奏一夏

不幸とは作家にとって物語の始まりである https://pont.co/u/thou…

奏一夏

不幸とは作家にとって物語の始まりである https://pont.co/u/thou__

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博愛

今まで見た夜空の数なんか覚えていない 星座を見つけようと思ったこともない 太陽が出るまであと何時間かなんて考えない 眠った時間も夢の内容も誰かと眠った瞬間も いつかの朝には忘れているし 脳裏にこびりついた残り香の先に 何があってどんな思いがあるのか 真っ暗な天井に透かした手のひらに乗せた真心 なにも掴めないけど確かな存在 眠る前に散りばめた涙は凍てついた空気に触れて結晶になる それは私にしかつくりだせない宵よりも深い星降る日 何度か呼吸する 規則正しい寝息を知っていてほし

    • 例年より遅めの梅雨明けニュース。太陽の光は容赦なく地面を揺らし、蜃気楼の中を駆け抜ける。太陽の手から逃げた場所は木の下闇。蝉の声、草木が笑う。夏はもう止まらない。

      • 指先はいちばんよく見えるお洒落らしい。手荒れも落ち着いたので、オレンジと水色のネイルをした。光が当たるとラメがキラキラ動くので、なんだか天の川に見えて嬉しくなった。

        • 誰の手も届かないあの月まで飛んでいきたいと、彼は言った。 そこに私は居ないのかと聞いた。 彼は優しく言った。 君は元から月の住人だ、と。 月が綺麗に見える夜は、彼を呼んで一緒に月を見上げている。 だから彼は私の故郷を月だと言ったんだ。 大丈夫、あなたを置いて月には帰りませんよ。

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        • 例年より遅めの梅雨明けニュース。太陽の光は容赦なく地面を揺らし、蜃気楼の中を駆け抜ける。太陽の手から逃げた場所は木の下闇。蝉の声、草木が笑う。夏はもう止まらない。

        • 指先はいちばんよく見えるお洒落らしい。手荒れも落ち着いたので、オレンジと水色のネイルをした。光が当たるとラメがキラキラ動くので、なんだか天の川に見えて嬉しくなった。

        • 誰の手も届かないあの月まで飛んでいきたいと、彼は言った。 そこに私は居ないのかと聞いた。 彼は優しく言った。 君は元から月の住人だ、と。 月が綺麗に見える夜は、彼を呼んで一緒に月を見上げている。 だから彼は私の故郷を月だと言ったんだ。 大丈夫、あなたを置いて月には帰りませんよ。

        マガジン

        • 今夜は君と歌いたい
          1本
        • 魔法のなかで
          8本
        • memory
          2本
        • 六畳一間
          10本
        • 本音と建前
          10本

        記事

          人生という喜劇

          将来の夢は一軒家に住んで庭をたくさんの花でうめつくすこと。 その頃に既婚でも未婚でも、田舎に大きな家を建てると決めている。もちろん南向きで。 花で季節の訪れを知る暮らしは、私にとって重要なことであり、一番の裕福だと思っている。 私の好きな花はチューリップで、いつかオランダに行ってチューリップに囲まれながら風車を見上げたい。それも夢のひとつ。 同じ花でも、花弁の形や咲き方に違いがある。 それを知った時に、私も「私」でありながら、ずっと自由なまま綺麗でいたいと思った。 お気

          人生という喜劇

          連日猛暑

          窓際に座って雲のない空を見上げる 扇風機は生ぬるい風を攪拌させて 夏の空気は休まることなく彷徨う 春は今頃深い眠りについているだろう 夜空にはひとつ月だけ真っ暗闇に取り残されてて 私も飛んでいけたらいいのにな 街灯は星よりも遥かに少ないのに 星よりも強い光で その近くには虫がちらちらまっている 明日も暑くなるらしい 連日、各所で警報レベルの暑さが続いているらしい 日本の南は梅雨入りで、段々と雨に侵食されていく 寝苦しい夜はこれから段々と増えていくだろう 悪い夢を見るのも、この

          連日猛暑

          君の声を信じて

          雨上がりの夜道で気づく、自販機から温かい飲み物はなくなっていた。 一日の長さや、散ったサクラ、捲ったシャツ、あまりにも長く降り続ける雨、そんなもので季節の終わりを知るんだ。 毎日を繰り返す度になんだか先の見えない場所に辿り着いた気がしていたが、頑張っている自覚もなく振り返る一年はとても早い。 始めたくなかったこと 変わってしまったこと 頑張ること 始めなきゃいけなかったこと 変わらなきゃいけなかったこと 頑張らなくちゃいけなかったこと 日々の矛盾に心を打ち砕かれても、進

