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魔法のなかで

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春に紛れる

春に紛れる

春風が眠る夜に、泣かないようにと抱きしめる。
地元の桜が咲く頃、この街の桜は、所々に青を潜めていた。鮮やかに移り変わっていく足元の景色に心をときめかせる四月。
地元を離れ、この街で生活を始めて早半年が経つ。染めたての髪を、花を愛でるように撫でてくれた彼と、ふたりで季節を巡る日々。
何年経っても好きになれない夏が、今年は少しだけ待ち遠しい。きっと彼は、夏の暑さも味方にしてキラキラと輝くだろう。
ああ

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博愛

博愛

今まで見た夜空の数なんか覚えていない
星座を見つけようと思ったこともない
太陽が出るまであと何時間かなんて考えない
眠った時間も夢の内容も誰かと眠った瞬間も
いつかの朝には忘れているし

脳裏にこびりついた残り香の先に
何があってどんな思いがあるのか
真っ暗な天井に透かした手のひらに乗せた真心
なにも掴めないけど確かな存在

眠る前に散りばめた涙は凍てついた空気に触れて結晶になる
それは私にしかつ

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なきごと

なきごと

私の日常というものは、とてもとても、どうしようもないものなのです。
夏の始めから続いているこの大きな憂鬱の波、何も身にまとわず何も持たずただ必死に耐えるばかり。
いっそのこと、このまま流されてどこか遠くに行けたらいいのにと思ってしまって。
自分自身を励ます言葉は知らないのに、自分自身を情けなく惨めな生き物だと知らしめる言葉はたくさん知っています。
季節なんか関係なく夜は毛布にくるまって、残り数本の

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迷ってばっかの私たち

迷ってばっかの私たち

今日の朝ごはんはカレーパンだった
カレーパンの中に隠された夢に思いを馳せてるよ
逆三角形にこめられたソフトクリームの一部にも
あと、たい焼きのシッポ

水族館に行った時に、通うはずのない気持ちを指先に辿らせて、閉じ込められた精彩な魚に触れた
見返りは求めていない
ただ、その身体に流しこまれた私の気持ちを水に溶かしてほしかったの
私たちの間には絶対に越えられない透明な壁があるけど
その時の私は、違う

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傷だらけの私を愛す

傷だらけの私を愛す

私は無傷で生きるほど強くはない。

優しくされた思い出だけ切り取ってアルバムに残していたいけどさ、傷ついた思い出の方が多いから賑やかなのはきっと傷だらけの私なんだよね、残酷な話だよ。

私の優しさを自分の手柄にして利用してもいいけど、好きな本を読みながら、たまに吸うタバコはブラックコーヒーとセットなのは譲れないかな。

言葉足らずは人間関係の糸を切ろうとするから、呆れるほどの愛してるを伝えた方が良

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探求者でいること

探求者でいること

毎日誰かの話を聞く
一人で居る時には出てこないような言葉が私の心臓から生まれて、なんだか私もまだまだなようねって気持ちになる。

今日生まれた言葉
「長い人生、歳だけ重ねるのはつまらないから、恋愛というものを知りたくなった」

深い意味は聞かないでいてほしい
不意に出る言葉こそ、確信的なものだと思うの。

そういえば、今日は成人の日よね。
ひとつ歳下のあの子は私の知らない間に、可愛らしい笑顔より真

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2022.12.31

2022.12.31

師走よ、2022年のラストスパートを共に完走してくれてありがとう。
この一年を振り返るなら「脱皮」という一言をタイトルにしたい。

人間のずるさ、一日の軽さ、ありがとうの温度、正しい糸の切り方、抱きしめられながら眠る心地良さ、約束の脆さ、ひとつの感情に揺さぶられない強い心。

そして、私という人間からの脱皮。

人よ、私よ、感情よ、命よ、そして明日よ
一度の不幸は重いだろう
過去の過ちは自分を苦し

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ただ少し、寂しくなっただけ。

ただ少し、寂しくなっただけ。

諦めるのが得意なの
必死になってる自分を他者の目線で見て、惨めで可哀想な子って思うの。愛されてる自分が嫌い。
けど、愛されないと泣く自分はもっと嫌い。
“完璧”というものに理想を抱いて目指すけど、私は不器用で未完成な人が羨ましい。
この複雑な心境の終点はどこなんだろうね。

誰かのために涙を流すことはない
あの子を思って私が泣くって、なんか違う気がする。
当事者でもないのに感情移入して、分かりもし

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