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在宅テレワークがもたらす新市場。地方移住やワーケーションについても

「在宅テレワーク」のインサイトは4回シリーズの予定でしたが、付録として、どんな市場が活性化してくるかを整理しておきます。
また、よく語られる「テレワーク(リモートワーク)と地方移住やワーケーションの関係」について消費者インサイトの視点から見てみましょう。

オンオフ分離派の創るさまざまな新市場

「在宅テレワーク」が生活者の与えた最も大きなインパクト=キーインサイトは「オンオフ分離派なのでつらい」でした。
これまで仕事と家庭は切り分ける、家庭に仕事を持ち込まない生き方をしていた人たちがその転換を迫られたわけです。そこで起る軋轢や矛盾、障害に対してさまざまな新市場が生まれます。

もう一つのキーインサイト「楽になった。これからも」は、仕事と家庭を切り分けることにそれほどこだわらない人たち、自由業やもともと個人、テレワーク性の高い仕事、契約や派遣などの雇用形態、単身者やDINKS、主婦に多いのではと想定しています。(定量的に計ればはっきりします。)

以下の図は、「在宅テレワーク」インパクトがもたらす新しい市場です。

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「オンオフ分離派なのでつらい」派に対して様々な新市場が起こりつつあります。

〈オンオフ分離派なのでつらい〉関連ビジネス

・まず最初にクリアしなければならない仕事環境づくり

家に仕事を持ち込まないとすれば、都心ではなく比較的住まいの近くに自社のサテライトオフィス、共同で使えるシェアオフィスもしくはカフェのようなサードプレイスが必要です。
家に仕事を持ち込むとすれば、家庭の空気とはできるだけ隔絶された仕事場、自宅ワークスペースを望むでしょう。そこでは例えば長時間のデスクワークに耐えられる椅子、大型ディスプレイなど「会社なみの仕事環境」も求められます。

・本人にも会社にも求められる仕事の革新
同時に迫られるのはテレワーク時代の仕事の仕方です。個人でやる仕事の領域が大きくなり、「自律分散」が社会のキーワードになっています。一人ひとりがテレワーク仕事術を身に付けることはもちろんですが、それは同時に企業側にも社員教育や組織や人事、決済のあり方に至るまで変化が訪れています。

他にも
・運動不足解消商品やサービス
・仕事時間の子どもをサポートしてくれるサービス
などなど。悩みのインサイトに対してこれからもソリューションアイデアが次々と生まれてくるでしょう。


一方、「楽になった。これからも」の欲求である住まいの時空間を豊かにすること、リラックス投資はコロナ禍以前からの潮流でもあり、現時点で市場変化に与えるインパクトはそう大きくはなさそうです。

〈楽になった。これからも〉関連ビジネス

・音楽やお茶など家庭の中のリラックス関連商品やサービス
・家庭菜園など暮らしを豊かにする商品やサービス


在宅テレワークと地方移住、ワーケーション

在宅テレワークをきっかけに、地方移住やワーケーションの話題が高まりを見せています。
それらの動きを消費者インサイトから読み解くと以下の図になります。

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繰り返しになりますが、在宅テレワークが生んだ2つのキーインサイトのうち、「オンオフ分離派なのでつらい」のインパクトは大きく新しい市場を生み出しています。

オンオフ分離派は、出来れば家の中ではなく近くに仕事専用のスペースを持ちたいと考えていますから、会社のサテライトオフィスが、自宅近くに出来ることが最もよい解決策です。
彼ら彼女らにとってもともと家はオフの場なので、郊外にサテライトオフィスが出来ればそちらに居住地を移し、住まいのオフをさらに充実させるという選択肢が生まれるでしょう。都心のオフと郊外のオフの競争です。

企業の地方分散戦略がさらに進んで地方にサテライトオフィスが出来れば、郊外と同じ流れで地方移住も進む可能性があります。


一方、「ワーケーション」はどうでしょうか?
最近、「リモートワークはコロナ禍で大きく進展、ニューノーマルの時代に向けて企業の働き方改革とともに定着していく。だからワーケーションの可能性」という論旨が多く見られます。
しかし、インサイトから見ると、在宅テレワークで新市場を作り出す主役、「オンオフ分離派の悩み」とワーケーションの接点が感じられません。
(それはインサイトの全体を表した前回のレポート、価値マップをチェックしても同様です)

ワーケーションとテレワーク(リモートワーク)の関係性はもともと薄いのではないかと考えられます。
ワーケーションはリモートワークから成立性を得るのではなく、もっと他のインサイトを見つけなければなりません。
それには、ワーケーションのターゲットを探す、欲求を知る、拡大、定着のインサイトを探す必要があります。


ー以下はワーケーションの成立性、インサイト探しのための前提仮説ですー

ワーケーションを成立させるのは、遠隔でも仕事ができるという技術的なことより、「仕事と遊び」(と「家族」)を分けない働き方、生き方を望む個人、企業ではないでしょうか。ひと昔前の日本企業には社宅、終身雇用制度がありそれに近かったとも言えます。

今回の在宅テレワークのインサイトでは、「楽になった。これからも」派の方がワーケーションとの親和性が高いのでしょうがこれまで見てきた通り、彼らは大きな市場変革を起こしてはいません。もっとターゲットをセグメントする必要があります。
また、仕事を遊びに、遊びを仕事に家族も含めて仲間で作っていく会社、そんな企業があって始めてワーケーションは成立して行くのでしょう。
カンパニーの語源は仲間、同じ志や目的の人が集まって会社が始まりました。レジリエンス(復元力、逆境力)はそこまで遡ることを要求しているかもしれません。

後は、休暇制度です。現在のような盆暮れ、ゴールデンウィークの一斉休暇ではなく、各自がロングバケーションを取ることのできる休暇制度、有給制度の整備がワーケーションを起こす途(みち)ではないでしょうか。

(金)

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