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「在宅テレワーク」のインサイト ②仕事・自分・家族の3領域

在宅テレワーク(リモートワーク)を経験したことでどんな気持ちが生じたか、という心理的なインサイトを前回は整理しました。

今回は、在宅テレワークでこうしたい、こうなったら良いという欲求や、困りごと、不満のインサイトを取りあげます。

仕事の問題 その1 テレワーク作業の効率、時間感覚

最初に紹介するインサイト群は「効率悪い」「時間感覚が鈍る」。在宅での仕事のあり方、そのものの問題点です。

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特に「効率悪いのが本音」のインサイトは、前号の、在宅テレワーク時代に「対応しないとまずい」「家で仕事が出来ない人は切られるんだろう」に結びつく強いニーズ。仕事が、会社での「集団と個」から「個単位」になって、仕事のできる、出来ないが露わになってしまうという緊張感がうかがえます。

「時間感覚鈍る」は、ほとんど在宅テレワーカーが経験した気持ちではないでしょうか?
セイコーホールディングスは2020年版の時間白書を発表しました。「時の記念日制定から100年、そしてコロナ禍の前後で、日本人の時間意識はどう変わった?」というタイトルがついています。時の記念日制定は1920年(大正9年)、「時間を守る生活行動の定着を目指して制定された」そうです。

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「時間のメリハリをつけにくい」がリモートワークありの人の75%を占めています(図左)。
また、「仕事時間のたつ速度を早く感じる」人はリモートワークありの人がなしの人よりも多いという結果が出ています(図右)。これは解説によると「時間に追われている」状態の表れとのこと。

この白書の中で、「時間学」の一川誠先生(千葉大)は”新しい生活様式時間”の付き合い方として、公共(みんな)の時間から、個人の時間の気づき、両者の連携の時代について述べています。下記は要点です。

時間には、時計の時間に従う公共の時間(みんなの時間)と、各自の生活リズムに基づく個人の時間(自分の時間)があります。

時の記念日が制定された100年前は、画一的な公共の時間に個人の時間を合わせることで、合理化・効率化を図り生産性を高めることを目指したわけです。

今回のコロナ禍で、私たちは公共の時間と個人の時間という、2つの時間軸の存在に改めて気付かされることになりました。


仕事の問題 その2 会社レベルの環境が必要

自宅の仕事環境づくりのインサイトは多様です。

・これまでの生活スタイル、リビングの不具合
・机、いす、パソコン、夫婦それぞれの部屋
・専用に部屋を借りたい
・仕事帰りのサードプレイス、カフェが恋しい

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在宅テレワークのための商品は花盛りで、前号で紹介した日経電子版NKKEI STYLEの記事はもとより、アマゾンなどもテレワーク グッズ特集をやっています。

さまざまな商品が出てくる中、ここでのインサイトの役立ちは、「大きめのパソコンがよかったな」「モニターなどが仕事場と同じにならないとはかどらない」が示すように、生活者の「在宅テレワーク環境づくり」の目指すところは「会社レベルの環境」にあるという視点です。

例えば、「4月の国内パソコン出荷、5.3%増 テレワーク需要拡大」(日経2020.5.25)の記事に、「デスクトップ型が前年同月比13.9%減の13万8千台、ノート型が同11.4%増の56万台だった」とあり、オンライン授業なども含めノートパソコンの需要の高まりを示しています。ノートパソコン需要の裏に「会社レベルの環境」欲求が未充足ニーズとして隠れているとみると、今後の方策が違ってくるでしょう。

自分の問題~運動不足・変調

仕事そのもの以外の欲求・不満では、自分の「運動不足」「太った」という身体の問題がまず上げられます。
そして、先ほどの「時間感覚鈍る」と連動するかのように「だらだらして体がおかしくなる」感じが指摘されています。

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家族の問題~家庭トラブル

在宅テレワークをきっかけに起こった欲求・不満は、仕事の問題、自分の心身の問題、そして家族との問題の3つの領域があると言えそうです。

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「常に話しかけられて集中できなくてイライラ」は家庭に入り込んだ仕事が引き起こした問題で、先の「オンオフ分離派なのでつらい」インサイトが生んだ軋轢と言えるでしょう。「夫婦のいさかいが増えている」も同様です。

「子供が小さいと家で仕事もホントに大変」は、在宅テレワークの負担の大きなターゲットは子育て世代、30代~40代あたりであることを示唆しています。

次回は、在宅テレワークのキーインサイトを抽出します。
(金、富樫)



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