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止まった秒針



早く、泣かずに眠れる夜を教えてほしい。
アルコールで流そうとした憂鬱は根が深くて抜けなかった。
日々の逃げ道やどうしようもないと思った時の対処法が、苦手なアルコールや辞めたはずのタバコだったりするのが心底嫌いだ。
誤魔化そうとするだけで、根本的な解決には繋がらない。
吐いたら数秒で消える煙、数時間後には消える酔。
それよりも長く滞在する憂鬱に適うものなんて何もなかった。
心も、お腹も、布団も、空気も、酒も、全部冷たいな。
血反吐みたいに綴る言葉になんの意味もないのに、それは全て私の真髄みたいなもので、注いだアルコールの量よりも多く流れる涙が痛い。
この世に存在する全て、嘘だと言ってくれ。泣きじゃくって嘘つきと叫ばせてくれ。私も憂鬱も日常も君も全部嘘になってくれ。
チクチクと手のひらに突き刺さる紙、ぐしゃぐしゃになったのは、投げ捨てたいのは、この気持ちだよ。
今が大丈夫じゃないだけで、いつか大丈夫になる。
違う、今すぐ大丈夫になりたいんだ。
本当は、今すぐ抱きしめられたいんだ。
トントン、って規則正しく慰めてほしい。
スースー、って不規則な寝息を聞かせてほしい。
気絶したように眠る、せめて悪い夢だけ見ないように願わせてほしい。
それ以外のことは、なにも求めないから。

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