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「在宅テレワーク」のインサイト ③10万余ツイートから得られたのは、2つのキーインサイト

在宅テレワークのインサイトについて、①生活者の心理がどうなっているか、そのゆらぎ、次に②不満や欲求を見ました。
インサイトが揃ったところで、いよいよ、キーインサイトを選びます。

キーインサイトの選択

これまでに上げたインサイトは以下の8つです。
さて、どれをキーインサイトに昇格させたらいいでしょうか?

キーインサイトで、これからの事業の方向性を決定するわけですから、
・一瞬ではなくできるだけ長期に続きそうなインサイト
・ターゲット的にも領域的にもできるだけ広がりのあるインサイト
もちろん
・新たなソリューションを生み出す。そのためのアイデアを誘発するインサイト
を選択したいところです。 

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私たちが最も着目したのは「オンオフ分離派なのでつらい」です。これとテレワーク時代に「対応できないとまずい」を添えてキーインサイトとしました。
もう一つは「楽になった。これからも」、これも「癒し、ゆとり時間」を添えました。

見てお分かりのように、「オンオフ分離派なのでつらい」と「対応できないとまずい」に「会社レベルの環境が必要」「効率悪い、時間感覚鈍る」「運動不足、変調」「家庭トラブル」が結びついています。
「オンオフ分離派なのでつらい」がさまざまな不満を引き起こす要と見ました。

そして「楽になった。これからも」「癒し、ゆとり時間」が独立しています。
おそらく、「オンオフ分離派なのでつらい」群とは仕事の種類や家族構成、年代、性別などの属性で分かれているのでしょう。住居環境も影響しているかもしれません。定量調査でぜひ検証してみたいポイントです。

「楽になったこれからも」は在宅テレワーク歓迎派ですから、素直に欲求を拾い上げていけばいいわけです。新たに提案された商品やサービスをチェックしながら、より豊かな「癒し」「ゆとり」に向かう筋道です。
浮いた通勤時間に何を提案するか、特に終業時間以降が狙い目でした。「癒し」や「ゆとり」は今のところ、在宅での勤務中に求められています。


生き方、ライフスタイルの変革を迫るキーインサイト「オンオフ分離派なのでつらい」

ソリューションが求められるのは「楽になった。これからも」よりも「オンオフ分離派なのでつらい」のキーインサイトですから、もう少し見てみましょう。

「オンオフ分離派なのでつらい」は、「家庭には仕事を持ち込まない」「家はオフの場所」という人の生き方、ライフスタイルに関わる大きなテーマです。人生観にも関わると言っていいでしょう。「対応できないとまずい」、即ち仕事を失うことになるかもしれないが、この変革のエポックメイク、後戻りしそうにないインパクトを顕わにしています。

オンオフを切り替えるライフスタイルは、日本だけでなく、欧米はじめ世界中に支持者、実践者がいるはずです。WHOは早々に、新型コロナウイルスは世界中で起ったパンデミックと表明しました。DX(デジタルトランスフォーメーション)も地域、時間を超えていく動き。
ということはこのキーインサイトはグローバル市場に通用するインサイトとなる可能性があります。

ツイートでは「本来やすらぐための家に居たくなってくる」「自分の家を一番くつろいでいられる…居心地の良い空間としていた」「仕事のストレスは家に持ち込まん!をこころがけてた」などがこのキーインサイトの源泉となっています。

子育て中の方のオンオフの切り替えができないツイート。会社での昼休みや通勤時間が自分の時間だったこと、平日が仕事のことで埋まってしまった様子が伝わってきます。


富士通のテレワーク戦略
Work Life Shift「オンオフ分離派なのでつらい」のキーインサイト

国の働き方改革、テレワーク推進に呼応するように、富士通がテレワークの移行を発表しました。

富士通はもともとテレワークを今後の事業の柱とも見据え、2015年から自社の検討を始め、2017年4月にテレワーク勤務制度を導入していました。それが今回の本格的なWork Life Shiftにつながっています。

全国の事業所の環境・設備を、今後は業務の目的やコミュニケーションのスタイルにあわせて再編。コラボレートを目的とした「ハブオフィス」、コネクトを目的とした「サテライトオフィス」、コンセントレートを目的とした「ホーム&シェアドオフィス」に分け、それぞれにあわせた形でリノベーションする。

このハブオフィス、サテライトオフィス、ホーム&シェアドオフィスの3つは、業務の種類から分けているのですが、「オンオフ分離派なのでつらい」というキーインサイトから眺めるとその意味が少し違った角度で浮かび上がって来そうです。

特に関係の高い「ホーム&シェアドオフィス」では、今は、自宅では業務に集中できない場合とだけ触れてます。

自宅での勤務に加えて、都心や郊外の駅前に設置されているシェアドオフィスを法人契約して利用できるようにする。
「現在、180カ所の契約シェアドオフィスをさらに拡充して、施設を自由に使えるようにする。デスクワークやオンラインミーティングなど、限られたメンバーで、集中して業務を遂行する際に活用できるようにする。
自宅では業務に集中できない場合や、顧客訪問の前後の止まり木として、短時間の活用を想定している」

富士通のようにテレワーク制導入企業が増えていくなかで、「オンオフ分離派なのでつらい」を考慮すると、住まいの近くにあるシェアドオフィスの役割はもっと高まると見ることができます。
180カ所では到底足らず、より中間的な場所、サードプレイスが求められることになります。
押さえておきたいのは、集中できる出来ないというよりも「自分のライフスタイルの変更を回避したい」が本音、基本となるニーズということです。

ワーケーション〈Workation:Work(仕事)+Vacation(休暇)〉の位置づけも「オンオフ分離派なのでつらい」を考慮に入れると少し違って見えてきます。
彼らに受容されるワーケーションには、仕事(オン)の中味や仕事観の変容、休暇の分化(プライベートな休暇とオフィシャルな休暇)などまだ未開拓のテーマが隠れていそうです。

もちろん自宅のなかにオンの機能をどう入れていくか、オンオフ分離の生き方とどう折り合いをつけていくかはまだまだ未解決の領域。男性のターゲット像を考えがちですが、DINKS(夫婦共働き子供なし)DEWKS(夫婦共働き子供あり)対応も考えなければなりません。
「オンオフ分離派なのでつらい」へのソリューションは、今後、住宅関連市場を中心に、ひとつの新市場を形成していくことになるでしょう。

次回は、「在宅テレワークのインサイト」の最終回です。在宅テレワークに関するインサイト、キーインサイトの全体像を価値マップで見ます。
(金、富樫)

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