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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 06 ファストトラッキング

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います。
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

リスクの早期摘出

ファストトラッキングはクラッシングと並んで
プロジェクト遅延の対策として説明される場合が多いですが、
リスクの早期摘出の対策として説明されることはありません。

なぜでしょうか。

それはプロジェクトマネジメントのそれぞれの手法が
しかるべき目的である不確実性の早期排除とひもづけられて体系的に
説明されていないためです。

ではなぜ、
プロジェクトマネジメントの手法は不確実性の早期排除
結び付けて語られないのでしょうか。

それは、
不確実性の早期排除の責任は本来プロジェクトマネージャーにありますが、
第5回まででみてきたようにプロジェクトマネージャーの立場は、
以下のような状況にあることが多く、

・単なるとりまとめ
・プロジェクトマネジメントの素人
・リーダーに対する実質的な指揮権を持たない

不確実性の早期排除は、プロジェクトマネージャーにとって
取り組むべき問題にすらならないためです。

一方の、
ユーザ部門や開発部門など、各領域リーダーにとっても、
プロジェクト全体の不確実性の早期排除は、責任の範囲外のため、
取り組むべき問題になりません。

こうして、不確実性の早期排除との観点で
ファストトラッキングが説明されることはなく、
それゆえに、リスクの早期摘出のために使われることはありません。

第5回でとりあげた
要件定義と並行して実現性確認を実施することは大きな工程レベルでの
ファストトラッキングですが、見かけることはほとんどありません。

不確実性の潜む工程

前述の実現性確認の前倒し(ファストトラッキング)は、
技術的な不確実性に対する対応ですが、その他に不確実性の潜む工程には
どのようなものがありますでしょうか。

それは、
プロジェクトを構成する複数部門の成果物が結合される工程、
結合試験工程の中の具体的なスケジュール合わせです。

なりゆきでマネジメントされたプロジェクトにおいて、
各領域から提出される結合試験工程のスケジュールが合うことは
まずありません。

潜在的にスケジュールが合わないにも関わらず、
いずれの領域のチームからも結合試験工程の具体的なスケジュール調整を
言い出すことはありません。

ひどい場合は、
プロジェクト当初に定められた結合試験開始日まで、
試験工程の中の具体的な調整が何もなくその日を迎える場合もあります。
(こうした場合、その後のできごとは目も当てられません…)

なぜでしょうか。
なぜうすうす混乱することに気づきながらも各チームのリーダーは、
ぎりぎりまで他チームとの調整を言い出さないのでしょうか。

それは、
調整という各チームにとってありがたくないタスクが始まるからです。

ここでも、
調整工程を前倒すのはプロジェクトマネージャーの役割ですが、
各部門の意向もあり、ファストトラッキングは発動されません。

第5回に続き、また解決の難しいこととなってしまいました。
これもまた機会をみながら解決策を考察してみようと思います。

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