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非日常性とは一体何なのか②ーミュージアム空間から考えるー

ミュージアムを訪れた私はとても不思議な経験をした。それはとても強く印象に残った。
そして非日常を研究するということに対して、私の背中を強く押したのだ。
どのような体験をしたのか、丁寧に描写していこう。

非日常が明らかになるまでのロードマップ

ミュージアムでの振る舞いと無意識の規範

ミュージアム空間に足を踏み入れるときのことを想像してみてほしい。
館内はどのような様子で、あなたはどのように振舞うだろうか?館内のスタッフが目を配り、観客が大きな声で話したり、作品に触れたりしないように見張っている。
何となく静かな、少し緊張感のある雰囲気が漂っており、自然と行儀よく、館内を歩いてみてまわるのではないだろうか。

誰かにそう教わったのか、常識の範囲として無意識レベルで身についているものなのか、周りの人を見て、空気を読んで同じようにそうしているのか。ミュージアムという空間において求められている行動や振る舞いというものがそこには存在し、言わずと知れた共通認識になっている。それを破る者は非常識者として非難されるだろう。

そんなの当たり前だと思うかもしれないが、当たり前でどうでもよいようなことにも興味を持ち、当たり前を疑い、なぜその状況が成り立っているのかを探ると、そんなところに意外な発見があるかもしれない。

深く印象に残ったこと

ミュージアムには様々なモノが展示されている。私がイギリスのロンドンにある世界最大級の博物館「大英博物館」を訪れた時のことだ。そこには小さな子供を連れた家族連れや観光客を引き連れて説明しながら歩くガイド、地元や海外からの学生たち、個人や友人同士で訪れる様々な年齢や集団の人々でにぎやかな雰囲気があった。

しかしそれぞれの展示で、その周りを取り囲み、無言のまま真剣なまなざしで 1 つの対象をじっと見つめる人々がいて、その様子は印象的だった。それは、なにか今まで見たことのないものに興味を持ちじっと見つめるような、そのもの自体がどれだけの価値を持っていたのか、自らの眼で判断するような、また作られた時代や社会や、作った人物、使っていた人々や、その暮らしについて想像しながら感慨にふけるような様子だった。展示室の部屋自体は会話や物音でざわざわとしているのに、展示品の周りにはやはり静けさというか、神聖で新鮮な空気感が漂っているように感じた。

ミュージアムにて深く印象に残ったこと、それは何かというと、その場に多くの人がいるにもかかわらず、1つのモノを取り囲んで鑑賞する際、息を呑むような静寂、全神経を鑑賞することに集中するような「濃い静けさ」を共有していたことである。

モノと人との交流

その場にある展示品1つ1つは、独特の神聖な雰囲気やオーラを持っているのではないだろうか。1つの展示品の前にたたずむ私には、例えば、何世紀も昔に描かれた絵が今に至るまでどれだけ様々な時代で、場所で、様々な人の目に触れられてきたのかと考えさせられた。
何世紀も前に作られてから今に残り、これからもその価値を保ち続けるであろうこれらの絵画作品やその製作者への鑑賞者の敬意はより大きく、また、制作されてから今に至るまでの時間の重み、歴史や背景と いったテーマや世界観、一般の人には真似できないような作品の技術と完成度からは、製作者と鑑賞者の間には時代においても場所においても、とても距離があるものではないか。それらを見た時、驚きや感動だけでなく、それらの背景を考え、異世界に浸るような感覚は確かにそこにあると思う。

展示品の鑑賞という体験

一通り博物館内を見終わった私は巨大な建物の中を歩き回り、あまりに多くの展示物を 1 度に見たせいで疲弊していた。私が見てきた彫刻や像や棺や壁画、装飾品などはあまりにも 私自身の日常生活とはかけ離れたものばかりであり、どこか違う時代の違う場所を旅して 帰ってきたような感覚を覚えた。この感覚は何百年も昔の音楽を聴いた後のような、古代を テーマとした映画を見終えたような感覚であり、展示物やその空間の持つ世界観を味わう という経験をしてきたのだろうと思っている。 

その場にいる人同士の交流

博物館の展示品を前にして、そこに集まる人々は、言葉を発することなく、皆で静寂を作り上げていた。純粋に歴史的な、芸術的な対象を鑑賞するような展示空間には独特の雰囲気が存在している。展示品を鑑賞する空間での人の集団は、日常のものとは少し違った形で集まり、周囲の人々と関わり合っているのではないだろうか。
日常とは少し違った非日常の中に身を置いて、どこか神聖で、個々の人が、与えられた作品の世界観を味わい、その場にいる人々がそれらを共有するような深い交流があるのではないかと仮説を立てた。こういった特定の対象をめぐる、人々の交流という面もふまえながら、非日常性について考察を進めていきたいと思う。

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