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眠れない夜に珈琲を。

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珈琲に関する作品たちです。 あなたの一日に一杯の珈琲をどうぞ。☕
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#珈琲

世界の楽しさ

世界の楽しさ

冷めたティーカップを横目に項垂れている
青年は虚ろな心で分かっている、僕は今大人になるのだ
今眠ってしまえば、弾けるバブルを見ないですむ

かつての大人たちが言ったのだ、全ては移り変わると
シャボン玉は高く飛んで割れる
お菓子は減っていく一方だ
春は冬へ向かうのみで
寒くなったら紅茶も冷める

僕より長いこと世界を知っているから、
世界の楽しさをもっと知っているんだと思ってた
操縦できない特急に突

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君とか愛とかなくていい

君とか愛とかなくていい

君とかあなたとかすぐ言ってお終い
そういう歌が嫌いだった
君に不満はたくさんあるし、あなたに恨みも残ってる
って考えたけど誰一人そもそもいなかった

鬱憤が溜まったからサイドブレーキを思い切り踏んづけてやった
何も変わらなかったけど

愛とか恋とかべらべら宣って知ったかぶり
そういう歌が嫌いだった
イイハナシじゃない、悪い話がききたい
そんじゃ僕の話をきいてくれ

珈琲をこぼしたら眠たくなった

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さみしさが埋められないなら

さみしさが埋められないなら

今月が終わって、うまくバイトを辞められたら、そしてその時になってもまだ辛かったら、眠ってしまおう。
そう思った。
バイトがうまく辞められなかったら、それでも飛び立とう。
そう思った。

いつか夏に来る、精霊たちに連れてってもらって、どうせ何者でもない私なんだから、何に成ることもなくただ存在しない存在として、かつてあった概念としてたゆたっていたい。

誰かからの連絡をずっと待っていることは自覚してい

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ビターな町

ビターな町

気がつけば迷い込んでいた。
スマホの電波も位置情報も迷子で、
見渡せば、喫茶店ばかりが立ち並ぶ
ここは眠らない町。

この町に夜はやってこない。珈琲があるから。
ここの人々は眠たくならない。珈琲があるから。
それを飲まないのなら、眠ってしまえばどうなるのか、
誰もわからない。
ただ、渋のついたコーヒーカップが、ところどころに転がっていた。

「私はこの町に合わない。」
そう言うと私の春は亡くなって

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珈琲とカフェオレ♪

珈琲とカフェオレ♪

おはよう…

珈琲を飲んでる
浅煎りが似合う昼下がり
そこに君が顔を出す
君の手の中には角砂糖

君の肌と見紛うような
ミルクを少し注ぐ
真っ黒い世界がほら少しだけ明るく

珈琲とカフェオレ
珈琲とカフェオレ
溶けてく溶けてく真っ黒い不安も
白と出会って
混ざりあえたら
解りあえたら
溶けない解けない遂げれないうだつも
少しはあがるかなぁ

PCを触ってる
西向きの窓から夕日
君と二人で作ろう

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珈琲を啜る

珈琲を啜る

珈琲を啜る
あれは、夜が夜でなくなる頃のこと
まだ長い一日に目配せしてはため息
熱い熱いと汗をかくグラスの横で葉巻を吹かせるカップ

珈琲を啜る
珈琲は啜られる
僕に啜られる
隣の彼女に啜られる
斜向かいの老人に啜られる
啜る音だけが反響し
それはこの場所に特異的な強迫観念を生み出した
啜らなければいけない
僕は珈琲を啜らされているだけかもしれない
あるいはこの喫茶に
あるいは、珈琲自身に

珈琲

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春の朝、珈琲の香り、情景。

春の朝、珈琲の香り、情景。

春、珍しくアラームが鳴る前にスッキリと起きられた。
早起きして歩く町はいつかのアルバイトの匂いがした。

郊外の大きな工場
大型トラックの排気ガスの臭いと騒音
庭木を剪定する老人
どこかに繋がっている畦道
バスケットゴールが置いてある庭
小さな祠と四阿屋
群生するカンサイタンポポと頭上にクマバチ
やけに飛ばして横切る車
雲上の飛行機の音
ヒバリの鳴き声とツバメの旋回
舞い散る桜吹雪と桃色カーペット

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「珈琲」 序文

「珈琲」 序文

珈琲が好きだ。
珈琲が死ぬほど、いや、生きるほど好きだ。

生きるために好きだ。

今朝も今夜も、毎朝毎晩私は飲む。

起きるために。
眠ってしまわないために。

今日も私は、珈琲を飲む。