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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 05 各部門の効率が優先

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います。
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

効率性というマジックワード

不確実性の早期排除は、
時に一見、効率的にみえない(無駄に見える)場面があります。

例えば、第3回、および4回の
「実現性確認工程」の意図的な前倒し(=ファストトラッキング)
 による不確実性の早期排除の場合、

参考:
第3回 リスクの早期顕在化:
https://note.com/think_think_ab/n/n99a4697ec282
第4回
 組織の脆弱性:
https://note.com/think_think_ab/n/ne54aee1bde0a

不確実性の早期排除(=リスクの早期顕在化)は、
リスクの顕在化タイミングの遅れによる後手後手の対応避け、
プロジェクト全体の効率をあげますが、

開発部門の立場に立つと
要件が決まる前に実現性を確認することは、無駄なやり方で、
効率が悪いことになります。

そのため、第4回にあったように、開発部門は
「実現性確認は、工数を無駄にしないよう、要件決定後に行う」
と意見(主張)します。

「効率を優先する」というマジックワードの前に、
 誰もその意見を否定できず、実現性確認の前倒しは言い出せません。

開発部門の担当リーダーに対して指揮権のある開発部門の責任者であれば、
「部門よりも全体効率を優先し、要件定義完了までに、実現性を確認せよ」 
 との指示ができますが、

組織横断プロジェクトのプロジェクトマネージャーには、
実質的に指揮権がないため、「効率優先」というマジックワードの前に
服することになります。これは組織人として自然な対応です。

各部門の効率 vs プロジェクト全体の効率

このように、
各部門にとっての効率とプロジェクト全体にとっての効率は、
トレードオフの関係にあります。

本来であれば、
「各部門の効率」は「プロジェクト全体の効率」
 よりも優先順位が低いはずですが、

前述の例のように、
プロジェクトマネージャーや各領域のリーダーを含め、
プロジェクトメンバーが組織人として、普通に立ち回ると

「各部門名の効率」が「プロジェクト全体の効率」
 よりも優先される結果となります。

「プロジェクト全体の効率」を主張すべき
 プロジェクトマネージャーも、第4回にあったように

・各部門のとりまとめが役割で、
・プロジェクトマネジメントの素人、
・かつ、開発リーダーに対する強い指揮権もないため、

「プロジェクト全体の効率」を強く主張することはありません。

例えPMPホルダーであっても
不確実性の早期排除との観点でプロジェクトマネジメントを
体系的に深く理解していなければ、強く主張することはありません。

優秀な人材の調整能力に対する幻想

1.各部門の効率がプロジェクト全体の効率よりも優先されること
2.プロジェクトマネジャーが全体の目的を強く主張できないこと

これらは、組織の特性であり、個々の人材の問題ではありません。

個々の人材は、それぞれの置かれた立場の中で、
最善の行動をとっているだけで、問題行動はどこにもありません。
プロジェクトマネジメントが機能しない問題の原因は組織にあります。

では、
その組織に影響力のある上位者(部長、本部長、役員など)は、
この問題をどのようにみているのでしょうか?

多くの場合、上位者は
優秀な人材であるプロジェクトマネージャー、各部門のリーダーの調整能力に対して過度に期待しているためか、こうした問題には気づいていません。(もしくは、気づこうとしていません)

また、
役員であっても自分の担当領域外の部門に対しては
(組織人としてあたりまえですが)遠慮がちになるため、
プロジェクト全体のメリットや目的を強く主張することはありません。

第5回では、
とても解決の難しい問題になってしまいました…
この件は、次回以降の回で、機会をみながら解決策を考察していきます。


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