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地図は雰囲気で読むタイプ

私は地図がうまく読めない
いやちゃんと読んではいるんだ

駅を降りてコンビニを目印にその先を右に…
あっと言う間に地図に載っていない道へ出る
不思議だ、ワープしたとしか考えられない

さっきまで無かった道が急に出現したり
看板が変わっていたり通せんぼするように壁が現れる
誰かが私が歩く道を先々に瞬時にいじくってやがる
そう思うことがよくある

「またやってるな」
といたずらをする誰かによく言う

私も馬鹿では無いから克服しようと調べたこともある

平面で見るのでは無く立体的に見てみましょう
鳥の目線で上から見るように3Dで…

何を言ってんだか全くわからず5秒で挫折した
この文章を解読するための解説が必要だ

先日も行きたい雑貨屋をネットで見つけて
電車に乗って少し遠いけど行ってみた

この辺りのはずなのにその店は無くて
ホームページを改めて見ても場所はあってるのに
閉店したとも書いていないし

その周辺を一時間近くうろうろと何週もして
結局見つからずにのこのこと帰って来た

家に帰ってネットでもう一度調べてみる
住所を入れてストリートビューを開けて
さっきまで歩き回っていた道を見た

最初にここだと思った場所の背後に
隠れることも無く堂々とその店は立っていた

私よなぜ気付かなかった?
振り返ればそこにあったでしょうよ?
何度もそこを通ったはずなのになぜ?

「またやられた」と完全に敗北を認めて
その日はスナック菓子を暴食した

そんな私だから初めての場所へ行く時は
誰かと待ち合わせする時などは特に
いつもより早めに着くようにしていた

ある日大学の時の友人から飲み会をしないかと誘われた
卒業してからみんなバラバラになり
新生活に追われる日々も少し落ち着いた頃だった

久しぶりに会える友人もたくさん来ると聞いて
二つ返事でオッケーをした

その当日
19時待ち合わせで18時には私は最寄り駅に着いていた
とりあえず先に店の場所さえ見つけていれば安心だと

改札を出て左、ロータリーの奥にある商店街
二本目の右への脇道を曲がると看板が見えるそうだ
「迷」と言う名の居酒屋

これだけでも私にとってはかなりの難所だとわかる
しかも「迷」って店の名前は不安しか無い

地元のお店らしくホームページは無く
事前に見たストリートビューでは脇道に入れなかった

まぁ最悪駅で待っていれば誰か来るだろうし
電話して迎えに来てもらえればいいのだ

だがこの高難度のミッションに打ち勝ちたい自分がいた
「迷」と言う店を見た時、これは挑戦状だと思った

やられてばっかでいてたまるか、と
ほれ見ろやれば出来るんだぞ、と
意気込みだけはいっちょまえに

先に結論を言っておこうか
案の定いつも通りに「やられた」のではあるのだが

商店街を行ったり来たりとぐるぐる回って
同じ店が右にあったと思ったら目の前に現れたり
ついには駅がどっちかさえもわからなくなる有様で

ただ辿り着きはしないながらも
さんざん迷ったことでプラスな面もあったりする

今日来る誰よりも私はこの街に詳しくなっていた
例えば至る所に見かけるキツネのイラスト
目つきの悪いこの街のご当地キャラさえ覚えてしまった

結局駅で誰かを待つことにしたら
友人からすぐにメールが入り
「お店行くの迷いそうだから一緒に行かない?」と
こちらこそ願ったり叶ったりだ
結局4人ほどで集合して向かうことになった心強さよ

久しぶりに会う顔にわちゃわちゃしながら
ロータリーを抜けて何度目かの商店街へと入る

すると一人が
「コンビニ寄りたいんだけどこの辺あるかなー?」と口にした

私はそれならと
「もうちょい行ったところにファミマあるよ」と答える

コンビニに向かっているとまた違う人が
「まだ時間あるよね、100均あれば寄りたいんだけど」と言うから

「そのカラオケ屋の隣がダイソーだったと思う」と指さした

「この辺来たことあるの?」
「いや、初めてだけど」
「初めてにしては詳しくない?」
「そ、そうかな?」

迷うのを見越して早めに来ていた
なんて恥ずかしくて言えずに、
しかも迷って往復していたから覚えてしまった
なんてのも素直に言えず

「昨日ストリートビューで見て来たから」と言い放つ
なんでここで嘘をつく必要があるのか私にもわからない
こんな性格なのだから仕方ない

みんなその答えに納得して、それぞれの用事を済まし
時間もちょうど良く、目的の店へと向かうことにした

一番後ろから着いて行こうとしていたはずなのに
金魚のフンみたいに背中を追うだけだったはずなのに
いつの間にかみんな私に道をまかせて後ろにいる

さて困ったぞ?想像してた計画と違うぞ?
このまま道連れにして歩き回るのか?
いや素直にわからないと言えばいいだけだ
ただそれだけのことに勇気を振り絞っていた

「あれ?迷ったかもー」声に出してそう言った
「いやあってると思うよ、まっすぐ行ってみよ」
そう言われたものの、この道は三回は通ってるはず

見落としているのなら誰かその店を見つけてくれ!
と祈りつつ脇道をまっすぐに歩いていたら

「あれ、どこ行くの?」と正面から知っている顔
大袈裟じゃなく救世主だと思った
なんなら七色のオーラが輝いて見えた

たまたまそこに今日の幹事が通りかかって
声をかけてくれなかったら

また同じ場所をぐるぐると
みんなを巻き込みながら
回るはめになっていたのかもしれない

道の端っこに立てられている看板
そこに描かれていたキツネのキャラと目が合った

私のことをもて遊んでいるやつは
きっとこんな顔をしているに違いない

幹事は「店ここだから先入ってて」と指を差し
駅の方へと向かおうとしている

「あれ?どっかいくの?」
「バスで来る人がいるんだけどバス停が見つからなくて」
「あ、それなら…」と場所を教える私

今日に限って言えば
先に来て迷ったことは
あながち無駄ではなかった

「ざまあみろ」と言いたくてキツネの方を見ると
看板からその姿は消えていた


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