奏一夏

不幸とは作家にとって物語の始まりである https://pont.co/u/thou…

奏一夏

不幸とは作家にとって物語の始まりである https://pont.co/u/thou__

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博愛

今まで見た夜空の数なんか覚えていない 星座を見つけようと思ったこともない 太陽が出るまであと何時間かなんて考えない 眠った時間も夢の内容も誰かと眠った瞬間も いつかの朝には忘れているし 脳裏にこびりついた残り香の先に 何があってどんな思いがあるのか 真っ暗な天井に透かした手のひらに乗せた真心 なにも掴めないけど確かな存在 眠る前に散りばめた涙は凍てついた空気に触れて結晶になる それは私にしかつくりだせない宵よりも深い星降る日 何度か呼吸する 規則正しい寝息を知っていてほし

    • 君の声を信じて

      雨上がりの夜道で気づく、自販機から温かい飲み物はなくなっていた。 一日の長さや、散ったサクラ、捲ったシャツ、あまりにも長く降り続ける雨、そんなもので季節の終わりを知るんだ。 毎日を繰り返す度になんだか先の見えない場所に辿り着いた気がしていたが、頑張っている自覚もなく振り返る一年はとても早い。 始めたくなかったこと 変わってしまったこと 頑張ること 始めなきゃいけなかったこと 変わらなきゃいけなかったこと 頑張らなくちゃいけなかったこと 日々の矛盾に心を打ち砕かれても、進

      • 春に紛れて

        春風が眠る夜に泣かないようにと抱きしめる。 地元の桜が咲く頃に、この街並みの桜は所々に青を潜めていた。 鮮やかに色が移り変わっていく足元の景色に心をときめかせる4月。 暗く染めた髪色を撫でてくれるあの子と気がつけば半年、気づかぬうちに1年、そうやって季節を巡っていくのだ。 初めて夏を恋しいと思ったのは、夏を味方に輝くあの子を早く見たいからで、つくづく思うこれは恋だ。 不自由の多い世界で、想像もつかないほど幸せな生活を送る。 この人生を一本の映画だとすればまもなくエンディング

        • 輝いて

          深く沈む夜に愛を 昇りゆく朝に昨晩の夢と欠伸を 遠くに泳ぐ雲を横目に歩く あっという間に 輝いたままの太陽の輪郭が溶けだす 手のひらで隠す 今日の夢はあなたがいい 揺れる煙を追いながらそう思う いつの日かの朝日に恋心を抱けるように

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        マガジン

        • 今夜は君と歌いたい
          1本
        • 魔法のなかで
          8本
        • memory
          2本
        • 六畳一間
          10本
        • 本音と建前
          10本

        記事

          カントリーロード

          どこまでも続く田んぼ道や、晴れた日に見える雪染まりの山 異常気象の暖冬でも、朝の空気は凍てついて 肺に流れ込む酸素は白い息となって空中に消えた。 故郷なんてものに愛着はなかったはずなのに。 朝焼けを見て思い出すのは、夏の噴水公園、冬の通学路、春の桜絨毯に、秋の稲刈りが終わったまっさらな景色。私がどれだけ大人になっても変わらないものは確実にあったのだ。 故郷を飛び立つ3日前、学生時代の親友が会いに来てくれた。 「ご飯ちゃんと食べるんだよ、頑張りすぎないんだよ。」 全部温かかった

          カントリーロード

          寄生

          知らない誰かを簡単に知ることが出来る世界 何も知らないのに知ったフリをする世間 知りもしないのに鋭利な言葉を放つ人間 詩を書き始めたのは自分のためだった 私の知らない己からの伝言を書き記す 信じたくない言葉の羅列 私という個体はひとつの生命体である自認 知りたくないことばかりだ SNSという媒体で有名にならず ひっそりと息を殺して連ねる 不特定多数の共感より たった一人の魔法になりたい 全部じゃなく一部になりたい 手を差し伸べるのではなく 一緒にもがいて酸素を逃がしたい あく

          本当は、ずっと、ずっとあなたに愛たかったです

          本当は、ずっと、ずっとあなたに愛たかったです

          謙虚な様を見せて根は強欲。「自分なんか、」というたったの五文字に守られた欲望は自身の世界に入り込んだ瞬間にしか見えない。その世界に入り浸ってしまえば終わりなんだと思う。辿り着く先は、愛する君を破壊することだからだ。

