非日常とは一体何なのか③ー明らかになったその全貌ー
非日常とはいったい何なのか。
私は、この問いに対する答えを明らかにすべく、様々なミュージアム(美術館・博物館)や、その他の非日常的空間を訪れて注意深く観察し、また調査・研究を重ねた。
その全貌は日々発見を積み重ねる中で少しずつ明らかになっていき、最終的に1つの構造・図式の中にまとめることができた。大変複雑な内容であり、ぱっと見ただけでは何のことかさっぱりわからないだろう。しかし、今この時点で、先に結論を明確に提示しその後で、このような結論に至るまでの調査、発見の過程を、順を追って説明していきたい。
非日常の正体とはいったい何だったのか
非日常とはエネルギー発散である。私たちは集団に所属したいという方向性(日常的)と、様々なしがらみから自由になって遠くへ飛んでいきたいという方向性(非日常的)の2種類のエネルギーを持っていると考える。私たち個々人は、集まって集団を作り、社会という仕組みの中で生活している。
そこには、日常と非日常のサイクルを繰り返す構造があり、私たちはその中で生活しているのだ。安定した日常に身を置いて生活してはいても、非日常へ向かうエネルギーは非日常的な時間・空間でしか発散することができない。このエネルギーを発散できずにいると、たまりにたまったエネルギーはある時に爆発的に放出される。
非日常へ向かうエネルギーのみが使われ、日常の枠組みがなくなってしまうと、大混乱のパニックになってしまうのだ。そこには理性を失った残酷で狂気に満ちた危険な極限の世界が現れる。
日常生活を持ちつつ、定期的にほどよい非日常に身を置くことが大切なのはこのためである。私たちは日常だけでは生きることはできず、非日常は私たちの生活において必須なものなのである。しかしまた、非日常だけでは安定した生活は成り立たないため、両方のバランスが重要だということだ。
そして意外だったのは、私たちが何気なく手にしている、この安定した日常とは、実は私たちが安全に生活できるように、意図されて計算され、複数の条件がそろうことによって成り立っており、しかしそれは、もろくて不安定で簡単に崩れてしまいうるものなのだということだ。
私たちは普段は安定した日常に身を置き、そこで発散できなかったエネルギーを、しばしの間、一定の限られたの非日常の時間、空間を設けることにより発散して、日々のサイクルを生きているのである。
上記の内容をまとめてみる。
非日常とはいったい何なのか
・日常生活では発散することのできないエネルギーを発散すること
・日常的な枠組みが外れて自由になること
・普段とは違う形で周囲の人と交流している時間・空間のこと
非日常とはどのようなものなのか
・普段とは異なる人間関係が形成されている(完全なる平等・普段とは異なる上下関係)
・日常とは別の世界を生きることができる
・普通であれば存在しえない「奇蹟」の存在を認識する
・普段の世界を超えたその先の世界を垣間見る
・自分自身が生きているということを強烈に実感できる
ほどよい非日常は私たちにどのように作用するのか
・幸せを感じる
・楽しい
・癒される
・道徳的になる
・感動する
・刺激を受ける
・興奮する
どのように分類してまとめることができるのか
非日常のエネルギー発散方法はいくつかあり、下記のように分類可能と考えている。
①ある程度決められた枠組みの中での自由運動・発散
→スポーツ、創作、音楽の演奏、祭り 【当事者が行う】
② 普段とは異なる世界観に身を置き、順列が変わる
→キャンプ、テーマパーク、カフェ、祭り、映画鑑賞
③ 至高者を通して至高の世界を垣間見る瞬間
→スポーツ観戦、芸術鑑賞、文化的な式典、闘牛(生贄の儀式) 【当事者は見ている】
④ 枠組みが崩壊した完全なる自由運動(興奮・混乱)
→暴動、革命、デモ、パニック
日常・非日常はどのような構造をしているのか
こういった内容を最終的に1つの構造・図式の中にまとめることができた。
先述した通り、大変複雑な内容であり、ぱっと見ただけでは何のことかさっぱりわからないだろう。この全体構造は何を表しているのか。どのようにして、この構造にたどり着いたのか。私はこれから1つずつ順を追って説明していきたい。その内容を順番に読んでいただければ、最終的に完全に理解・納得していただけると信じている。
〜最後まで読んでいただき、ありがとうございます!もし内容がよかったと思っていただけたら「イイネ♡」押していただけると嬉しいです!励みになります〜
以下、参考文献
・岡崎宏樹 交流の共同体と合一の共同体―バタイユとジラールの供犠論の比較から
『ソシオロジ』39(3)1995
・近森高明、工藤保則『無印都市の社会学)』2013
・作田啓一『三次元の人間』行路社 1995
・杉本厚夫『スポーツファンの社会学』世界思想社、1997
・出口保夫『物語 大英博物館-二五〇の軌跡-』中央新書 2005
・並木誠士, 吉中充代, 米屋優編.『現代美術館学』昭和堂, 1998
・𠮷荒夕記『美術館とナショナル・アイデンティティ』玉川大学出版部 2014
・G・バタイユ;湯浅博雄他訳『至高性:呪われた部分-不変経済論の試み第三巻』
(人文書院、1990)
・ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳)
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』 河出書房新社 2016
・エレン・ラプトン (著), 須永剛司 (その他)
『デザインはストーリーテリング 「体験」を生み出すためのデザインの道具箱』
ビー・エヌ・エヌ新社 2018
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?