)

もうすぐ昨年4月に都内で緊急事態宣言が発令されてからコロナ禍のまま1年が過ぎています。1年間で転職市場への影響も大きく選考方法やそれに伴う面接の通過率なども変化してきました、またおそらくこの変化によって採用工数の削減というメリットがあったためコロナ禍が終わっても全てもとには戻らず今後も続く可能性が高いです。そのため改めて今年1年間でどういった変化があったのか、企業側と求職者側でまとめてみました。


①求職者側の変化

・転職のハードルが下がり求職者が増えた

コロナ禍以前から日系の大手メーカーの業績悪化が目立つ中で終身雇用についてどうなっていくのか世の中に漠然とした不安が広がっていたと思います。その中で今回コロナ禍になり大手にいる人も自分は果たして今の会社がつぶれてしまってもやっていけるのか、自分のスキルは他の会社でも通用するのかを知っておきたいという人が増えました。
さらに以下に何度か述べますが多くの企業がオンライン面接を実施するようになったのとリモートワークの人が増えたため、以前よりも選考を受けやすくなっています。求職者数の増加×転職活動の利便性向上により転職活動をすることのハードルが下がり求職者が増えています。

・一度に受けられる企業数が増えた

以前であれば書類選考を通過して面接の段になったら、平日であれば何時から受けられるのかや現在の勤務先と面接場所の距離から何時までが受けられる限界なのか、日中しか受けられない企業の場合は有休をとりその日に他社の面接も併せて受けられるよう調整する等スケジュール調整にも一苦労でした。そのため万が一思った以上に書類通過してしまったら調整が大変になるため応募数をある程度厳選しなければなりませんでした。
しかし上記の通りリモート勤務が進みオンライン面接が普及したことでその心配をする必要がなくなりました。私自身転職面談をしている中で、求職者から業務中にこっそりオンラインで面談していると言われたことも少なくありませんし実際日中の面接が組まれる件数が格段に増えました。ただし多くの企業が受けられるようになったのは求職者側だけでなく企業側も多くの求職者と面接できるようになっているため内定率は変わっていません。
そのためリモート勤務でなく求職者は勤務中のオンライン面接ができない場合は受けられる企業が限られてしまうため、不利な状況になっていると言えます。


・リモート勤務を希望する求職者が増えた

特にリモートでの業務がしやすいエンジニアや事務系職種の方について、リモート勤務を前提に転職を希望される方が増えました。これはほんの一部ですがリモート勤務でなければどんなによい条件でも転職しない人やリモート勤務ができると聞いて転職したのに実際はそうではなく早期退職になったケースもあります。
ただし実際にはリモート勤務の可・不可はそんなに単純な話ではありません。例えば転職直後は会社に慣れるために数か月は本社に出勤、その間に思ったよりパフォーマンスが上がらず出社のままになってしまう。または配属されるチームの業務の都合により自チームだけ出社になるなど様々なケースがあります。そのためリモート勤務を絶対条件にして活動されるのは可能性を狭めてしまう意味でもおすすめできませんが、逆に採用側としてはリモート勤務について全く求人票に書いていない場合応募が減ってしまう可能性がありますので少しでも可能性があるのであれば「リモート勤務応相談」等と追記されるのをおすすめします。



②企業側の変化

・ミドル~ハイクラスの競争率が上昇

採用する企業側の状況の変化としてはミドル~ハイクラスの即戦力人材の競争率が高くなっています。理由としては求職者側の変化で述べた通りオンライン面接が増えたことで受けられる企業が増えたことが一点と、景況感の悪化によりすぐに売り上げを生まない未経験層の採用が減少している点、またリモート勤務の体制が整ったことでそういった早期に売上創出に繋がり自立できる人材の採用優先度が高まりました。リモート勤務になったことでフェイストゥフェイスでの業務管理が難しくなったためそういった細かいマネジメントが必要ない人員の優先度が高まったいるためです。
もともとコロナ以前からハイスキル人材の競争率が高くなっている傾向はあったためそれがより顕著になったものと思われます。一方で若手、未経験人材の競争率は低くなっているため現状の情勢下でも出社体制は変わっておらず育成の余力がある企業にとってはチャンスであると言えます。


・オンライン選考をしていないことで辞退率増

最初に述べた通りオンライン選考が増えてきたことによって求職者毎の平均応募数は増加しています。つまり少なくとも一次面接はオンラインでの面接を前提として多く受けられるつもりで選考に臨んでいます。書類選考が思ったより通過してしまった場合はもちろん志望度にもよりますがなるべく多くの企業を受けられるように企業を絞っていきますので、志望度が同じ出会った場合は必然的にオンライン面接を受けられる方が優先度が高くなります。またオンライン面接を行うためのハードルはそれほど高くないのため、このご時世においてオンライン面接を導入できていない適応力の低い企業として見られてしまう可能性があります。
もし面接辞退率が高くまだオンライン面接の体制ができていない場合はぜひ導入をお勧めいたします。


・選考回数が増えた

オンライン面接が増えたことの変化として選考回数の増加が挙げられます。手軽に選考ができるようになったのは企業も求職者も同じなので、対面と同じレベルで見極めができるよう選考回数を増やす企業が増えてきています。企業によっては一次面接は電話で15分程度行いその後二次、三次と通常の面接を行うという方法をとる企業もいました。
また選考回数を増やすのは採用側の見極めと同時に求職者の惹きつけの側面もあります。接点を増やし実際に働くイメージを掴んで頂くことでオンラインになったことで薄まった求職者への魅力づけの機会を増やすことができます。こちらも企業によっては最終面接の体で実質的には意思確認の面談としてその後別途オファー面談を行うという企業もあります。


③今後どうなっていくのか

ワクチン接種が開始された一方で三度目の緊急事態宣言の延長も検討されておりコロナ禍によるワークスタイルの変化がいつまで続くのかは読めない状態です。一方で今回変動したもののうちメリットしかないもの、またはメリットの方がデメリットよりも多いものについては今後も残っていくのではないかと思います。例えばオンライン面接は企業にとっても求職者にとってもメリットの方が多いため少なくとも1次面接について今後も続いていくのでではないかと思います。その場合求職者側の選考を受けるハードルも下がるので求職者数は増えたままになりますが、コロナ禍が収まり業績が安定化した場合安定を求めて現職に留まる、しかも優秀な方で大企業にいる方ほどその傾向が強くなるのではないかと予想します。そのため今後もミドル~ハイクラス層の競争率は上昇を続けていくのではないでしょうか。

いずれにしても今後の状況の変化に対して柔軟に対応できるような想定をし変化を許容できる体制を整えることが重要ではないでしょうか。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?