          謙虚な様を見せて根は強欲。「自分なんか、」というたったの五文字に守られた欲望は自身の世界に入り込んだ瞬間にしか見えない。その世界に入り浸ってしまえば終わりなんだと思う。辿り着く先は、愛する君を破壊することだからだ。

          私がどれだけ言葉を紡いで辿っても、心血を注いで詠っても、届かない。それが私の無力さだ。

          私がどれだけ言葉を紡いで辿っても、心血を注いで詠っても、届かない。それが私の無力さだ。

          止まった秒針

          早く、泣かずに眠れる夜を教えてほしい。 アルコールで流そうとした憂鬱は根が深くて抜けなかった。 日々の逃げ道やどうしようもないと思った時の対処法が、苦手なアルコールや辞めたはずのタバコだったりするのが心底嫌いだ。 誤魔化そうとするだけで、根本的な解決には繋がらない。 吐いたら数秒で消える煙、数時間後には消える酔。 それよりも長く滞在する憂鬱に適うものなんて何もなかった。 心も、お腹も、布団も、空気も、酒も、全部冷たいな。 血反吐みたいに綴る言葉になんの意味もないのに、それは全

          止まった秒針

          終わりが来る前に、人はいつも慣れるんです。慣れるから終わるんです。慣れてほしくなかったから終わりにしたんです。気持ちは増えないのに孤独だけが増える。思い出は簡単に消えるのに寂しさはずっと消えない。だから私は書き続けられるんだと思います。

          終わりが来る前に、人はいつも慣れるんです。慣れるから終わるんです。慣れてほしくなかったから終わりにしたんです。気持ちは増えないのに孤独だけが増える。思い出は簡単に消えるのに寂しさはずっと消えない。だから私は書き続けられるんだと思います。

          前向きな弱虫

          弱さを見せることを悪だと決めつけた。 自分に重い足枷をつけたのはもう覚えていないほど前のことになる。あの時の私はどうかしていた、そうしなければダメだったのも分かっているけれど。 朝まで泣いて眠れない日は、朝まで詩を考えた。 正体の見えないものに押しつぶされそうな時、仰向けで寝転がり好きな曲を噛み締めた。 小さな灯火が大きな風に吹かれて消えそうな瞬間は、代わりにタバコの火を消した。 大人になることと逆走して心が迷子になった。 寄り道や遠回りもたくさんした。 夏の暑い日には

          前向きな弱虫

          2023.12.31

          今年は暖冬か、マフラーを巻かずに外に出た。 またこの場所に辿り着けたことに大きな感謝を。 この一年を振り返るなら「忍耐」という一言をタイトルにしたい。 強く耐え、弱く在ることへの肯定と許容。 社会で息をする難しさ、無垢な挑戦からの敗北、正当な愛情を探す旅、ほんの少しの休息、先生との約束。 わたしがわたしで居ることをずっと悔やみ続けてきました。だからこそ、這い上がるその時まで、今のわたしだけを信じてきました。 涙や、心や、きらめきや、居場所や、君 涙で埋め尽くされる日 心

          昨日の夜は大雨で。窓に打付ける雨たちが、私を急かしているような気がして。慌てて涙が流れてきた。まだ小さい赤ちゃんみたいに、耳を塞いで、ただ泣くことしか出来なかったのです。

          昨日の夜は大雨で。窓に打付ける雨たちが、私を急かしているような気がして。慌てて涙が流れてきた。まだ小さい赤ちゃんみたいに、耳を塞いで、ただ泣くことしか出来なかったのです。

          アイトユウ

          銀湾を降る 辿り着いた場所はふたご座流星群の住処 街灯のない暗闇を先導して行くのはテールランプの赤 毎日なにかの不安や孤独に押し潰されそうで怖い 父母の両手に抱かれていたはずのハートはいつの日か ガラスやプラスチックのようなものに変わった 温かく確かなものから脆く消え入りそうなものに 雑把なものみたいに 少年の曇りなき恋慕が届くまで待ちぼうけ 寒空の下、震える唇 青葉を支える幹になりたい、と 夏に思いを馳せながら12月の空気にさらす指先 赤くなった手を握ってアイの行方を探す

          アイトユウ

          大きな渦の中、自身は分解された。時々淀み、何かの弾みでまた動き出す。見失ったのではなく別の場所に浮遊しているだけなのかもしれない。手の届かない場所にあったのは、それか、己か。

          大きな渦の中、自身は分解された。時々淀み、何かの弾みでまた動き出す。見失ったのではなく別の場所に浮遊しているだけなのかもしれない。手の届かない場所にあったのは、それか、己か。