          君の声を信じて

          春に紛れる

          春風が眠る夜に、泣かないようにと抱きしめる。 地元の桜が咲く頃、この街の桜は、所々に青を潜めていた。鮮やかに移り変わっていく足元の景色に心をときめかせる四月。 地元を離れ、この街で生活を始めて早半年が経つ。染めたての髪を、花を愛でるように撫でてくれた彼と、ふたりで季節を巡る日々。 何年経っても好きになれない夏が、今年は少しだけ待ち遠しい。きっと彼は、夏の暑さも味方にしてキラキラと輝くだろう。 ああ、つくづく実感する。 「これが恋。」 不自由の多いこの世界で、想像もつかないほど

          春に紛れる

          輝いて

          深く沈む夜に愛を 昇りゆく朝に昨晩の夢と欠伸を 遠くに泳ぐ雲を横目に歩く あっという間に 輝いたままの太陽の輪郭が溶けだす 手のひらで隠す 今日の夢はあなたがいい 揺れる煙を追いながらそう思う いつの日かの朝日に恋心を抱けるように

          カントリーロード

          どこまでも続く田んぼ道や、晴れた日に見える雪染まりの山 異常気象の暖冬でも、朝の空気は凍てついて 肺に流れ込む酸素は白い息となって空中に消えた。 故郷なんてものに愛着はなかったはずなのに。 朝焼けを見て思い出すのは、夏の噴水公園、冬の通学路、春の桜絨毯に、秋の稲刈りが終わったまっさらな景色。私がどれだけ大人になっても変わらないものは確実にあったのだ。 故郷を飛び立つ3日前、学生時代の親友が会いに来てくれた。 「ご飯ちゃんと食べるんだよ、頑張りすぎないんだよ。」 全部温かかった

          カントリーロード

          寄生

          知らない誰かを簡単に知ることが出来る世界 何も知らないのに知ったフリをする世間 知りもしないのに鋭利な言葉を放つ人間 詩を書き始めたのは自分のためだった 私の知らない己からの伝言を書き記す 信じたくない言葉の羅列 私という個体はひとつの生命体である自認 知りたくないことばかりだ SNSという媒体で有名にならず ひっそりと息を殺して連ねる 不特定多数の共感より たった一人の魔法になりたい 全部じゃなく一部になりたい 手を差し伸べるのではなく 一緒にもがいて酸素を逃がしたい あく

          本当は、ずっと、ずっとあなたに愛たかったです

          本当は、ずっと、ずっとあなたに愛たかったです

          謙虚な様を見せて根は強欲。「自分なんか、」というたったの五文字に守られた欲望は自身の世界に入り込んだ瞬間にしか見えない。その世界に入り浸ってしまえば終わりなんだと思う。辿り着く先は、愛する君を破壊することだからだ。

          謙虚な様を見せて根は強欲。「自分なんか、」というたったの五文字に守られた欲望は自身の世界に入り込んだ瞬間にしか見えない。その世界に入り浸ってしまえば終わりなんだと思う。辿り着く先は、愛する君を破壊することだからだ。

          私がどれだけ言葉を紡いで辿っても、心血を注いで詠っても、届かない。それが私の無力さだ。

          私がどれだけ言葉を紡いで辿っても、心血を注いで詠っても、届かない。それが私の無力さだ。

          止まった秒針

          早く、泣かずに眠れる夜を教えてほしい。 アルコールで流そうとした憂鬱は根が深くて抜けなかった。 日々の逃げ道やどうしようもないと思った時の対処法が、苦手なアルコールや辞めたはずのタバコだったりするのが心底嫌いだ。 誤魔化そうとするだけで、根本的な解決には繋がらない。 吐いたら数秒で消える煙、数時間後には消える酔。 それよりも長く滞在する憂鬱に適うものなんて何もなかった。 心も、お腹も、布団も、空気も、酒も、全部冷たいな。 血反吐みたいに綴る言葉になんの意味もないのに、それは全

          止まった秒針

          終わりが来る前に、人はいつも慣れるんです。慣れるから終わるんです。慣れてほしくなかったから終わりにしたんです。気持ちは増えないのに孤独だけが増える。思い出は簡単に消えるのに寂しさはずっと消えない。だから私は書き続けられるんだと思います。

          終わりが来る前に、人はいつも慣れるんです。慣れるから終わるんです。慣れてほしくなかったから終わりにしたんです。気持ちは増えないのに孤独だけが増える。思い出は簡単に消えるのに寂しさはずっと消えない。だから私は書き続けられるんだと思います。